東京農工大学 総合型選抜の対策。実験を見てから100分でレポートを書くゼミナール入試と、共通テストのないSAIL入試
東京農工大学の総合型選抜(農学部のゼミナール入試・工学部のSAIL入試)を、令和9年度の学生募集要項に沿って整理しました。実験の見学からレポートを書く二次選考、共通テストの平均点1.2倍という明示された合格基準、SAIL入試の特別活動レポートとプレゼンまでを解説します。
東京農工大学の総合型選抜は、2つしかありません。しかも中身が正反対です。
ゼミナール入試(農学部 環境資源科学科・3人)は、実験を含むゼミナールを約60分見学し、そのあと100分でレポートを書きます。共通テストも必要です。
SAIL入試(工学部5学科・30人)は、共通テストも個別の学力試験も免除。出すのは志望理由書と「特別活動レポート」で、当日はそのプレゼンと質疑応答です。
パンフレットの見出しがそのまま実情を表しています。「農工大の総合型選抜はちょっと違います。」
この記事は、公開されている令和9年度(2027年度)総合型選抜学生募集要項の記載をもとに構造を整理したものです。
必ず最新の募集要項で確認してください。要項自体に「本要項の公開後であっても、選抜方法や日程等に変更が生じる可能性があります」と明記されています。この記事は考え方を示すもので、要項の代わりにはなりません。 出典:東京農工大学 選抜の種類と募集要項/令和9(2027)年度 総合型選抜学生募集要項(PDF)/2027年度 工学部SAIL入試案内(PDF)/2027年度 農学部環境資源科学科ゼミナール入試案内(PDF)
2つを並べる
| ゼミナール入試 | SAIL入試 | |
|---|---|---|
| 学部・学科 | 農学部 環境資源科学科 | 工学部 5学科 |
| 募集人員 | 3人 | 合計30人 |
| 共通テスト | 課す(3教科5科目・600点) | 課さない |
| 出願期間 | 2026年10月2日(金)〜10月8日(木) | 2026年9月1日(火)〜9月7日(月) |
| 第一次選考 | 書類選考(11月6日 結果通知) | 書類選考(9月15日 結果通知) |
| 第二次選考 | 2026年11月28日(土) ゼミナールと面接 | 2026年9月25日(金) |
| 合格発表 | 最終選考:2027年2月10日(水) | 第二次選考:2026年11月2日(月) |
SAIL入試は出願が9月1日から。しかも共通テストが要らないので、11月2日に決着します。総合型選抜としては最速の部類です。
SAIL入試(工学部)——共通テストも個別試験もない
募集人員
| 学科 | 募集人員 |
|---|---|
| 生命工学科 | 7人 |
| 生体医用システム工学科 | 6人 |
| 化学物理工学科 | 5人 |
| 機械システム工学科 | 5人 |
| 知能情報システム工学科 | 7人 |
| 合計 | 30人 |
SAILとは何か
大学の説明を引きます。
本学では、理数系が得意で、課題を解決する資質をもっている意欲的な学生を、すぐれた研究者・職業人へと導くための教育プログラム「SAILプログラム」を独自に開発し、施行しています。
SAILは4つの能力の頭文字です。
| 能力 | |
|---|---|
| S | Study(学習力) |
| A | Analysis(分析力) |
| I | Innovative Design(企画設計力) |
| L | Logical Presentation(論理的発信力) |
SAILプログラムは、潜在能力の高い理数系志望の高校生に対して、「既成の枠にとどまらず、多分野を統合発展させ、新しい分野を開拓する能力」を養成するために実施されるものです。
そして選抜の趣旨です。
SAIL入試では、上記の分野に関して主体的に活動を行った者を対象とし、大学入学共通テストおよび教科・科目に係る個別テストを免除し、活動成果のレポートや面接などの成績、さらに調査書等の内容を主な資料として総合的に評価します。
「主体的に活動を行った者」が前提です。理数の学力ではなく、やってきたことで選ぶ入試です。
提出するのは「特別活動レポート」
第一次選考は書類選考で、提出物は3点。
| 書類 | 学科ごとの指定 |
|---|---|
| 志望理由書 | — |
| 特別活動レポート | 生命工学科:自然科学に関するもの/生体医用システム工学科:科学やものづくりに関するもの/化学物理工学科:自然科学に関するもの/機械システム工学科:工学、もしくは自然科学に関するもの/知能情報システム工学科:情報工学や電気電子工学に関するもの |
| 調査書 | — |
