小論文の書き出し。序論で減点される3つの型と、1文目の作り方
書き出しが決まらず時間だけが過ぎる。その原因は「気の利いた導入」を探しているからです。序論に必要な要素は2つだけ。すぐ書ける1文目の型を示します。
試験会場で最も時間を溶かすのが、最初の1文です。
書けない原因ははっきりしています。「気の利いた導入」を探しているからです。小論文の序論に、気の利いた導入は要りません。必要な要素は2つだけです。
序論に必要なのは「問い」と「立場」だけ
- 問い:この答案は何について論じるのか
- 立場:自分はどちらの側に立つのか
この2つが1文目・2文目で示されていれば、序論として満点です。
医療現場への AI 導入は、医療者の役割を奪うのだろうか。私は、AI は診断の道具にとどまり、判断の責任は人間に残り続けると考える。
これで序論は終わりです。3文目からは理由の段落に入って構いません。
減点される書き出し3つ
1. 辞書的な定義から始める
高齢化社会とは、総人口に占める高齢者の割合が高い社会のことである。
読み手はその言葉を知っています。定義に字数を使っていいのは、あなたが言葉を独自の意味で使うときだけです。
2. 出題文の繰り返しから始める
「地域医療について論じなさい」という課題について、私の考えを述べる。
情報量がゼロの1文です。設問の宣言は不要で、いきなり中身から始めて構いません。
3. 壮大な一般論から始める
現代社会は大きな変化の時代を迎えている。
どのテーマにも使える文は、どのテーマでも意味を持ちません。他の設問に流用できる文が冒頭にあったら、それは削る合図です。
1文目の型は2つ覚えれば足りる
型A:問いかけ型
テーマを疑問文に変換して、そのまま1文目にします。
学校教育に競争は必要なのだろうか。
課題文型でもテーマ型でも使えます。2文目に自分の立場を置けば、序論が2文で完成します。
型B:対立提示型
課題文型で、筆者の主張に対して自分の位置を示す型です。
筆者は効率化を疑問視するが、私はこの主張に条件付きで賛成する。
「賛成/反対/条件付きで賛成」のどれかを2文目までに明示します。立場の表明が遅い答案は、採点者が最後まで宙づりのまま読むことになり、印象が大きく下がります。
出題形式別の書き出し
同じ「序論」でも、形式によって1文目に置くものが変わります。ここを間違えると、設問に答えていない答案になります。
課題文型|筆者の主張を受けてから立つ
自分の意見より先に、課題文の論点を一文で示します。
筆者は、効率を追う姿勢が学びの質を損なうと述べている。私はこの主張に、条件をつけて賛成する。
課題文に触れずに自説から始めると、課題文を読まなくても書ける答案になります。手順は課題文型小論文の解き方へ。
テーマ型|テーマを問いに変えてから立つ
与えられるのは一行だけなので、問いを自分で立てるところが序論の仕事です。
地域医療の不足は、医師の数を増やせば解決するのだろうか。私は、問題は数ではなく配置にあると考える。
テーマをそのまま繰り返すと1文が無駄になります。手順はテーマ型小論文の書き方へ。
資料型|資料から読み取れることを一文で
意見より先に、資料の要点を短く置きます。
資料1では一人暮らしの高齢者が増える一方、資料2では地域活動への参加率が下がっている。この二つが同時に進むとき、支援の網から外れる人は統計以上の速さで増えていると考えられる。
ここで長い説明を始めるのが典型的な失敗です。資料の説明は150字以内に抑えます(資料型小論文の書き方)。
場面設定型|結論から書かない
「あなたならどうするか」型では、いきなり対応を書かないでください。
この場面でまず必要なのは、家族に伝えたくない理由を本人から確かめることである。
確かめるべきことから始めるのが正解です。手順は「あなたならどうするか」の答え方へ。
「書き出しから書かない」という解決策
それでも1文目で止まる人には、実務的な解決策があります。序論を最後に書くことです。
構成メモの段階で本論の中身(理由・具体例)を固め、先に本論から書き始める。本論が書き上がってから、その内容に合わせて序論の2文を書く。この順番なら、序論と本論がずれる事故も同時に防げます。
原稿用紙に直接書く試験では、序論のスペースとして2〜3行だけ空けて本論から書き始めるのは危険なので、この方法は構成メモを固めてから一気に書くやり方とセットで使ってください。
