MMIの対策。5分の面接を何回もくり返す、医学部の新しい面接
MMI(マルチプル・ミニ・インタビュー)の形式と対策を解説します。複数のブースを移動して短い面接をくり返す仕組み、正解のない場面設定への答え方、導入している大学の例、練習方法までをまとめました。
医学部の面接に、MMIという形式が急速に広がっています。
Multiple Mini Interview——マルチプル・ミニ・インタビュー。5分程度の短い面接を、部屋を移動しながら3〜5回くり返す方式です。
そして、聞かれるのは志望動機ではありません。その場で示された場面について、どう考えるかを問われます。
従来の面接対策——志望動機を練り上げ、想定問答を作る——は、ここではほとんど通用しません。別の準備が要ります。
この記事は形式の一般的な説明です。実施の有無・形式・時間は大学と年度によって変わります。必ず志望校の最新の募集要項で確認してください。
国公立での実施例。北海道大学のフロンティア入試は、医学部医学科の面接を「個人面接(MMI形式を含む)」と要項に明記しています。
MMIとは何か
形式
大学によって細部は違いますが、共通する骨格はこうです。
| 要素 | 一般的な形(大学により異なる) |
|---|---|
| 1回の長さ | 5分程度 |
| 回数 | 3〜5回程度 |
| 移動 | ブース(ステーション)を順に移動する。移動せずテーマだけ変わる大学もある |
| 面接官 | 各ブースで別の面接官 |
| 課題 | ブースごとに違う。場面設定、資料、質問など |
ブースごとに面接官が変わるという点が重要です。前のブースで何を話したかは、次の面接官は知りません。毎回リセットされます。
なぜこの形式なのか
もともとカナダの医学部入試で始まり、北米を中心に広がった方式です。日本の医学部でも、東邦大学・藤田医科大学が先行して導入し、東京慈恵会医科大学などが続きました。
従来の面接の弱点を補うためだと考えると理解しやすくなります。
| 従来の面接の弱点 | MMIでの解決 |
|---|---|
| 1組の面接官の主観に左右される | 複数の面接官が別々に評価するので、偏りが平均化される |
| 準備した答えを話すだけで通ってしまう | その場の課題なので、用意した答えが使えない |
| 評価軸があいまいになりやすい | ブースごとに測るものが決まっている |
横浜市立大学医学部医学科の学校推薦型選抜は、公式サイトで「MMI(Multiple Mini Interview)の手法を取り入れた面接審査により、多面的に資質を評価します」と説明しており、配点は1,000点とされています。共通テストの1,000点と同格です。
面接が、学力試験と同じ重みを持つということです。
何が評価されるか
各大学の説明を整理すると、評価軸は次のあたりに集約されます。
- コミュニケーション能力——伝わるように話せるか
- 倫理観——医療の現場で必要な判断ができるか
- 協働性——他者とともに働けるか
- 判断力——正解のない状況で、どう決めるか
- 思考の過程——結論だけでなく、そこに至る道筋
東京医科大学は2027年度入試からMMIを拡大導入すると公表しており、「複数の課題や場面設定に対し、対話を通じて受験者の思考過程や対応力を評価する」と説明しています。
「思考過程」を評価する——ここがMMIの核心です。答えの正しさではありません。
出題の型——3つに分けて考える
大学により内容は違いますが、課題は大きく3つの型に分けられます。
型1:場面設定(シチュエーション型)
最も多い型です。ある状況が示され、「あなたならどうするか」を問われます。
例として想定されるのは、こういう性格の課題です。
- 部活の仲間が規則を破っているのを見た。どうするか
- グループ課題で、一人だけ作業をしていない人がいる。どう対応するか
- 友人から、他の人に言わないでほしいと打ち明けられた内容が、その人の健康に関わることだった
正解はありません。そして多くの場合、どちらを選んでも何かを失うように設計されています。
型2:資料・データ型
グラフ、表、短い文章が示され、読み取りと意見を求められます。
5分で読んで話すので、資料・グラフ型の読み取りの技術がそのまま効きます。読み取り(事実)と解釈(意見)を分けて話してください。
型3:一般的な質問型
従来の面接に近い質問が1ブース入ることもあります。志望動機、高校時代の経験など。ここは準備が効きます。
答え方の型——4ステップ
正解のない課題に、5分で答える。そのための型を持っておいてください。
ステップ1:問いを確認する(15秒)
すぐに答え始めない。まず状況を自分の言葉で言い直します。
「確認させてください。〜という状況で、私が〜の立場だということですね」
これには3つの効果があります。誤解を防ぐ/考える時間を作る/聞く姿勢を示す。
