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慶應法学部FIT入試の対策。A方式とB方式は、別の試験だと考える

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慶應義塾大学法学部のFIT入試を、募集要項の記載に沿って整理しました。A方式の模擬講義+論述試験と口頭試問、B方式の総合考査Ⅰ・Ⅱ、志望理由書800字の書き方までを具体的に解説します。

慶應義塾大学法学部のFIT入試は、2006年度から続く総合型選抜です。総合型選抜の中でも歴史が長く、選考方法が独特です。

この記事は、2027年度(2026年9月実施)の募集要項の記載をもとに構成を整理し、対策の方針を示すものです。

必ず最新の募集要項で確認してください。日程・出願資格・試験科目は年度によって変わります。この記事は考え方を示すもので、要項の代わりにはなりません。実際、A方式では2022年度にグループ討論が口頭試問に変更されるなど、選考方法の変更が実際に起きています。 出典:慶應義塾大学法学部FIT入試 募集要項

最初に押さえる:A方式とB方式は別の試験

FIT入試には2つの方式があり、出願資格も、2次選考の中身も違います。同じ「FIT入試」という名前で語るのが、最初のつまずきです。

A方式 B方式
評定の要件 なし 指定5教科と全体で4.0以上
主な出願要件 学業を含む活動での優れた実績 学業成績が優秀であること
提出書類 自己推薦書あり・評価書なし 評価書あり・自己推薦書なし
2次選考 模擬講義+論述試験、口頭試問 総合考査Ⅰ・Ⅱ、面接
地域枠 なし 7ブロックの地域枠あり

法律学科と政治学科の併願はできませんが、同一学科でA方式とB方式の併願は可能です(要項に明記)。

B方式の評定要件は厳格

B方式は、外国語・数学・国語・地理歴史・公民の5教科すべてと全体の学習成績の状況が4.0以上という条件です。要項には「指定の各教科のうち1教科でも4.0未満であった場合は、出願資格を満たしません」と明記されています。

1教科でも欠けたら出願できない。ここは解釈の余地がないので、早めに自分の調査書を確認してください。届かない場合はA方式に絞る判断になります(評定が低い人の総合型選抜)。

B方式の地域ブロック

B方式は全国を7ブロックに分け、各ブロックから学科ごとに最大10名程度を合格者とする仕組みです。ブロックは出身高校の所在地で決まります。

南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)以外のブロックの成績優秀者には、学部独自の特別奨学金があります。地方の受験生にとって、実質的に競争相手が同じブロック内に限定される制度だと理解しておくと、戦略が立てやすくなります。

A方式の2次選考

模擬講義+論述試験

要項によれば、教員が模擬講義を行い、その後に論述試験を実施します。試験では「法律学ないしは政治学の修得に必要な理解力、考察力、表現力など」を評価するとされています。両学科同時・同一内容です。

この形式の意味を考えてください。事前に用意した知識では対応できません。その場で聞いた講義を理解し、整理し、自分の言葉で書く力が測られます。つまり、これは大学の授業を受ける能力そのものの試験です。

この形式は、他大学にも広がっています。明治大学農学部、中央大学法学部チャレンジ入試、立命館大学政策科学セミナー方式、九州大学共創学部——いずれも「講義を聞いて、その場で書く」試験です(明治の自己推薦、中央の総合型、立命館のAO選抜、九州大 共創学部)。1つの対策が、そのまま他大学にも効きます。

対策は3つです。

1. 聞きながらメモを取る訓練 講義を聞きながら、主張・根拠・具体例を区別してメモする。課題文への線の引き方の5記号(◎主張・→逆接・=言い換え・例・?)を、音声に対して使う練習です。学校の授業を教材にできます。

2. 短時間で構成を組む訓練 論述の時間は限られています。構成メモを数分で組み、残りを書く時間に充てる型を作っておいてください。

3. 講義内容を「自分の判断」に接続する訓練 講義の要約だけでは足りません。理解したうえで、自分がどう考えるかまで書く。設問の動詞を読み分けて、要約が求められているのか論述が求められているのかを見極めます。

口頭試問

要項には「複数の教員と1名の受験生で、口頭で与えられたテーマについて質疑応答を行い、受験生の学問的な理解力や知的表現力などを考査します」とあります。

これは面接ではありません。志望動機を語る場ではなく、学問的なテーマについて考えを述べる試験です。準備の方向がまったく違うので、口頭試問の対策を読んでおいてください。

詰まったときの型(問いを言い換えて確認→視点を分ける→条件つきで着地)が、そのまま使えます。沈黙を恐れず、考えてから話し始めるほうが評価されます。

法学部の口頭試問である以上、題材は法や政治に関わる論点になります。法と正義、裁判と司法参加、多様性と共生、表現の自由とメディア、若者の政治参加あたりは、対立軸ごと押さえておくと安心です。法学部の小論文対策の「利益衡量」の型が土台になります。

