小論文キャンパス
大学別対策

医学部の総合型選抜・学校推薦型選抜の対策。共通テストなしで30人の枠があり、面接1,000点の大学もある

約18分で読めます

医学部の総合型選抜・学校推薦型選抜を、国公立・私立の募集要項の実例から整理しました。共通テストを課さない高知大学の30人以内、福島県立医科大学の総合問題600点とMMI、大分大学の地域枠の増減、評定4.3の壁、面接1,000点の配点までを具体的に解説します。

医学部の総合型選抜・学校推薦型選抜は、他学部とは別の制度だと考えたほうがいい領域です。

数字で見たほうが早いので、3つ挙げます。

高知大学の医学部医学科は、共通テストを課さない総合型選抜で30人以内を募集します。国公立の医学科でこの規模は珍しい。ただし調査書の全体の学習成績の状況が4.3以上で、卒業後に高知県内の医療機関で2年間の臨床研修を行うことの確約が要ります。

福島県立医科大学の総合型選抜は、1日で300分の記述試験を課します。総合問題Ⅰが150分400点、Ⅱが150分200点。第2次選考は6つの面接室を巡るMMIで、そのうち1室ではA0サイズのポスターを使って発表します。

横浜市立大学の医学科は、面接審査だけで1,000点です。第3次選考では面接1,000点と共通テスト1,000点が同格に扱われます。

地域枠という仕組みもあり、卒業後の進路に条件がつきます。しかもその人数は、年度途中で変わることがあります。

この記事は、制度の構造を、公開されている募集要項の実例で整理するためのものです。

必ず志望大学の最新の募集要項で確認してください。医学部の入試制度は大学ごとに大きく異なり、変更も頻繁です。この記事で挙げる実例は構造を示すためのもので、志望校の要項の代わりにはなりません。 出典:横浜市立大学 特別公募制学校推薦型選抜(医学科)/兵庫医科大学 総合型選抜/兵庫医科大学 学校推薦型選抜(地域指定制)/高知大学 募集人員・入試日程・募集要項/福島県立医科大学 医学部 募集要項/大分大学 総合型選抜

2日がかりの例。大阪大学 医学部医学科の学校推薦型選抜は、1日目に120分の小論文、2日目に30分の個人面接を2回という日程です。広島大学の光り輝き入試も、医学科だけ小論文が午後・面接が翌日という日程になっています。

まず4つに分けて考える

医学部の総合型・学校推薦型は、2つの軸で整理できます。

共通テストなし 共通テストあり
一般枠 私立に多い。年内に決着。国公立にもある(高知大学 医学科30人以内、福島県立医科大学 5名以内) 国公立に多い。2月に決着(大分大学 医学科25人、横浜市立大学 医学科)
地域枠 私立の地域枠 国公立の地域枠が中心(大分大学、徳島大学〈四国研究医型〉)

自分がどのマスを狙うのかを、最初に決めてください。準備の中身も、併願設計も、ここで変わります。

共通テストの有無が決める2つのこと

1. 決着の時期

共通テストを課さない入試は、年内に合否が出ます。課す入試は2月です。

2. 教科学習の扱い

課す入試なら、共通テストの勉強がそのまま得点になります。課さない入試でも、多くは適性検査や学科試験の形で学力を測ります。「教科の勉強をしなくていい医学部入試」は、ほぼ存在しません。

共通テストを課さない国公立医学科もある

「国公立の医学科=共通テストあり」と思われがちですが、例外があります。しかも枠が小さくありません。

高知大学 医学部医学科——30人以内、共通テストなし

高知大学の総合型選抜Ⅰで、いちばん大きい枠が医学科の30人以内です。共通テストは課しません。

出願要件が重い。

  • 調査書の全体の学習成績の状況が4.3以上
  • 高知県内の地域医療に従事する強い意欲
  • 卒業後に高知県内の医療機関で2年間の臨床研修を行うことの確約
  • 過去にこの入試を受けたことがない人(第1次選抜で不合格だった場合などは除く)

選考は2段階で、第1次選抜は総合問題と英語資格・検定試験で約2倍に絞られます。第2次選抜は態度・習慣領域評価と面接です。

面接の進め方まで要項に書かれています。冒頭に、医学科への志望理由と高知大学を選んだ理由を3分程度で話す。そのあと、過去3年間で継続的に取り組んだ活動(課題研究、部活動、ボランティアなど)について具体的な状況を聞かれます。

