小論文の課題文への線の引き方。読みながら構成を作る5つの記号
課題文を読み終えてから考え始めると時間が足りません。読みながら構成が進む線の引き方を、実際に使う5つの記号と手順で解説します。要約が課される場合の使い分けも扱います。
課題文型で時間が足りなくなる人の共通点は、読み終えてから考え始めていることです。
読解と構想を順番にやると、どれだけ速く読んでも間に合いません。解決策は、読みながら構成が進む読み方をすることです。そのための道具が、線と記号です。
やってはいけない線の引き方
いちばん多いのが、大事そうな箇所すべてに線を引く方法です。
課題文の半分に線が引かれた状態で読み終えると、線を引いていないのと同じになります。線は「あとで戻る場所」の目印なので、多いほど価値が下がる道具です。
目安は、1000字の課題文で線は5〜7箇所。それ以上は引きすぎです。
使う記号は5つだけ
記号を増やすと、記号を選ぶことに気を取られます。次の5つで足ります。
| 記号 | 引く対象 | なぜ引くか |
|---|---|---|
| ◎ | 筆者の主張の一文 | 要約と反論の起点 |
| → | 「しかし」「だが」 | 論が曲がる場所 |
| = | 「つまり」「すなわち」 | 主張の言い直し |
| 例 | 「たとえば」以降 | 要約では削る箇所 |
| ? | 納得できない箇所 | 自分の意見の種 |
◎ 筆者の主張
最終段落、「つまり」の直後、「〜べきだ」「〜ではないだろうか」の文にあります。1つだけ選びます。複数引くと、あとで迷います。
→ 逆接
課題文が曲がる場所です。逆接の直後に筆者の言いたいことが来るのが日本語の構造なので、ここを追えば主張に辿り着けます。
= 言い換え
「つまり」「すなわち」の後は、直前の内容を圧縮した文です。要約にそのまま使えることが多い箇所です。
例 具体例
「たとえば」から始まる範囲を、カッコでくくるだけで構いません。要約では削る部分なので、中身は読み込まなくていいという判断材料になります。
? 納得できない箇所
これが最も重要な記号です。読みながら「本当にそうか」と思った場所に印を付けます。
多くの受験生は課題文を無批判に受け取ってしまい、読み終えてから「自分の意見」を探し始めます。読みながら?を付けておけば、自分の意見はすでに課題文の余白にある状態になります。
主張が明示されていない課題文
随筆や評論の一部が出ると、「〜べきだ」という文がどこにもないことがあります。◎を引く対象が見つからない状態です。
このときは、次の順に探してください。
- 繰り返し出てくる語——筆者が何度も使う語が、論の中心にあります
- 否定の形——「〜ではない」「〜にすぎない」。何を否定しているかで、肯定したいものが分かります
- 最終段落の一文——結論が置かれる位置は最後であることが多い
それでも見つからなければ、筆者が何を惜しんでいるか、何に苛立っているかを読んでください。随筆では、主張が感情の形で書かれます。
筆者は、効率を求める姿勢そのものを否定してはいない。惜しんでいるのは、そこで失われる時間のほうである。
この形で一文が作れれば、◎の代わりになります。
課題文が長いとき
2000字を超える課題文では、5〜7箇所という目安が合いません。段落単位で処理を切り替えます。
- 各段落の1文目と最終文だけを読み、段落の横に2〜3字の役割メモを書く
- 役割メモが「例」「補足」の段落は、本文を読まない
- 「主張」「反論」とメモした段落だけ、戻って線を引く
全部を同じ密度で読まないことが、長文への対処です。
課題文が2つ以上あるとき
課題文が複数与えられる出題では、それぞれに◎を1つずつ引き、最後に関係を決めます。
| 関係 | 見え方 |
|---|---|
| 同じ方向 | 一方が他方を補強している |
| 対立 | 同じ問題に別の答えを出している |
| 論点がずれている | 同じ語を違う意味で使っている |
3つ目に気づけると、答案の水準が一段上がります。同じ「自由」という語を、一方は選択肢の多さ、他方は干渉のなさとして使っている——という指摘は、それだけで論になります。
資料が複数ある場合の扱いは資料が複数出たときにまとめました。
傍線部設問がある場合
「傍線部について、筆者はどういう意味で述べているか」という設問がついていることがあります。
このときは、傍線部の前後3行に必ず答えがあります。離れた場所を探さないでください。線を引くのは傍線部そのものではなく、その直前の「つまり」や直後の言い換えです。