B方式の2次選考

B方式は総合考査Ⅰ・Ⅱという、性質の異なる2つの筆記が課されます。ここが最大の特徴です。

総合考査Ⅰ——資料の読み取り

要項の記載は「与えられた資料(グラフ、表、データ、条文、判例など)から読み取れることを400字程度にまとめてもらいます。社会科学に必要な論理的な思考力、考察力を評価します」。

これは意見を書く問題ではありません。読み取りと整理の問題です。資料型小論文の書き方の「読み取り」の部分を、400字で正確に行う訓練が必要です。

注意すべきは、条文や判例が資料になりうることです。グラフだけを練習していると対応できません。法律の条文を読んで「何が要件で、何が効果か」を整理する練習も入れておいてください。

総合考査Ⅱ——テーマ型の小論文

こちらは「与えられたテーマのもと400字程度の小論文」で、評価されるのは創造力、独創性、発想力と明記されています。

Ⅰとは評価軸が正反対だと理解してください。Ⅰが正確さなら、Ⅱは発想です。同じ書き方をすると、どちらかで評価されません。

Ⅱの対策はテーマ型小論文の書き方ですが、400字という短さが曲者です。立場を1つに絞り、具体例を1つだけ深く。800字の型をそのまま縮めると、全部が浅くなります。字数調整の考え方で、削る優先順位を決めておいてください。

志望理由書は800字・自筆

要項では、志望理由書は「慶應義塾大学法学部を志望した理由と、入学後、慶應義塾大学の法学部で学ぶ学問が自分の人生でもつ意味について、800字以内(本人の自筆・横書き)」と指定されています。

設問を分解すると、答えるべきことは2つです。

  1. 志望した理由
  2. 法学部で学ぶ学問が、自分の人生でもつ意味

2つ目を落とす答案が非常に多い。「法曹になりたい」は職業の話であって、学問が人生でもつ意味の話ではありません。法律学・政治学という学問を通して世界の何が見えるようになるのか——そこまで踏み込む必要があります。

書き方は志望理由書の完全ガイドと800字の構成を土台に、設問の2要素に必ず両方答えるという配分で組んでください(設問の読み方)。

自筆指定なので、書き直しの時間を見込んでスケジュールを組むこと。清書だけで数時間かかります。

A方式の自己推薦書と別添資料

A方式では自己推薦書を提出します。要項によれば、該当する活動にチェックを入れたうえで「当該活動のうち最も顕著な取り組みと成果を簡潔に記載し、将来どのように社会に貢献する人材となり得るのかについて所定の枠内で自由に表現」します。

別添資料はA4片面5枚以内。そして重要な規定があります。

活動の実績や外国語等の学力等を示したい場合は、公的機関が発付した資料の添付がないと評価の対象になりません。

証明できない実績は、書いても評価されない。外国語の検定などは原本が必要で、証明書の種類にも細かい指定があります(英検はデジタル証明書不可、など)。取得と発行に時間がかかるので、逆算して早めに動いてください。

書き方そのものは自己PRの書き方の「行動の型で示す」を使ってください。実績が思いつかない場合は活動報告書に書くことがない人への掘り方が使えます。

準備の順番

時期 やること
高2〜高3春 調査書を確認しA/B方式を判断。検定は早めに受け、原本を確保
高3 4〜6月 志望理由書の材料集め。法・政治のテーマを5つ押さえる
高3 7月 志望理由書を書き上げる(自筆の清書時間を確保)
高3 8月 論述・総合考査の演習。方式に合わせた形式で
出願後 口頭試問/面接の練習。書いた書類は必ず控えを保管

出願実務の落とし穴は出願直前チェック17項目に、要項の読み方は募集要項の読み方にまとめています。

そして、一般入試の準備は止めないでください。FIT入試は合格したら入学を確約する制度です。裏を返せば、不合格だった場合に切り替える先が必要になります(総合型選抜と一般入試の両立)。

まとめ

  • A方式とB方式は別の試験。評定4.0の要件があるのはB方式のみ
  • B方式の評定は5教科すべてで4.0以上。1教科でも欠けると出願できない
  • A方式は模擬講義+論述と口頭試問。事前の知識では対応できない形式
  • B方式は総合考査ⅠとⅡで評価軸が正反対(正確さと発想)
  • 志望理由書800字は「志望理由」と「学問が人生でもつ意味」の2要素
  • 自己推薦書の実績は、公的な証明書がないと評価対象にならない
  • 日程・要件は必ず最新の募集要項で確認する

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