東大 学校推薦型選抜の対策。校内で4人という枠と、学部ごとに別物の試験
東京大学の学校推薦型選抜を募集要項に沿って整理しました。学校長が推薦できるのは合計4人・同一学部は男女各1人という校内の枠、共通テスト8割の目安、学部ごとにまったく違う試験、3年分公開されている過去の課題までを解説します。
東京大学の学校推薦型選抜は、募集人員100人程度に対して全国の高校から志願者が集まる入試です。
ただ、この入試でいちばん最初に越えなければならない壁は、東大の試験ではありません。自分の高校の中にあります。
この記事は、公開されている募集要項の記載をもとに構造を整理したものです。
必ず最新の募集要項で確認してください。日程・募集人員・推薦要件は年度によって変わります。この記事は考え方を示すもので、要項の代わりにはなりません。 出典:東京大学 学校推薦型選抜/学校推薦型選抜 学生募集要項と出願に必要な提出書類様式/学校推薦型選抜 志願者数・合格者数・過去の試験課題
最初に押さえる3つの事実
1. 出願の前に、校内で枠を取る必要がある
要項の推薦要件の冒頭に、こう書かれています。
学校長は、次の要件の全てに該当する者を合計4人、ただし、男女各3人まで推薦できることとします。男女いずれかのみが在学する学校においては、推薦できる人数は3人となります。また、同一学部への推薦は、男女各1人までとします
1つの高校から出せるのは合計4人。同じ学部には男女各1人まで。同じ人を複数の学部に推薦することもできません。
これは他大学の推薦にはあまりない制約です。あなたが工学部志望なら、同じ高校の同性で工学部志望の人がもう1人いる時点で、東大の試験を受ける前に校内で決着がつきます。
だから、いちばん先にやることは志望理由書を書くことではありません。担任か進路指導部に、今年その枠が空いているかを聞くことです。ここが埋まっていれば、どれだけ準備しても出願できません。
2. 共通テストは「概ね8割以上」が目安
第1次選考(書類)を通っても、共通テストがあります。要項にはこうあります。
大学入学共通テストは、入学後の学修を円滑に行いうる基礎学力を有しているかどうかを判断する観点から、概ね8割以上の得点であることを目安とします。
推薦だから学科の勉強をしなくていい、という入試ではありません。しかも指定された教科・科目を1つでも受験していないと、その時点で合格者になりません。
日程を見れば分かるとおり、面接は12月、共通テストは1月です。つまり面接が終わってから共通テストまで1か月あり、そこで落ちる可能性が残っている構造です。
3. 学部ごとに、試験がまったく違う
ここが東大の推薦のいちばん誤解されやすいところです。「東大の推薦対策」というひとまとまりの対策は存在しません。
| 学部 | 面接等の方法 |
|---|---|
| 法学部 | グループ・ディスカッション + 個別面接 |
| 文学部 | 1日目に小論文、2日目に面接(7分以内のプレゼンを含む) |
| 教養学部 | 面接。ただし面接に先立って小論文等を課す |
| 教育学部 | 発表 + 個別面接(他の受験者も参加して質疑応答) |
| 経済学部 | 個別面接(30分程度。課題を課す場合あり) |
| 工学部 | 面接 |
| 理学部 | 日本語による個別面接 |
| 農学部 | 面接(農学とその関連分野への興味と理解力を評価) |
| 薬学部 | 個別面接 |
| 医学部 医学科/健康総合科学科 | プレゼンテーション + 質疑応答 |
小論文が課されるのは文学部と教養学部、グループ・ディスカッションは法学部だけです。志望学部が決まらないと、対策の中身が決まりません。
校内の枠——数字を正確に押さえる
推薦要件の人数制限を整理すると、次のようになります。
- 1つの高校から推薦できるのは合計4人
- ただし男女各3人まで
- 男女いずれかのみが在学する学校(男子校・女子校)は合計3人
- 同一学部への推薦は男女各1人まで(医学部のみ、医学科と健康総合科学科への出願は可)
- 同一の志願者を複数の学部に推薦することはできない
つまり「東大の推薦を受けたい」と思った時点で、あなたは校内で同性・同学部志望のライバルと1つの椅子を争っていることになります。
そして推薦要件には、もう1つ重い条件があります。
合格した場合、必ず入学することを確約できる者
専願です。受かったら行く、という前提でしか出願できません。
併願のルール——ここを間違えると出願できない
要項の「出願に当たっての注意事項」に、併願の可否がまとめて書かれています。読み違えやすいので、条件ごとに分けます。
できること
- 東大の一般選抜(前期日程)との併願(ただし別途の出願手続きが必要)
- 推薦に不合格だった場合に備えて、国公立の一般選抜に前期・後期から各1つ、計2つ出願
できないこと
- 国公立大学の学校推薦型選抜への複数出願(1つの大学・学部のみ。共通テストを課すか課さないかを問わない)
- 他の国公立大学の総合型選抜に出願した者が、東大の学校推薦型選抜に出願すること