3分のスピーチと、活動1つの深掘り。準備すべきものがここまで明示されている医学科入試は多くありません。

福島県立医科大学 医学部——5名以内、記述300分とMMI

福島県立医科大学の総合型選抜は5名以内。出願資格に調査書の学習成績概評がA段階という条件があります。共通テストは課しません。

第1次選考は1日で記述試験を2本です。

試験 時間 配点 内容
総合問題Ⅰ 150分 400点 理数系の基礎的知識に加えて論理的な思考力を問う記述試験。英文による出題を含む
総合問題Ⅱ 150分 200点 論理的かつ多面的な思考力、表現力を問う記述試験

第1次選考は総合問題の合計得点順に、募集人員の3倍程度。5名以内の募集なので、通過するのは15名前後です。

第2次選考はMMIで、受験者が6つの面接室を各10分程度で巡ります。部屋のテーマは、志願理由、主体性・能動性・リーダーシップ、科学的探究心、倫理観、思考力・判断力・表現力、コミュニケーション力。そのうち「科学的探究心」の部屋で、A0サイズのポスターを使って4分程度の発表をします。

最終的な配点は1,050点(面接300・出願書類150・総合問題600)。第1次の総合問題600点が、そのまま最終判定にも持ち越されます。

ポスターの課題には、研究経験がない人向けの選択肢が用意されています。「これまで興味を持った科学的研究(歴史的発見や発明など)について調べてまとめる」というものです。

徳島大学 医学部医学科〈四国研究医型〉——13人、最後に共通テスト75%

徳島大学の四国研究医型は13人。受入人員の目安は徳島・香川・愛媛・高知の各県2人+全国枠5人です。

出願時に確約することが多い入試で、入学後に大学院(博士課程)に進むことが条件に含まれます。評定は4.3。総合討論400点は、90分の記述のあとに集団討論という構成です。そして最終条件として共通テスト75%があります。

同じ「共通テストなしの国公立医学科」でも、高知は年内決着、徳島は共通テストまで続くという違いがあります。

地域枠——最初に理解すべき仕組み

医学部特有の制度です。卒業後、指定された地域や診療科で一定期間勤務することを前提に、優先的に選抜される枠です。

何が条件になるか

大学・自治体によって違いますが、典型的にはこうです。

  • 卒業後、指定された地域の医療機関で一定年数勤務する
  • 指定された診療科に進む枠もある
  • 修学資金(奨学金)が貸与され、義務年限を果たせば返還が免除される
  • 果たせない場合は、返還が必要になることがある

修学資金がつかない枠もあります。札幌医科大学の総合型選抜(道民枠20名)は修学資金の貸与制度がなく、初期臨床研修のあと原則として道内で7年間、大学の「卒後の必修プログラム」に従事することを、本人と保護者が確約して出願します。共通テスト1,000点を含む1,500点満点で、合格発表は2月です。

将来10年前後を拘束しうる約束です。募集要項だけでなく、自治体の修学資金制度の要綱まで読んでください。保護者と必ず相談してください(保護者のための入試の仕組み、お金と事務)。

枠の規模は大きい

たとえば横浜市立大学医学部医学科の特別公募制学校推薦型選抜は、公表情報によれば県内高校13名(YCU地域医療枠10・神奈川県指定診療科枠3)、県外高校8名(同6・2)という構成で、募集の中心が地域枠です。

人数が年度の途中で変わることがある

大分大学の医学科の総合型選抜は25人(一般枠22人・地域枠3人)ですが、要項にこう書かれています。地域枠の臨時定員増が承認された場合も、承認されなかった場合も、地域枠を3人から13人に変更し、総合型選抜全体で35人にする、と。

審議結果が出るのは令和8年10月下旬から11月上旬の予定。出願を考える時期に、まだ人数が確定していないということです。

地域枠には事前の手続きが必要な場合もあります。大分大学の地域枠は、大分県内の小学校または中学校を卒業していることに加えて、大分県が指定するへき地医療拠点病院で8月中の連続する3日間の体験活動を受けていることが出願の前提です。申込期間は6月末から7月上旬。出願の3か月以上前に動き出す必要があります。