学科ごとに「何に関するレポートか」が指定されています。高校の探究、科学部の活動、自由研究、コンテスト出品——分野が合っていることが第一条件です(探究活動 完全ガイド、事前提出レポートの書き方)。
選考基準が、学科ごとに3項目ずつ公開されている
これはSAIL入試のいちばん有用な情報です。パンフレットに全学科分が載っています。
生命工学科
① ライフサイエンスとその応用への興味・好奇心を有するか ② 実験結果や客観的事実をもとに、論理的な筋道により結論を導くことができるか ③ 質疑応答において、質問を正しく理解し、自分の考えをわかりやすく伝えることができるか
生体医用システム工学科
① 受験者の科学やものづくり、およびその生体医用応用への興味・好奇心がうかがえるか ② 結果から結論に至る筋道を論理的に組み立てることができるか ③ 質疑応答において、質問を正しく理解し、自分の考えをわかりやすく伝えることができるか
化学物理工学科
① 受験者の自然や技術への科学的な興味・好奇心がうかがえるか ② 結果から結論に至る筋道を論理的、数理的に組み立てることができるか ③ 自分の考えが正しく伝わるように自分の言葉でわかりやすく説明できるか
機械システム工学科
① 受験者の機械システム工学、あるいは自然科学への興味・好奇心がうかがえるか ② 数学及び物理の理解に基づき問題解決に至る道筋を示すことができるか(数学、物理の基礎的な学力を有しているか) ③ 自分の考えを論理的に、筋道をたててわかりやすく説明できるか
知能情報システム工学科
① 課題を体系的に捉え、システムを設計し実装する能力を身につけているか ② 物事を論理立てて思考し、問題解決に至る道筋を示すことができるか ③ 自分の考えを論理的に説明することができるか
5学科すべてで、①興味・好奇心/②論理の筋道/③説明する力の3点セットです。そして②と③が2つとも「筋道」と「説明」であることに注目してください。
結果そのものではなく、結果に至る過程を説明できるかが問われています。実験がうまくいったかどうかではなく、なぜその手順を選び、なぜその結論になったかを語れるかどうかです。
第二次選考はプレゼンテーションと質疑応答
| 学科 | 第二次選考の内容 |
|---|---|
| 生命工学科 | 特別活動レポートに関するプレゼンテーション+質疑応答を含む面接。理科に関する基礎学力と論理的な思考力、潜在的な能力を評価 |
| 生体医用システム工学科 | 同上+物理(物理基礎を含む)および数学に関する基礎学力 |
| 化学物理工学科 | プレゼンテーション10分+質疑応答20分を含む面接 |
| 機械システム工学科 | プレゼン+質疑応答を含む面接、および数学と物理に関する試問 |
| 知能情報システム工学科 | プレゼン+質疑応答、数学に関する基礎能力の確認を含む面接 |
共通テストがないかわりに、面接の中で数学・物理・理科が問われます。機械システム工学科は「試問」と明記。知能情報も「数学に関する基礎能力の確認」です。
化学物理工学科の「プレゼン10分+質疑20分」は、質疑のほうが2倍長い。発表より、突っ込まれてからが本番です(口頭試問の対策、プレゼン型入試の対策)。
入学前教育がある
要項には、こんな記載もあります。
最終選考合格者は入学前教育を受けていただくこととなります。なお、令和8年11月8日(日)にオンラインにて入学前オリエンテーションの実施を予定しています。
11月2日に合格が出て、11月8日にはもう入学前教育が始まります。年内で終わる入試ですが、そこからが早い。
なお大学はSAIL入試受験に関するQ&Aも公開しています(https://www.tuat.ac.jp/admission/nyushi_gakubu/faq/jyuken_sail/)。出願前に一読しておく価値があります。
ゼミナール入試(農学部 環境資源科学科)——実験を見て、100分で書く
趣旨
農学部環境資源科学科では講義と実験の体験を通じて、一般選抜では評価することが難しい専門分野への適性、意欲、目的意識、コミュニケーション能力、基礎学力などを総合的に判定する総合型選抜のゼミナール入試を実施します。
募集人員は3人。狭き門ですが、設計が独特です。
出願要件
(1)学習成績が優秀な者 学校長から高い評価を得ている者(志願者評価書により確認します) (2)環境資源科学科における勉学を強く志望し、第一志望とする者 (3)最終合格した場合は、必ず入学することを確約できる者 (4)第二次選考合格者は、令和9年度大学入学共通テストにおいて指定する3教科5科目を必ず受験すること
評定の数値基準はありませんが、「学習成績が優秀」かつ「学校長から高い評価」が要件で、志願者評価書という書類で確認されます。