- UTokyo College of Design との併願
要項はこう書いています。
他の国公立大学の総合型選抜(旧AO入試)に出願した者は、本学の学校推薦型選抜に出願することはできません。
京都大学の特色入試や一橋大学の学校推薦型選抜、北海道大学のフロンティア入試、神戸大学の「志」特別選抜、筑波大学のAC入試、東北大学のAO入試、九州大学の共創学部と併願する余地はありません。国公立の総合型・推薦は、1つに絞って出すものだと考えてください。
なお、推薦に合格して入学手続を行うと、一般選抜(前期日程)を受験しても合格者になりません。成績開示を請求しても表示されない、と明記されています。
日程——面接は12月、決着は2月
令和9(2027)年度の日程は次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 10月15日 正午頃〜11月6日 17時 | 志願者によるインターネット入学志願票作成 |
| 11月1日 正午頃〜11月6日 17時 | 高等学校による出願(書類のアップロード) |
| 12月1日 15時 | 第1次選考結果発表 |
| 12月12日・13日 | 面接等 |
| 12月22日 必着 | 共通テスト成績請求チケット提出 |
| 1月16日・17日 | 大学入学共通テスト |
| 2月10日 12時頃 | 最終合格者発表 |
| 2月11日〜17日 必着 | 入学手続 |
注意したいのは、出願するのは高校だという点です。志願者が志願票を作り、高校が書類をアップロードします。11月6日17時という締切は、あなたではなく先生が守る締切でもあります。10月に入ってから相談を始めると間に合いません。
募集要項の読み方で書いたとおり、まず日程表を書き写して、逆算した予定を立ててください。
小論文を課す2学部
文学部——2時間で800字を2本
令和8(2026)年度の課題冊子から、実施形式が分かります。
- 12月13日 10時00分〜12時00分(2時間)
- 課題は2題。解答用紙は課題(一)用が3枚、課題(二)用が3枚の計6枚
- 縦書き
- 黒色鉛筆または黒色シャープペンシルを使用
設問はどちらも「八〇〇字程度」でした。つまり2時間で800字を2本です。1本あたり実質1時間。読解と構成を含めての1時間なので、書き出しで迷う時間は残っていません。
課題の中身も具体的です。令和8年度の課題(一)は、入江昭「国家の枠組みを離れた歴史」からの出題で、設問はこうでした。
この文章は二〇一五年に発表されたものです。傍線部に見られる著者の意見について、その後の世界情勢の変化を踏まえながら、あなた自身の考えを八〇〇字程度で述べなさい。
課題(二)は古田徹也『言葉の魂の哲学』から、カール・クラウスとジョージ・オーウェルの言語論を扱った文章で、設問はこうです。
傍線部の「常套句に合わせてしまうこと」の問題点をあきらかにした上で、その解決方法についてあなた自身の考えを八〇〇字程度で論述せよ。
どちらも課題文の主張を正確に取ったうえで、自分の考えを組み立てるタイプです。課題文型の解き方と線の引き方がそのまま効きます。
一方で、「二〇一五年発表の文章に、その後の世界情勢の変化を踏まえて答えよ」という設問は、課題文の外側の知識を求めています。文章を読むだけでは書けません。背景知識を持っているかどうかが、そのまま差になります。
教養学部——面接の前に小論文
教養学部は表向き「面接による審査」ですが、注記にこうあります。
面接試験当日、面接に先立って、原則として志望学科・コースの学問領域に関する問題意識や必要な能力を問う小論文等を課します。
志望学科・コースの学問領域に関する、という限定が付いています。汎用の小論文対策では届きません。自分が出す学科の分野で、いま何が論点になっているかを知っている必要があります。
令和8年度の教養学科の課題は、馬渕浩二『連帯論——分かち合いの論理と倫理』からの出題で、設問は2つでした。
(一)傍線部①「この人間的連帯という発想には様々な批判が向けられている」とあるが、課題文で紹介されている「様々な批判」を七行以内でまとめて述べなさい。 (二)……この反論や「様々な批判」をふまえて、あなたは人間的連帯という発想についてどのように考えますか。具体例を挙げながら自由に論じなさい。
(一)は要約、(二)は論述という組み立てです。解答用紙は両面1枚のみ、草稿用紙はB4を2枚使ってよい、とされています。
(一)の「七行以内でまとめて述べなさい」は、要約の技術そのものです。課題文に書かれている批判を漏れなく、しかし字数内に収める。ここで自分の意見を混ぜると減点されます。
なお、外国語に関する語学力の証明書を提出した場合には、外国語の面接を行うことがあるとも書かれています。
法学部のグループ・ディスカッション
法学部は小論文ではなくグループ・ディスカッションです。令和8年度の課題冊子には、注意事項がそのまま載っています。
- 課題文を読む時間は10分