「地域枠を避けて医学部の推薦を受ける」という選択肢は、思うより狭い。そこを踏まえて志望校を選んでください。

評定と英語資格——出願の壁

医学部の推薦系は、出願の時点でかなり絞られます。

横浜市立大学医学科の例では、出願資格に次が含まれます(公表情報より)。

  • 全体の評定平均値4.3以上、学修成績概評がA
  • 数学Ⅲと「物理」「化学」「生物」から2科目を修得
  • 2024年4月以降に取得した英語資格(TOEFL iBT 61以上等)
  • 入学を確約できる者(専願)

4.3という数字、そして数学Ⅲと理科2科目の履修。これは高1〜高2の科目選択と成績で決まってしまいます。

4.3は横浜市立大学だけの数字ではありません。高知大学の医学科も全体の学習成績の状況4.3以上、徳島大学の四国研究医型も4.3です。福島県立医科大学は数値ではなく調査書の学習成績概評がA段階という書き方をしています。

医学科の推薦系では、4.3前後が一つの目安だと考えてください。

医学部の推薦を考えるなら、高1から準備が始まっていると考えてください(評定が低い人の総合型選抜)。

試験の中身——3つの要素

1. 学科試験・適性検査

「総合型選抜だから学科試験がない」とは限りません。

兵庫医科大学医学部の総合型選抜(2027年度)の公表情報を見ると、第1次試験はこうなっています。

科目 時間 配点
適性検査(英語) 60分 100点
適性検査(理科2科目選択) 80分 150点
小論文 60分 50点

理科2科目で150点。名前は「適性検査」ですが、実質的な学力試験です。そして小論文の50点より配点が高い。

私立医学部の総合型は、学力試験を含むものが多いと考えて準備してください。

2. 小論文

配点は大学により大きく違います。兵庫医科大の例では第1次試験300点中50点。一方、看護系ですが聖路加国際大学の総合型選抜は320点中200点が小論文です。

まず志望校の配点を確認してください。そこに投じる時間が決まります。

医学部の小論文で問われるテーマは、ある程度決まっています。医学部系の小論文対策を土台に、次を押さえてください。

書き方の土台は小論文の完全ガイド、60分で書くなら時間配分と構成メモで手順を決めておいてください。

「命を救いたい」だけの答案は評価されません。医学部系の小論文対策で書いたとおり、対立する価値を認識したうえで判断する書き方が求められます。

3. 面接——比重が非常に高い

ここが医学部の特徴です。

横浜市立大学医学科の学校推薦型選抜は、公表情報によれば第2次選考の面接審査が1,000点、第3次選考で面接1,000点+共通テスト1,000点の合計で判定されます。

面接と共通テストが同格。これは他学部ではまず見ない配点です。

そして、その面接の形式が変わりつつあります。

MMIの広がり

MMI(Multiple Mini Interview)——5分程度の短い面接を、ブースを移動しながら3〜5回くり返す形式です。

日本の医学部では東邦大学・藤田医科大学が先行し、東京慈恵会医科大学などが続きました。横浜市立大学医学科は「MMIの手法を取り入れた面接審査」と公式に説明しています。東京医科大学は2027年度入試から一般選抜・共通テスト利用選抜の第二次試験にも拡大導入すると公表しています。

公立でも導入されています。福島県立医科大学の総合型選抜は、6つの面接室を各10分程度で巡る形式で、部屋ごとに評価項目が決まっています。志願理由、主体性・能動性・リーダーシップ、科学的探究心、倫理観、思考力・判断力・表現力、コミュニケーション力の6つです。

ここまで部屋の趣旨が公開されていると、準備の仕方も変わります。6つの観点それぞれについて、自分の材料を用意しておくという準備ができるからです。

なお、大分大学の医学科はMMIではありませんが、第2次選考で個人面接とグループディスカッションを行い、配点は面接300点(共通テスト500点と合わせて800点満点)です。

志望動機の準備だけでは対応できません。その場で示された場面について、考えて話す訓練が要ります。詳しくはMMIの対策にまとめました。

なお、兵庫医科大学の総合型選抜のように、第2次試験でプレゼンテーション試験(科学的・論理的思考力を評価)を課す大学もあります(プレゼン型入試)。

専願であることが多い

医学部の推薦系は、専願が原則だと考えてください。

  • 横浜市立大学医学科——「本学への入学を強く希望し、合格時入学を確約できる者」
  • 兵庫医科大学の総合型選抜——一般枠・卒業生子女枠ともに専願

そして地域枠の場合、専願であることに加えて卒業後の義務が乗ります。

軽い気持ちで出せる入試ではありません。逆に言えば、覚悟が決まっているなら強い選択肢になります。

なお、共通テストを課す入試なら、教科の勉強はそのまま一般選抜にも生きます(総合型選抜と一般入試の両立)。年内決着型に出す場合も、不合格に備えて学習は続けてください。

