筑波大学AC入試の対策。共通テストなし、自己推薦書は枚数自由
筑波大学のアドミッションセンター入試(AC入試)を募集要項に沿って整理しました。共通テストが不要であること、「二年間以上の継続」という評価軸、様式・枚数自由の自己推薦書、30分の口述試験までを解説します。
筑波大学のアドミッションセンター入試(AC入試)は、日本の総合型選抜の原型のひとつです。
そして、いまでもかなり特異な入試です。共通テストが要らず、自己推薦書には字数も枚数も指定がなく、合格者が募集人員に満たないこともある。受験生の側が「何を出すか」を設計する入試だと考えてください。
この記事は、公開されている募集要項の記載をもとに構造を整理したものです。
必ず最新の募集要項で確認してください。日程・募集学類・出願資格は年度によって変わります。この記事は考え方を示すもので、要項の代わりにはなりません。 出典:筑波大学入試情報サイト/アドミッションセンター入試 学生募集要項(PDF)
最初に押さえる3つの事実
1. 共通テストは要らない
要項の出願資格の欄に、はっきり書かれています。
※ 大学入学共通テストの受験は必要としません。
国公立大学の総合型選抜では、最終選考で共通テストを課すものが多数派です。AC入試はそこから外れています。書類と面接・口述試験だけで合否が決まります。
ただしこれは「教科の勉強をしなくていい」という意味ではありません。後述するとおり、口述試験で学習適応性が問われます。
2. 評価されるのは「二年間以上の継続」
AC入試全般のアドミッション・ポリシーに、この入試の設計思想が集約されています。
志願者の主体的で継続的な取り組み(最近二年間,又はそれ以上の長期にわたるもの)から「問題解決能力」を評価します。
期間が明示されている入試は珍しい。これは「高3の夏に何かを始めて出願する」ことを想定していない、という宣言です。
裏を返せば、高1から続けてきたことがある人にとっては、これ以上ないほど有利な入試です。結果の大きさではなく、続けてきたこと自体が評価軸に組み込まれています。
要項は問題解決能力をこう定義しています。
問題意識を持って,自ら学び,自ら考え,よりよく問題を解決する資質や能力
探究活動の完全ガイドで書いた7段階が、そのまま評価対象になると考えてください。
3. 定員を埋めない場合がある
要項の募集人員の欄に、注記があります。
この入試の合格者にふさわしい志願者がいないと判断した場合は,募集人員どおりに合格者を決定することはせずに,個別学力検査等の募集人員によって,その人員を充足します。
倍率が低ければ通る、という入試ではありません。基準を満たさなければ、枠が余っても合格者を出さない設計です。
なお、国公立の総合型・推薦は1つの大学・学部にしか出せません。東大の学校推薦型選抜は「他の国公立大学の総合型選抜に出願した者は出願できない」と明記しているので、AC入試と併願する余地はありません。どれか1つに絞る必要があります。
募集学類——8つに限られる
AC入試を実施しているのは、全学類ではありません。記事執筆時点の要項では次のとおりです。
| 学群 | 学類 | 募集人員 |
|---|---|---|
| 人文・文化学群 | 人文学類 | 5 |
| 人文・文化学群 | 比較文化学類 | 5 |
| 人文・文化学群 | 日本語・日本文化学類 | 3 |
| 生命環境学群 | 生物学類 | 3 |
| 情報学群 | 情報科学類 | 8 |
| 情報学群 | 情報メディア創成学類 | 5 |
| 情報学群 | 知識情報・図書館学類 | 5 |
| 体育専門学群 | — | 8 |
学類ごとにアドミッション・ポリシーが別に定められており、求めているものが違います。要項の文言を読み比べると、方向がはっきり分かれます。
- 比較文化学類——「特定の専門分野について具体的で個性的なテーマを設定し,そのアプローチと内容に関して独自の研究成果を挙げている者」
- 生物学類——自ら設定したテーマの研究結果を「科学的及び論理的にレポートにまとめ,それを具体的に発表する能力」
- 情報科学類——「自ら研究課題と明確な目標を設定して問題の分析や解決を創造的に図る意欲と能力」と「その過程と結果を論理的に説明できる」こと
- 知識情報・図書館学類——課題の分析結果を論理的に説明することに加え、「説得力のある提案ができること」
- 体育専門学群——科学的知識の活用と論理的思考力、および「ひとつの運動種目における特に優れた技能や卓越した取り組み」
自分の活動が、どの学類のポリシーの言葉に一番近いか。ここから逆算して出願先を決めるのが正攻法です。
自己推薦書——様式・枚数が自由
この入試の核心です。要項の指定を正確に読んでください。
