資料型小論文の書き方。グラフを「説明」する答案は落ちる
グラフや統計資料が出る小論文で、資料の内容をなぞるだけの答案が大量に出ます。読み取り・解釈・意見を分ける型と、資料の落とし穴の見抜き方を解説します。
グラフや表が与えられる資料型は、看護・医療系や社会科学系の学部で頻出の形式です。
そして採点する側から見ると、答案が2種類にきれいに分かれます。資料を「説明」した答案と、資料から「考えた」答案です。前者は、どれだけ丁寧に書いても評価されません。
「説明」と「考えた」の違い
次の2つを比べてください。
説明した答案 資料1を見ると、高齢者の一人暮らし世帯は年々増加していることが分かる。一方、資料2では地域活動への参加率が低下している。
考えた答案 一人暮らしの高齢者が増える一方で地域活動への参加率が下がっているとすれば、行政の見守りが届かない高齢者は、統計に表れている以上の速さで増えている可能性がある。
前者は資料を見れば誰でも書けます。後者は2つの資料を突き合わせて、資料に書かれていないことを導いています。設問が求めているのは後者です。
答案の型:読み取り→解釈→意見
資料型は、この3段階を意識的に分けて書きます。
| 段階 | 内容 | 字数の目安(800字) |
|---|---|---|
| 読み取り | 資料から客観的に言える事実 | 150字 |
| 解釈 | 事実の組み合わせから言えること | 250字 |
| 意見 | 解釈を踏まえた自分の考え・提案 | 400字 |
失敗する答案の大半は、読み取りに400字使っています。読み取りは「短く、正確に」が原則です。
読み取りのルール
数字は「変化」と「差」で語る
「参加率は45%である」だけでは読み取りになりません。何と比べて多いのか少ないのかを言います。
- 時間との比較:10年前と比べて〜ポイント低下している
- 項目間の比較:他の年代と比べて突出して高い
- 資料間の比較:資料1の傾向と資料2の傾向が逆行している
一番大きな特徴を1つだけ選ぶ
資料の中の細かい変化をすべて拾う必要はありません。最も大きな特徴、最も不自然な点を1つ選び、それを解釈と意見につなげます。全部拾おうとすると、読み取りだけで字数が尽きます。
まず軸と単位を確認する
読み始める前の10秒で、次の3つを見てください。ここを飛ばすと、読み取りそのものが誤ります。
- 縦軸が0から始まっているか——途中から始まっていると、変化が実際より大きく見えます
- 単位は何か——人か、割合か、金額か、指数か
- いつからいつまでか——期間の取り方で印象が変わります
「縦軸が0から始まっていない」ことに気づいて一言添えられる答案は、ほとんどありません。気づいたなら書いてください。資料を批判的に読める受験生だと伝わります。
グラフの種類ごとの見どころ
種類によって、拾うべきものが決まっています。
| 種類 | 主に示すもの | 拾うところ |
|---|---|---|
| 折れ線 | 時間の変化 | 傾きが変わった年、方向が反転した点 |
| 棒 | 項目間の大小 | 突出した項目、逆に極端に小さい項目 |
| 帯・円 | 構成比 | 全体に占める割合の変化。実数は分からない |
| 散布図 | 2つの量の関係 | 全体の傾向から外れている点 |
| 複合(棒+折れ線) | 実数と割合を同時に | 両者が逆に動いている箇所 |
折れ線で見るのは「傾きの変化」
数値そのものより、増え方が変わった場所に意味があります。
❌ 2015年は45%、2020年は52%である ⭕ 2015年ごろまで緩やかだった増加が、その後急になっている
変化の変化を書けると、解釈につながります。
帯・円グラフは実数を語れない
割合が増えていても、全体が減っていれば実数は減っていることがあります。構成比の資料だけで「増えた」と書くのは誤りです。
複合グラフは、逆に動く箇所が要
棒(実数)が減っているのに折れ線(割合)が上がっている、という箇所があれば、そこが出題の狙いです。分母が減っていることを意味します。
解釈のルール:「なぜ」と「だとすれば」
読み取った事実に対して、2つの問いを立てます。
- なぜこの変化が起きたのか(背景の推測)
- だとすれば何が起きるか(帰結の推測)
推測であることを明示するのがポイントです。「〜と考えられる」「〜の可能性がある」と書きます。事実と推測の区別がついている答案は、それだけで上位に入ります。
資料の落とし穴を見抜けると強い
出題される資料には、意図的に「読み方に注意が要る」ものが混ざることがあります。気づけると、答案の格が一段上がります。
割合と実数の違い
「高齢者の事故の割合が増えた」は、高齢者が増えたからかもしれません。割合の変化を見たら、分母が変わっていないかを疑います。
相関と因果の違い
2つの数字が同時に動いていても、片方が原因とは限りません。「朝食を食べる子どもは成績が良い」という資料から「朝食が成績を上げる」と断定したら、論理の飛躍です。「〜が要因の一つと考えられる」に留めるのが正確な書き方です。
調査対象と聞き方
アンケート資料では、誰に・どう聞いたかで結果が変わります。回答者が偏っていそうな資料では、その限界に一言触れると、資料を批判的に読める受験生だと伝わります。