準備の順番

時期 やること
高1 科目選択を確認する。数学Ⅲ・理科2科目が出願要件になる大学がある
高1〜高2 評定を維持する。4.3以上を求める大学もある
高1〜高2 英語資格を取る。2年以内など有効期間の指定がある
高2 地域枠を受けるかを、保護者と決める。卒業後の義務まで確認
高2〜高3春 志望校の配点表を確認。小論文・面接・学科の比重を把握
高3 4〜7月 小論文の演習。医療倫理のテーマを押さえる
高3 6〜8月 MMIの練習。人に予告なしで場面を出してもらう
高3 夏 志望理由書・活動報告書。医療体験の棚卸し
高3 秋〜冬 出願→選考。共通テストを課す入試なら並行して教科学習

地域枠の判断がいちばん重いので、高2のうちに家族で話し合ってください。

出願実務の落とし穴は出願直前チェック17項目、要項の読み方は募集要項の読み方にまとめています。

看護・医療系との違い

同じ医療系でも、看護系の総合型選抜とは設計が違います。

医学部 看護系の例
地域枠 あり(卒業後の義務を伴う) 一般には制度が異なる
学科試験 適性検査の形で課すことが多い 大学により
小論文の比重 大学差が大きい 聖路加は320点中200点、慶應看護医療は小論文なし
面接 MMIの導入が進む 個人面接が中心

看護系については聖路加国際大学の総合型選抜と慶應看護医療学部のAO入試にまとめています。

まとめ

  • 共通テストを課さない国公立医学科がある。高知大学の医学科は30人以内、福島県立医科大学は5名以内で、いずれも年内に決着する
  • ただし条件は重い。高知大学は評定4.3以上と卒業後に県内で2年間の臨床研修を行う確約、福島県立医科大学は調査書の学習成績概評A段階
  • 福島県立医科大学の第1次選考は1日で300分の記述試験(総合問題Ⅰ150分400点・Ⅱ150分200点、英文出題を含む)。募集人員の3倍程度に絞られる
  • 同大学の第2次選考は6つの面接室を巡るMMIで、1室ではA0サイズのポスターで4分発表。最終配点1,050点のうち総合問題が600点を占める
  • 徳島大学の四国研究医型13人は、大学院(博士課程)への進学を確約したうえで、最終条件に共通テスト75%がある
  • 地域枠は卒業後の勤務地・診療科に条件がつく。将来10年前後を拘束しうる
  • 地域枠は例外ではなく、推薦系の募集の中心になっている大学が多い
  • 地域枠の人数は年度の途中で変わることがある。大分大学は地域枠3人を13人に変更すると要項に明記し、審議結果は10月下旬〜11月上旬の予定
  • 地域枠には事前の手続きが要る場合がある。大分大学は8月中の連続3日間のへき地医療体験活動が出願の前提で、申込は6月末〜7月上旬
  • 出願の壁が高い。評定4.3前後、数学Ⅲと理科2科目の履修、英語資格を求める大学がある
  • 総合型でも適性検査という名の学力試験を課すことが多い(理科2科目で150点という例も)
  • 面接の比重が異常に高い。面接1,000点+共通テスト1,000点という配点の大学もある
  • MMIの導入が広がり、公立でも使われている。志望動機の準備だけでは対応できない
  • 専願が原則。地域枠なら卒業後の義務も乗る
  • 志望大学の最新の募集要項と、自治体の修学資金制度を必ず確認する

医学部に総合型選抜がない大学もあります。昭和医科大学・日本医科大学がその例で、昭和医科の医学部は学校推薦型選抜と卒業生推薦入試だけです。医療系の他学部については順天堂大学 医療系学部の総合型選抜にまとめています。

国立大学の医学科で共通テストを課さない総合型選抜としては、高知大学が30人以内という大きな枠を設けています。共通テストを課す型では、徳島大学の〈四国研究医型〉が四国4県に受入人員の目安を置いています。

Related

関連記事

← 「大学別対策」の記事一覧へ