小論文の字数調整。足りないとき・超えたときの直し方
字数が埋まらない、逆に収まらない。どちらも書き足す・削る場所を間違えると論が崩れます。増やしていい箇所と削っていい箇所を優先順位つきで示します。
試験中に最も焦るのが字数の問題です。そして焦って直すと論が崩れます。
増やす場所と削る場所には、優先順位があります。
前提:字数の許容範囲
| 指定 | 意味 | 目標 |
|---|---|---|
| 800字以内 | 800字を1字でも超えたら不可 | 720〜790字 |
| 800字程度 | 前後1割が目安(解釈は大学による) | 760〜840字 |
| 600字以上800字以内 | 下限も明示されている | 750〜790字 |
「以内」の場合、8割を下回ると減点対象になることがあります。800字なら640字が最低ラインで、狙うのは9割前後です。
下限が明示されている場合
「600字以上800字以内」という形式では、下限を1字でも下回ると採点対象外になることがあります。上限より下限のほうが危険です。
この形式では下限+50字を目標にしてください。上限いっぱいを狙って超過するより、650字で確実に収めるほうが安全です。
字数を数える速い方法
原稿用紙なら、1行20字なので行数を数えるだけです。最終行だけマス目を数えます。
38行 × 20字 + 最終行12字 = 772字
罫線用紙の場合は、書き始める前に1行の字数を数えておいてください。書き終わってから数え始めると間に合いません。
字数が足りないとき
増やしてよい箇所(優先順)
1. 具体例の描写を細かくする
最も安全で、質も上がります。
前:祖母は病院で説明を受けた。 後:祖母は手術の前日、病室で説明を受けた。私も同席していたが、祖母は一度も質問しなかった。
いつ・どこで・誰がを足すだけで50〜80字増え、しかも論拠として強くなります。
2. 反論への応答を厚くする
反論を1文で流していたなら、そこを3文に増やします。字数が増えて、同時に評価も上がる唯一の場所です。
3. 事実と主張のあいだに「橋」を足す
具体例から主張へ飛んでいる箇所に、そこから言えることを1文挟みます。
事実 →(橋)→ 主張
この橋は多くの答案で抜けているので、足せば論証が強くなります。
増やしてはいけない箇所
- 序論:問いと立場だけでよく、膨らませると本論が圧迫される
- 同じ主張の言い換え:「つまり」「このように」で繰り返すと、字数稼ぎに見える
- 一般論・背景説明:誰でも書ける部分が増えるほど、答案は弱くなる
- 具体例の追加:2つ目を浅く足すより、1つ目を深くする
最後が特に重要です。具体例を増やすのは一見よさそうですが、1つあたりが浅くなり、逆効果になります。
字数が超えたとき
削ってよい箇所(優先順)
1. 背景説明・定義
「〜とは〜のことである」「近年、〜が問題となっている」は、多くの場合まるごと削れます。
2. 修飾語
「非常に」「とても」「きわめて」「まさに」。強調の副詞は、論の強さに寄与しません。
3. 同じ内容の繰り返し
序論で述べた立場を結論で繰り返す際、表現を変えて同じことを言っている部分は圧縮できます。
4. 「〜と思う」「〜と考える」の重複
1つの答案で3回以上出ていたら、2回は削れます。断定に変えても論旨は変わりません。
削ってはいけない箇所
- 反論への応答:ここを削ると答案の水準が一段下がる
- 具体例の中の事実部分:抽象化すると論拠でなくなる
- 理由:主張だけが残ると根拠のない文章になる
原稿用紙で調整するときの実務
削るほうが圧倒的に安全です。1文を丸ごと消して空白にするのは問題ありません。消して書き直すと、字数がずれて後続を全部書き直すことになります。
足す場合は、最終段落に1〜2文足すのが最も安全です。途中に挿入すると、行間への書き込みになって読みにくくなります。
残り時間が5分を切ったら、字数調整はしない。未完成の文が残るほうが、字数不足より大きく減点されます。
大幅に足りないとき
半分程度しか埋まらない、という状態への対処です。これは調整の問題ではなく、構成の問題です。
原因はほぼ2つに絞れます。
原因1|具体例が決まっていない
最も多い原因です。抽象的な主張だけでは、字数は絶対に埋まりません。
その場での対処は、いま書いている具体例にいつ・どこで・誰がを足すことです。これだけで50〜80字増え、論拠としても強くなります。
具体例がそもそも無いなら、小論文が書けないときの逆引きの手順を使ってください。
原因2|反論の段落を予定に入れていない
反論への応答を丸ごと落としていると、800字の答案では150字前後が空きます。ここを足すと、字数と評価が同時に上がります。
たしかに〜という見方もある。しかし〜
段落を1つ増やす形なので、書き足す場所を探す必要がありません。
やってはいけない埋め方
- 一般論を足す(誰でも書ける部分が増える)
- 同じ主張を言い換える(字数稼ぎに見える)
- 課題文を写す(要約を求められていないなら無意味)
- 「以上のように」で始まる段落を増やす
大幅に超えそうなとき
書いている途中で「入りきらない」と気づいた場合、書き直さずに、これから書く部分を圧縮します。
優先順位は明確です。
- 具体例の後半を削る——場面の描写を短くする
- 結論を2文に圧縮する——「したがって私は〜と考える。ただし〜という条件の下でのことである」
- 反論は削らない——ここを落とすと答案の水準が一段下がる
すでに書いた部分を消して詰めるのは、最後の手段です。消して書き直すと後続の字数が全部ずれ、時間が足りなくなります。
段落を増減させて調整する
字数が100字以上ずれている場合、文単位ではなく段落単位で考えるほうが速いです。
| ずれ | 対処 |
|---|---|
| 150字ほど足りない | 反論の段落を1つ足す |
| 150字ほど超える | 具体例を2つ書いていれば1つ落とす |
| 80字前後 | 文単位で調整する |
段落数の目安は小論文の段落構成にまとめました。
練習で身につけるべき感覚
試験中に調整しなくて済むのが理想です。そのために、練習で次を測っておきます。
- 自分の1行あたりの字数(原稿用紙なら20字固定だが、罫線用紙の場合は測る)
- 構成メモの段階で各段落の目標字数を書く
- 書きながら段落末で行数を確認する
800字なら、序論2行・理由5行・具体例6行・反論3行・結論2行、のように行数で管理すると、書きながら軌道修正できます。字数を数えるより速く、正確です。
まとめ
- 「以内」は8割未満で減点。狙いは9割前後
- 足すなら:具体例の描写→反論の厚み→事実と主張の橋
- 足してはいけない:序論・言い換え・一般論・2つ目の具体例
- 削るなら:背景説明→修飾語→繰り返し→「思う」
- 削ってはいけない:反論・具体例の事実・理由
- 原稿用紙では削るほうが安全。足すなら最終段落
- 残り5分を切ったら調整しない
- 練習では字数ではなく行数で管理する
- 下限が明示されている形式では、下限+50字を狙う。上限より下限が危険
- 字数は行数×20で数える。罫線用紙なら1行の字数を先に確認する
- 大幅に足りないのは調整の問題ではなく、具体例か反論が抜けている
- 100字以上ずれたら、文ではなく段落単位で増減させる
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。