- ディスカッションの時間は80分
- 審査員は議論の進行に関与しない。決定のしかたや議論の進め方は受験生が決める
- 終了時間までに主要な結論をまとめる。ただし全員が同じ結論に到達する必要はない。複数の結論を含んだまとめでもよい
- 審査員へのプレゼンテーションは不要
- 思想・信条を評価の対象とするものではない
- 課題冊子とメモ用紙は回収され、書き込みは審査の対象にならない
80分というのは、入試のグループ・ディスカッションとしてはかなり長い部類です。最初の勢いだけでは持ちません。
そして「全員が同じ結論に到達する必要はない」と明記されている点が重要です。無理に合意を作りにいく必要はありません。むしろ、対立点をはっきりさせないまま曖昧な結論に着地させるほうが、論理的思考力の評価としては不利になり得ます。
令和8年度の課題は、対話型生成AIが未成年者に与える影響と、その規制の要否でした。設問はこう分かれています。
(1)規制をすることのメリットとデメリットについて、規制によって守られる利益(価値)と損なわれる利益(価値)の双方を考慮しながら議論してください。 (2)その議論の結果を踏まえて、規制が必要だとする立場をとる場合には、①どのような主体が、②どのような対象に、③どのような規制を、④どのような正当化根拠をもって設けるべきかを考えてください。
「主体・対象・内容・正当化根拠」という4つの型が設問に埋め込まれています。これは法学部が求めている思考の形そのものです。進め方はグループディスカッションの対策にまとめています。
過去の課題が3年分公開されている
東大は、法学部・文学部・教養学部の過去の試験課題を3年分公開しています。「学校推薦型選抜 志願者数・合格者数・過去の試験課題」のページからPDFで見られます。
これは相当に恵まれた条件です。多くの大学は総合型・推薦の課題を公開しません。大学別対策の作り方で書いた「過去問から逆算する」が、そのまま実行できます。
ただし注意があります。課題文は著作権処理の都合で本文が削除されている部分があります。設問と出典は分かるので、出典の本を自分で読むという使い方をしてください。令和8年度でいえば、古田徹也『言葉の魂の哲学』と馬渕浩二『連帯論』です。
この2冊を読んで、設問に自分で答えを書いてみる。それが最も費用対効果の高い演習です。
提出書類——学部によって増える
全学部で共通して必要なのは、入学志願票・調査書・志願書(様式1)・推薦書(様式2)・学部が求める書類資料の一覧と本体です。
そのうえで、学部によって追加があります。要項の様式一覧によれば、
- 工学部……本人の能力をよく知る人物による推薦書(学校長以外)が1〜2通必須
- 理学部……志願者の活動実績をよく知る人物による推薦書が1〜2通必須(高校の内外を問わないが、2親等内の親族は除く。日本語または英語で作成)
学校長以外の推薦書というのは、探究活動や研究の指導を受けた大学の先生、コンテストの指導者、活動先の機関の担当者などを想定しているはずです。急には用意できません。工学部・理学部を考えているなら、書いてもらえる人がいるかどうかを早い段階で確認してください。
また、提出書類については要項がこう釘を刺しています。
提出書類・資料に不備がある場合は受理しません。 出願手続後は、いかなる理由があっても、提出書類・資料の変更は認めません。
書類の一貫性は、出したあとでは直せません。
入学後——後期課程は出願時の志望で決まる
見落とされがちですが、要項にはこう書かれています。
学校推薦型選抜による入学者が後期課程で進学する学部・学科等は出願時の志望により決定されます。ただし、前期課程の修了要件を満たす必要があります。
東大の一般入試で入った学生は、前期課程の成績によって後期課程の進学先を争います(進学選択)。推薦で入ると、そこが出願時に確定します。
これは有利にも不利にも働きます。行きたい学部が決まっているなら大きな利点ですが、入ってから決めたい人には向きません。推薦要件が「当該学部の学問分野に対する強い関心」を求めているのは、この制度と対になっています。
何から始めるか
順番があります。
- 担任・進路指導部に、校内の推薦枠の状況を聞く(同性・同学部志望の競合がいるか)
- 志望学部を1つに決める(複数学部への推薦は不可。試験形式も学部ごとに違う)
- その学部の推薦要件を要項の該当ページで読む(学部ごとの詳細が後半にまとまっている)
- 法・文・教養志望なら、過去3年分の課題を取り寄せて出典の本を読む
- 工・理志望なら、学校長以外の推薦書を書いてもらえる人を確保する
- 共通テストの勉強を止めない(8割が目安)
1と2が終わらないうちに書類を書き始めても、書き直しになります。
東大の学校推薦型選抜は、総合型選抜の全体像の中でも特殊な部類です。校内の推薦枠・専願・共通テスト8割・学部ごとに別物の試験という4つの条件が重なっているからです。逆に言えば、この4つを満たせる人にとっては、募集人員100人という枠が現実的な射程に入ります。