字数別の序論の長さ
序論は短いほど安全です。目安は全体の1割から2割。
| 字数 | 序論の目安 | 文の数 |
|---|---|---|
| 400字 | 40〜60字 | 1〜2文 |
| 600字 | 60〜90字 | 2文 |
| 800字 | 80〜120字 | 2〜3文 |
| 1200字 | 120〜180字 | 3〜4文 |
400字なら1文で終わって構いません。「私は〜と考える。理由は〜だからだ」まで書いてしまい、そのまま本論に入る形でも成立します。
序論が指定字数の2割を超えたら、背景説明が入り込んでいないか疑ってください。
使ってよい書き出しの素材
型AとBで足りますが、もう一つ強い形があります。自分が見た場面から始める書き方です。
祖母は月に一度の通院のために、片道一時間かけて隣の市まで出ている。地域医療の不足は、医師の数の問題として語られることが多いが、実際に起きているのは移動の問題である。
具体的な場面から入り、2文目で論点に接続する。冒頭から他の受験生と違う答案になるので、読み手の集中を取れます。
ただし条件が2つあります。
- 3行以内で切り上げる——場面の描写が長いと作文になります
- 必ず2文目で論点に接続する——体験談だけで序論を終えない
体験を論拠に変える手順は小論文の具体例の作り方にまとめました。
「〜だろうか」を繰り返さない
型Aの問いかけは便利ですが、答案の中で2回以上使わないでください。
教育に競争は必要なのだろうか。……では、競争のない教育は可能なのだろうか。……本当にそれでよいのだろうか。
問いを重ねるほど、書き手が何を主張しているのかが薄くなります。問いは序論に1つ。あとは答えを書いてください。
序論と結論は対で確認する
書き終えたら、序論と結論だけを続けて読んでください。
- 立場が同じか
- 結論のほうが、条件や範囲の点で具体的になっているか
序論で「必要だ」と書き、結論で「難しい問題である」と締めている答案は珍しくありません。途中で立場が滑っています。
結論の型は小論文の結論の書き方へ。
実例:同じ設問で、書き出しだけ書き直す
設問「SNSは社会の分断を深めているという意見について、あなたの考えを述べなさい」(800字)で、序論だけを比べます。
減点される書き出し。
現代社会において、SNSは私たちの生活に欠かせないものとなっている。SNSには良い点も悪い点もあり、様々な議論がなされている。ここでは、SNSと社会の分断について考えていきたい。
3文で約80字使って、まだ何も始まっていません。1文目は誰もが知っている前置き、2文目は両論の逃げ、3文目は設問の言い換えです。採点者はこの時点で、続きの水準を予想します。
型Aで直すと、こうなります。
SNSは社会の分断を深めているのだろうか。私は、SNSが分断を「作った」のではなく、もともとあった分断を「見えるようにした」のだと考える。
2文・70字で、問いと立場が出ました。しかも「作った/見えるようにした」という区別を自分で持ち込んでいるので、本論で書くことの予告にもなっています。
課題文型なら、型Bでこうなります。
筆者は、SNSが人々を同質な集団に閉じ込めると指摘する。私はこの指摘を認めた上で、閉じ込められるかどうかは使い方の設計で変わると考える。
どちらの型も、やっていることは同じです。前置きを捨て、1〜2文目で立場まで到達する。序論の仕事はそれだけで、上手いことを言う場所ではありません。
まとめ
- 序論に必要なのは「問い」と「立場」の2つだけ。2文で終えてよい
- 定義・設問の繰り返し・壮大な一般論から始めない
- 型は2つ:問いかけ型と対立提示型
- 形式で1文目に置くものが変わる。課題文型は筆者の主張、テーマ型は問い、資料型は読み取り、場面設定型は確かめること
- 立場の表明は2文目まで。遅らせるほど印象が下がる
- 序論は全体の1〜2割。400字なら1文でよい
- 自分が見た場面から始める形は強い。ただし3行以内で論点に接続する
- 「〜だろうか」は答案に1回まで
- 書き終えたら、序論と結論だけを続けて読む
- 迷うなら、序論は構成メモを固めてから最後に考える
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。