手順:読む前・読みながら・読んだ後
読む前(2分)
設問を先に読みます。確認するのは3つ。
- 要約が求められているか
- 「あなたの考え」か「筆者の主張への意見」か
- 字数
要約が課される場合は◎と=を厚く、意見だけなら?を厚く引く、と読み方を切り替えます。
読みながら(12〜15分)
上の5記号を引きながら1回だけ読みます。戻り読みをしないのがコツです。分からない箇所があっても先に進みます。多くの場合、後の段落で説明されます。
読んだ後(3分)
線を引いた箇所だけを見て、次の一文を作ります。
「Aに対して、筆者はBだと考えている」
この一文が作れたら、読解は成功です。作れないときは、◎の選択を間違えている可能性があります。
そして?を付けた箇所を見返し、最も強く引っかかったものを1つ選ぶ。それが自分の立場の出発点になります。
?から意見を立てる方法
?の中身は、たいてい次の3種類です。
1. 例外がある … 「その主張は、〜の場合には当てはまらないのでは」 2. 前提が疑わしい … 「筆者は〜を当然としているが、本当にそうか」 3. 程度の問題 … 「方向は正しいが、そこまで言えるか」
このどれかに当てはめれば、課題文に賛成しつつ部分的に留保するという、最も書きやすい立場が作れます。全面賛成でも全面反対でもない立場は、論じる余地が最も大きくなります。
書き込みは最小限に
線と記号のほかに、段落の横に2〜3字のメモを書くのは有効です。「現状」「反論」「例」のように、その段落の役割を書いておきます。
一方、長い感想を余白に書くのは時間の無駄です。書き込みは、あとで探す手間を減らすためのものであって、考えを記録するものではありません。
蛍光ペンは使わない
色を塗ると、あとから優先順位が付けられません。引いた場所がすべて同じ重さに見えます。
鉛筆かシャープペンシルで、線と記号だけ。記号は形で区別できるので、色は要りません。
実際に引くとどうなるか
短い課題文で、記号の付き方を示します。
効率を上げることは、それ自体としては望ましい。作業が早く終われば、その分だけ他のことに時間を使えるからだ。例〔たとえば、会議の時間を半分にすれば、その分を実務に回せる。〕 →しかし、短縮された時間が本当に別の何かに使われているかというと、そうとは限らない。?〔空いた時間には、たいてい別の予定が入る。〕 ◎効率化が生むのは余裕ではなく、密度である。=つまり私たちは、時間を得たのではなく、同じ時間により多くを詰め込むようになっただけなのだ。
引いた箇所は5つ。ここから作れる一文は次のとおりです。
効率化は余裕を生むという見方に対して、筆者は密度が上がるだけだと考えている。
そして?を付けた「空いた時間には別の予定が入る」に対して、それは効率化のせいなのか、予定を入れる側の問題ではないかという疑問が立ちます。これが自分の立場の出発点になります。
時間内に読み終わらなかったとき
残り時間が構成メモの分しかない、という場合の対処です。
読んでいない部分があることを前提に、読めた範囲で立場を決めてください。慌てて飛ばし読みすると、主張を取り違えます。
序論で次のように書いておけば、大きな失点は避けられます。
筆者の主張は、〜という点にあると私は読んだ。
読み違えたまま断定するより、自分の読みを明示するほうが安全です。この保険は課題文型小論文の解き方にも書いています。
まとめ
- 線は「あとで戻る場所」の目印。1000字で5〜7箇所まで
- 記号は5つ:◎主張/→逆接/=言い換え/例具体例/?疑問
- 最重要は?。読みながら引っかかった場所が自分の意見になる
- 設問を先に読み、要約の有無で読み方を切り替える
- 戻り読みをせず1回で読む
- 読後に「Aに対してB」の一文を作る。作れなければ◎が違う
- 主張が明示されない文章は、繰り返される語・否定の形・最終段落から探す
- 長い課題文は段落単位で処理を切り替える。全部を同じ密度で読まない
- 課題文が複数なら、それぞれに◎を引き、最後に関係(補強・対立・論点のずれ)を決める
- 傍線部設問の答えは前後3行にある
- 蛍光ペンは使わない。塗ると優先順位が付けられない
- 読み終わらなかったら、読めた範囲で立場を決め、序論で自分の読みを明示する
形式別の解き方・時間配分は、課題文型小論文の解き方と小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。