小論文の設問の読み方。「述べよ・論じよ・説明せよ」で答案は変わる
設問の最後の動詞は、答案に何を書くべきかの指示です。説明せよ・論じよ・考えを述べよ・要約せよ・提案せよの違いと、複数の指示が重なる設問の処理手順を解説します。
答案がずれる原因の多くは、書く力ではなく設問の読み落としにあります。
そして設問の中で最も重要な情報は、最後の動詞です。「説明せよ」「論じよ」「あなたの考えを述べよ」——この動詞が、答案に何を書くべきかを指定しています。動詞を読み飛ばした答案は、どれだけ上手く書けても「聞かれたことに答えていない」と評価されます。
動詞は「あなたの意見が要るか」を指定している
設問の動詞は、大きく2群に分かれます。
| 群 | 動詞 | あなたの意見 |
|---|---|---|
| 客観系 | 説明せよ/要約せよ/まとめよ/整理せよ | 書かない |
| 主観系 | 論じよ/考えを述べよ/意見を述べよ/提案せよ | 書く |
最も多い失敗は、この2群の取り違えです。「筆者の主張を説明せよ」に自分の意見を混ぜる。「あなたの考えを述べよ」に課題文の要約だけを書く。どちらも、設問への不服従として減点されます。
以下、動詞ごとに見ていきます。
客観系の動詞
「説明せよ」——分からない人に分からせる
説明とは、その言葉や主張を知らない読み手に、順序立てて分からせることです。
「傍線部について説明せよ」なら、やることは3つです。
- 傍線部の言葉を、課題文の文脈でどういう意味かを言い換える
- なぜ筆者はそう言えるのか、根拠を課題文から拾って添える
- 自分の意見・感想は一切書かない
「説明せよ」で評価されるのは独創性ではなく、正確さと過不足のなさです。ここで頑張って自分の意見を足すと、蛇足ではなく誤答になります。
「要約せよ」——骨組みを抜く
要約は「短くする」作業ではなく「骨組みを抜く」作業です。手順は課題文要約の記事に譲りますが、動詞としての注意は1つ——要約にも意見は書かない。
「整理せよ・比較せよ」——観点を立てて並べる
「AとBの違いを整理せよ」型は、思いついた順に並べると減点されます。観点(比較の軸)を自分で立てて、その軸に沿って並べるのが正解です。「比較して論じよ」まで進む場合は比較設問の答え方を参照してください。
主観系の動詞
「あなたの考えを述べよ」——立場を1つ決めて支える
最頻出の指示です。求められているのは感想ではなく、立場+根拠です。
「述べよ」だからといって、思ったことを順に述べてはいけません。「述べよ」は実質「論じよ」とほぼ同じと考えて構いません。
「論じよ」——反対意見の存在を前提にする
「論じる」とは、異なる立場がありうる問題について、根拠を挙げて自分の立場を擁護することです。
つまり「論じよ」と言われた瞬間、反論の検討が事実上の必須項目になります。賛成だけ、反対だけを書いた答案は、「論じた」ことになりません。譲歩→限定→再主張の型(反論への応答)を必ず1段落入れてください。
「提案せよ・対策を述べよ」——実行可能性まで書く
政策系の設問で増えている動詞です。提案には、意見よりも高い要求が含まれています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 実行の主体(国・自治体・学校・個人) |
| 何を | 具体的な中身 |
| 副作用 | その提案で新たに困る人はいないか |
「意識を高める」「連携を強化する」は提案ではありません。主体と中身が言えて、初めて提案です。
「あなたの経験を踏まえて」——体験の指定
この一句が付いたら、具体例は自分の体験に限定されます。ニュースや一般論の例で代用すると、指示違反です。逆に、この指定がないのに体験談ばかり書く必要はありません。
複数の指示が重なる設問
実際の入試では、動詞は単独では出ません。
課題文の筆者の主張を100字で要約した上で、その主張に対するあなたの考えを500字以内で述べよ。
この設問には指示が2つあります。処理の手順は次のとおりです。
- 設問を分解して番号を振る——①要約100字(客観)②考え500字(主観)
- 指示ごとに配点があると考える——①を落とすと、②がどれだけ良くても上限が下がる
- 書く前に、それぞれの字数を確定する——段落構成の考え方で機械的に
「〜を踏まえて」「〜に触れながら」という接続の指示も同じです。踏まえたことが答案の見た目で分かるように、①の内容を②の冒頭か理由部で明示的に受けてください。頭の中で踏まえていても、紙面に出ていなければ採点できません。
設問チェックの30秒ルーチン
試験が始まったら、課題文より先に設問を読み(課題文型の手順)、次の4点に印を付けます。
- 動詞——客観系か主観系か
- 指示の数——要約+意見など、いくつ課されているか
- 条件——字数、経験指定、「本文の語を用いて」等
- 問いの対象——「筆者の主張について」か「この現象について」か(ずれると全部ずれる)
この30秒が、答案全体の方向を決めます。
まとめ
- 設問の最後の動詞は、意見が要るか要らないかの指定
- 「説明・要約」に意見を書かない。「述べよ・論じよ」に要約だけを書かない
- 「論じよ」は反論検討が事実上の必須
- 「提案せよ」は主体と中身と副作用まで
- 指示が複数ある設問は、分解して番号を振り、字数を先に配る