自己推薦書は3つの部分からなります。
| 部分 | 様式 |
|---|---|
| 表紙 | 所定様式(ダウンロード) |
| 活動経過報告書 | 所定様式(ダウンロード) |
| 本文+添付資料 | 様式・枚数自由。根拠となる資料を添付 |
本文は様式・枚数自由で,その根拠となる資料を添付してください。
字数制限も、枚数制限も、書式指定もありません。これは他の入試ではまず見ない指定です。早稲田の地域探究・貢献入試が「所定用紙4枚以内・11ポイント以上」と細かく縛るのとは対照的です。
自由であることの意味
自由なので、何を出すかの判断そのものが評価されると考えてください。
- 研究をしてきた人は、論文の形式で出せる
- ものを作ってきた人は、設計図や写真、制作過程の記録を軸にできる
- 調査をしてきた人は、データと分析を中心に構成できる
分野に合った形式を選べるということです。逆に言えば、形式の選択を間違えると、それ自体が減点方向に働きます。
自由だからこそ、絞る
枚数無制限だからといって、分厚くすれば良いわけではありません。読み手は、あなたの分野の専門家です。冗長な記述は、そのまま「整理できていない」という評価になります。
構成の考え方は、探究のまとめレポートの型が土台になります。
- 問い——何を明らかにしようとしたか
- 背景——なぜそれが問題だと考えたか
- 方法——どうやって取り組んだか。ここを具体的に
- 結果——何が分かったか。数字や記録で
- 考察——結果をどう解釈したか
- 残った問い——何が分からなかったか
6の「残った問い」を必ず書いてください。すべて解決した話は、大学に行く理由になりません。この考え方は探究を志望理由書につなげる方法と同じです。
そして添付資料は「根拠」です。主張を裏づけるものだけを、対応が分かる形で付けてください。作品集ではありません。
提出後の差し替えはできない
要項に明記されています。
提出後の本文,活動経過報告書及び添付資料の差し替えや追加はできません。活動経過報告書に誤りがあった場合は,選考上不利になる場合がありますので,正しい情報を記入してください。
出したら終わりです。活動経過報告書は事実の記録なので、日付や期間を必ず確認してから出してください。
志願理由書は800字以内
自己推薦書とは別に、志願理由書を提出します。
志願する理由を800字以内にまとめて記入してください。作成にあたり,手書き,PC等の方法は問いません。
手書きでもPCでも構いません。この点は要項が明示しています。
自己推薦書が「これまで何をしてきたか」なら、志願理由書は「なぜ筑波大学のこの学類なのか」です。役割を分けてください。自己推薦書に書いた活動を要約し直すだけでは、800字が無駄になります。
書き方は志望理由書の完全ガイドと800字の構成を土台に、学類のアドミッション・ポリシーの言葉と、自分の活動を接続するという方針で組んでください。
なお、1次選考について要項はこう書いています。
出願時に提出された書類等により,第1次選考合格者を決定します。特に自己推薦書(本文,活動経過報告書及びその根拠となる添付資料),志願理由書を重視します。
調査書も出しますが、重視されるのはこの2つだと明示されています。評定平均の基準は要項に定められていません。
2次選考——30分の面接・口述試験
要項の記載はこうです。
面接・口述試験では,主に,出願時に提出された自己推薦書等の内容及び志願する学群・学類に必要な学習適応性(学習能力,知識,意欲等)について,個別に30分程度行います。なお,必要に応じ試験時間を延長する場合があります。
問われるのは2つです。
1. 自己推薦書の中身
30分は長い。用意した説明を話し終えたあとの時間が長いということです。聞かれるのは、ほぼ次の4方向です。
- その方法を選んだのはなぜか(方法)
- その言葉をどういう意味で使っているのか(定義)
- 別の解釈もできるのではないか(解釈)
- これからどうするのか(発展)
この4分類は探究発表の質疑と同じ構造です。自己推薦書のコピーを手元に置き、1行ずつ質問を作るのが最も効率的な準備です。答えられない質問には「そこまでは調べられていません。調べるとすれば〜」の型で返してください。
2. 学習適応性
こちらを見落とす人が多い。要項は「志願する学群・学類に必要な学習能力,知識,意欲」と書いています。
これは口述試問です。志望動機を語る場ではなく、その分野を大学で学べるかを確かめる場です。生物学類なら生物学の、情報科学類なら情報や数学の基礎について問われうるということです。
準備の方向は口頭試問の対策にまとめています。詰まったときの型(問いを言い換えて確認→視点を分ける→条件つきで着地)が、そのまま使えます。沈黙を恐れず、考えてから話し始めるほうが評価されます。