ただし、資料批判だけで終わる答案にはしないでください。限界を指摘した上で、それでも言えることを述べるのが本筋です。
意見のルール
意見のパートは、テーマ型の小論文と同じ書き方です。1つだけ資料型特有の注意があります。
資料から離れないこと。
意見を書いているうちに、資料と関係のない持論の展開になる答案があります。段落の最初か最後で、必ず資料の読み取りに接続してください。
資料2で参加率の低下が最も大きかった現役世代を地域に呼び戻すには、〜
このように資料の具体的な箇所を指しながら意見を書くと、論が資料に接地します。
「対策を提案せよ」と言われたら
資料型では、意見のかわりに提案を求められることがあります。提案には型があります。
①誰が ②何を ③なぜそれが資料の問題に効くのか
3つ目が抜けている提案が大半です。
❌ 地域の交流イベントを増やすべきである。 ⭕ 自治体が、平日日中ではなく夜間や休日に集まりを設定すべきである。資料2で参加率の低下が最も大きかったのは現役世代であり、参加できない理由が意欲ではなく時間帯にあると考えられるからだ。
資料のどの数字に効くのかを書く。これだけで提案の質が変わります。
資料に文章が付いている場合
グラフだけでなく、短い説明文や新聞記事が併記される出題があります。
役割が違うので、扱いを分けてください。
- 数値の資料——何が起きているかを示す
- 文章の資料——なぜそう見るのかという解釈を提供する
文章の資料は解釈の候補をくれます。それをそのまま採るか、数値と照らして疑うかが、あなたの仕事です。
資料3では担い手不足が原因とされているが、資料1を見る限り、参加を希望する人自体は減っていない。問題は人数ではなく、参加できる条件のほうにあるのではないか。
文章資料に反論する形は強い書き方です。ただし数値の裏づけを必ず添えてください。
資料が3つ以上ある場合の組み合わせ方は資料が複数出たときにまとめました。
よくある失敗
資料を1つずつ順番に説明する
資料型で最も多い失敗です。組み合わせて初めて言えることを書いてください。
数字を書き写す
「45.2%」「38.7%」と並べても得点はありません。変化と差で語ってください。
資料にない知識で論じる
覚えている統計や事例を持ち出すと、設問から外れます。自分の経験を具体例として足すのは問題ありません。
資料批判だけで終える
「この調査は対象が偏っている」で止めると、何も論じていないことになります。限界を指摘した上で、それでも言えることを述べてください。
答案例:読み取り→解釈→意見を通しで書く
例題で通し方を見せます。データは説明用に作った架空のものです。
【資料】X市立図書館の年間貸出数の推移(過去10年) 全体:ほぼ横ばい。60歳以上:約1.8倍に増加。10代:約半分に減少。
説明で終わる答案は、こう始まります。
資料を見ると、全体の貸出数は横ばいであり、60歳以上は1.8倍に増え、10代は半分に減っている。このように年代によって差があることが分かる。
グラフに書いてあることを日本語にしただけで、「考えた」部分がありません。
型どおりに書くと、こうなります(300字設問を想定)。
過去10年で全体の貸出数は横ばいだが、内訳は大きく入れ替わっている。60歳以上が約1.8倍に増えた一方、10代は半減した。(読み取り)
全体の数字が保たれているのは、高齢層の増加が若年層の減少を覆い隠しているからだ。だとすれば「利用は安定している」という評価は実態を見誤る。10代の減少は、スマートフォンで情報が足りることだけでなく、開館時間が下校後の生活と合っていない可能性も考えられる。(解釈)
したがって、いま打つべき手は貸出数全体の維持ではなく、10代に絞った利用の立て直しである。まず高校の定期試験期の開館延長のように、対象と場面を限定した施策から検証すべきだ。(意見)
読み取りは数字2つに絞る。解釈で「なぜ」と「だとすれば」を1回ずつ使う。意見は資料から地続きの範囲で1つに絞る。この配分なら、300字でも「考えた証拠」が残ります。
まとめ
- 資料の説明で終わる答案は評価されない。資料に書かれていないことを導く
- 読み取り150字・解釈250字・意見400字の配分
- 数字は変化と差で語り、特徴は1つに絞る
- 事実と推測を書き分ける(「〜と考えられる」)
- 割合と実数、相関と因果の混同に気づけると強い
- 読む前に軸・単位・期間を確認する。縦軸が0から始まっていないことに気づけたら書く
- 折れ線は傾きの変化、帯や円は実数を語れない、複合グラフは逆に動く箇所が要
- 提案は「誰が・何を・なぜ資料の問題に効くのか」の3点で書く
- 文章の資料は解釈をくれる。数値と照らして疑ってよい
- 意見は資料の具体的な箇所に接続する
資料読み取り型の小論文を課す大学の例は東京未来大学の総合型選抜にあります。出題テーマが7つ事前に公表されているので、練習の的を絞れます。
植草学園大学の基礎学力試験(小論文)は、政府統計の図表を読んで計算・選択・作図をさせたうえで最後に400字を書かせる形で、問題と解答が2年分公開されています。
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。