ステップ2:対立を言葉にする(1分)
いきなり結論を言わない。まず、この場面で何と何がぶつかっているかを述べます。
「この状況では、〜という価値と、〜という価値がぶつかっていると思います」
たとえば「本人の意思の尊重」と「安全の確保」、「約束を守ること」と「その人を助けること」。
ここが最も評価される部分だと考えてください。対立を見つけられない人は、片方の価値しか見ていないことになります。この考え方は法学部の小論文対策の「利益衡量」と同じです。
ステップ3:条件をつけて結論を出す(1分30秒)
対立を認めたうえで、自分はどうするかを述べます。
「私は〜を優先します。理由は〜だからです。ただし、〜という条件のもとでです」
「両方大事だと思います」で終わらせない。決めることが求められています。ただし、無条件に決めない。条件を添えることで、失うものを認識していることが示せます。
ステップ4:反対側への配慮を示す(30秒)
「もちろん、〜という考え方もあります。その場合は〜という対応が必要だと思います」
切り捨てた側への手当てまで言えると、判断の質が上がります(反論への応え方)。
詰まったときの型
答えが浮かばないことは必ずあります。そのときの型を用意しておいてください。
「すぐには判断がつきません。判断するために、〜を確認したいと思います。もし〜であれば〜、もし〜であれば〜と考えます」
「分かりません」で止めない。何が分かれば決められるかを言う。これは口頭試問の対策と同じ考え方です。
やってはいけないこと
| 避けること | 理由 |
|---|---|
| 正解を当てにいく | 正解のない課題として設計されている |
| 一般論だけで終える | 「思いやりが大切だと思います」は判断ではない |
| 前のブースを引きずる | 面接官は別。毎回リセットして臨む |
| 早口で詰め込む | 5分は短いが、伝わらなければ意味がない |
| 決めない | 「どちらも大事」は評価されない |
| 決めつける | 条件も配慮もない断定は、独善に見える |
3つ目が意外な落とし穴です。前のブースでうまくいかなくても、次の面接官はそれを知りません。引きずった態度だけが伝わります。
練習方法
MMIは、一人では練習しにくい形式です。それでもできることがあります。
1. 場面設定を自分で作る
日常のニュースや、学校で起きたことから「どちらを選んでも何かを失う場面」を探して、ノートに書き出してください。
そして、対立している2つの価値を書く。これだけで、ステップ2の訓練になります。
2. 5分で話す練習を、声に出してやる
書く練習では足りません。タイマーを5分に設定し、4ステップの型で話しきる。録音して聞き返すと、詰まる場所が分かります。
3. 医療倫理の基本を押さえる
正解を覚える必要はありませんが、論点の名前を知っていると対立を言葉にしやすくなります。
- インフォームド・コンセント——自己決定と説明責任
- 生命倫理——技術と倫理の境界
- チーム医療——多職種の役割と対立
- 死生観と看取り——終末期の判断
- 地域医療——限られた資源の配分
- 健康格差——公平さとは何か
医学部・看護系の小論文対策は医学部系と看護系にまとめています。
4. 人に見てもらう
面接官役を誰かに頼み、予告なしに場面を出してもらうのが最も効果的です。学校の先生、家族、友人。自分で考えた課題では、その場で考える訓練になりません。
従来の面接との使い分け
MMIを導入している大学でも、すべての面接がMMIとは限りません。志望動機を聞く通常の面接と併用されることもあります。
だから、準備は両方必要です。
| 準備 | 記事 |
|---|---|
| 志望動機・書類ベースの面接 | 面接の頻出10問/書類と面接の一貫性 |
| 学問的な内容を問う試問 | 口頭試問の対策 |
| 他者と議論する形式 | グループディスカッション |
| その場の場面に答える形式 | この記事 |
医学部の入試制度全体の見取り図は医学部の総合型選抜・学校推薦型選抜にまとめています。看護学科の総合型選抜でMMIを使う例は、東京医科大学(看護学科)の記事にあります。
まとめ
- MMIは5分程度の面接を3〜5回、ブースを移動しながらくり返す形式
- ブースごとに面接官が変わる。前のブースは引きずらない
- 評価されるのはコミュニケーション能力・倫理観・協働性・判断力、そして思考の過程
- 課題は場面設定型/資料・データ型/一般的な質問型の3つに分けられる
- 答え方の型は①問いを確認 ②対立を言葉にする ③条件つきで決める ④反対側に配慮する
- 「どちらも大事」で終わらせない。決めることが求められている
- 「分かりません」で止めない。何が分かれば決められるかを言う
- 練習は声に出して5分。人に予告なしで出してもらうのが最も効く
- 実施の有無・形式は大学と年度で変わる。必ず募集要項で確認する