分野の背景知識は、学部系統別の小論文対策から志望学類に近い系統へ進んでください。
試験日は学類ごとに違う
要項によれば、2次選考の実施日は学群・学類ごとに別々に設定されています(10月上旬〜中旬に分散)。1つの学類にしか出願できないので、日程で迷うことはありませんが、面接の頻出10問を土台にした準備期間の逆算には必要な情報です。
なお、社会状況等によりオンラインで実施することがある旨も要項に記載されています。
併願と入学手続——国公立特有のルール
ここは進路設計に直結します。要項の記載を正確に押さえてください。
体育専門学群だけは入学確約
アドミッションセンター入試における体育専門学群への出願者は,本学体育専門学群での学びを強く志願し,合格した場合には入学することを確約できる者とします。
体育専門学群は専願です。他の7学類には、この記載がありません。
学内で併願できない入試がある
要項によれば、国際科学オリンピック特別入試、国際バカロレア特別入試、海外教育プログラム特別入試、研究型人材入試との併願はできません。また、AC入試の合格者は本学の推薦入試の合格者とはなりません。
入学手続を完了すると、国公立の一般選抜が閉じる
これが最も重要です。
アドミッションセンター入試で合格し,入学手続を完了した者は,本学及び他の国公立大学の個別学力検査等の合格者とはなりません。
入学手続は12月上旬です。つまり、手続をした時点で、国公立大学の前期・後期日程は選択肢から消えます。
逆に言えば、最終合格発表(11月上旬)から入学手続まで、判断する時間があります。私立大学との併願は妨げられませんし、手続前であれば進路を選び直せます。ここは早稲田・慶應の専願型入試との大きな違いです(総合型選抜と一般入試の両立)。
ただし、教科の勉強は止めないでください。不合格だった場合、共通テストまで2か月半です。
不合格でも成績が開示される
要項には情報開示の規定があります。
受験者本人に対し,成績を点数で表している場合は,合格者にあっては総合点を,不合格者にあっては総合点及び不合格者の成績を3段階に区分し,該当する段階を開示します。
不合格でも、自分がどのあたりだったかが分かります。再受験や他大学の総合型選抜を考える人にとって、これは貴重な情報です。請求すれば郵送で開示されます。
準備の順番
| 時期 | やること |
|---|---|
| 高1〜高2 | 活動を始めて、続ける。要項が求めるのは「最近二年間,又はそれ以上」 |
| 継続中 | 記録を残す。日付、やったこと、データ、写真。あとから作れない |
| 高2〜高3春 | 志望学類を決める。アドミッション・ポリシーの言葉と自分の活動を照合 |
| 高3 5〜7月 | 自己推薦書の構成を決める。形式(論文型か記録型か)を選ぶ |
| 高3 7〜8月 | 自己推薦書を書く。枚数自由なので、削る作業に時間をかける |
| 高3 8月 | 志願理由書800字。調査書を先生に依頼 |
| 高3 8〜9月 | 出願登録→書類郵送。書類は必ずコピーを取る(差し替え不可) |
| 高3 9〜10月 | 自己推薦書から想定質問を作る。学類の分野の基礎を復習 |
| 10月 | 2次選考(面接・口述試験30分) |
記録を残すことが、この入試の実務上いちばん重要な作業です。二年間の取り組みを、出願の3か月前から思い出して書くのは無理があります。
出願実務の落とし穴は出願直前チェック17項目、要項の読み方は募集要項の読み方にまとめています。同じ国公立の総合型選抜として、横浜市立大学の総合型選抜も比較してみてください。設計思想は近いのに、書類の指定は正反対です。
まとめ
- 共通テストは不要と要項に明記されている
- 評価軸は「最近二年間,又はそれ以上の主体的で継続的な取り組み」からの問題解決能力
- 実施は8つの学類のみ。学類ごとにアドミッション・ポリシーが違う
- 自己推薦書の本文は様式・枚数自由。何を出すかの判断が評価される
- 提出後の差し替え・追加はできない
- 志願理由書は800字以内。手書きでもPCでも可
- 2次は30分の面接・口述試験。自己推薦書の中身と、学類の学習適応性の両方が問われる
- 体育専門学群のみ入学確約。他の学類は手続前なら選び直せる
- 入学手続を完了すると、国公立の一般選抜が閉じる
- 合格者が募集人員に満たないこともある。基準に届かなければ通らない
- 不合格でも総合点と3段階の区分が開示される
- 日程・募集学類は必ず最新の募集要項で確認する
同じ北関東の国立大学では茨城大学、宇都宮大学、群馬大学も扱っています。3校とも共通テストを課さない枠が中心で、AC入試より枠が大きい学部もあります。