出願書類は志望理由書・活動報告書・出身学校調査書、それに志願者評価書(参考資料)です。
第二次選考が、この入試の核心
要項の記述をそのまま引きます。
第一次選考合格者のみに実施します。環境資源科学に関する実験を含むゼミナール(約60分)を見学し、その後レポート(100分)に基づいて、実験に対する基礎学力および探究能力を評価します。さらに、面接(志望動機等を試問)を実施し、ゼミナール課題レポートと併せて、総合的に評価します。
流れはこうです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ① | ゼミナール(実験を含む)を約60分見学 |
| ② | レポートを100分で書く |
| ③ | 面接(志望動機等を試問) |
その場で見たものについて、その場で100分書きます。事前に準備した内容を書く入試ではありません。
近い形式は他大学にもあります。工学院大学の実験レポート型、埼玉大学理学部の講義+小テスト、神戸大学「志」特別選抜の模擬講義レポート、広島大学 光り輝き入試、南山大学の講義型150分が同じ系統です。
「見学してレポート」を、どう準備するか
この形式で書けない人には共通点があります。見ながらメモを取っていないことです。
準備は3つ。
① メモの型を決めておく
実験を見るときに拾うべきものは決まっています。
| 拾うもの | 例 |
|---|---|
| 目的 | 何を確かめようとしているのか |
| 方法 | どんな手順で、何を測っているのか |
| 条件 | 何を変え、何をそろえているのか(対照実験) |
| 結果 | 何が起きたか(数値・変化・観察事実) |
| 疑問 | なぜこの手順なのか/別の方法はないか |
この5項目で紙を区切ってから見るだけで、100分の書き出しが変わります(構成メモの作り方)。
② 「結果」と「解釈」を分けて書く練習をする
評価されるのは「実験に対する基礎学力および探究能力」です。観察した事実と、そこから自分が導いた解釈を、別の段落にする。これだけで探究の作法を示せます(探究の調べ方)。
③ 高校の実験を、毎回レポートにしておく
いちばん効くのはこれです。生物・化学の実験のたびに、上の5項目でメモを取り、家で30分のレポートにする。3年生の秋までに10回やっておけば、本番の100分は長く感じます。
最終選考の基準が、数字で明示されている
ここが東京農工大学のいちばん珍しい点です。
令和9年度大学入学共通テストにおいて、受験を課す教科・科目の合計得点が、大学入試センターが発表する該当教科・科目の平均点の合計の1.2倍以上である受験生を最終選考合格者とします。
「平均点の1.2倍以上」という基準が公開されています。順位ではなく、絶対基準です。
課される共通テストはこうです。
| 教科 | 科目 | 配点 |
|---|---|---|
| 数学 | 『数学Ⅰ,数学A』1科目 | 100 |
| 『数学Ⅱ,数学B,数学C』1科目 | 100 | |
| 理科 | 『物理』『化学』『生物』『地学』から2科目 | 200 |
| 外国語 | 『英語(リスニングを含む)』 | 200(リーディング130点・リスニング70点) |
| 計 | 600点(3教科5科目) |
平均点の計算方法まで書かれています。
(注1)理科(配点200点)の平均点は、物理、化学、生物、地学のそれぞれの平均点を合計した値を0.5倍したものとします。 (注2)外国語(英語、配点200点)の平均点は、リーディングの平均点の1.3倍とリスニングの平均点の0.7倍を合計した値とします。
共通テストの過年度利用は行いません。また成績請求はチケット方式(志願者が成績請求チケットを取得して提出)です。学校推薦型選抜や一般選抜のWeb方式とは違うので、混同しないでください。
どちらを受けるか
| こういう人 | 向いている入試 |
|---|---|
| 理数系の活動実績がある。共通テストの準備が間に合わない | SAIL入試(工学部) |
| 環境・資源に関心がある。実験や観察が好きで、共通テストも取れる | ゼミナール入試(農学部) |
SAIL入試は9月1日出願・11月2日合格発表。共通テストが要りません。ただし「主体的に活動を行った者」が対象で、レポートに書く中身がないと成立しません。
ゼミナール入試は共通テストで平均点の1.2倍が必要です。年内入試ですが、2月10日まで結果が出ません。3教科5科目の準備は必須です。
なお東京農工大学には学校推薦型選抜(農学部・工学部・産業動物獣医師養成枠)もあります。こちらは共通テストの成績請求がWeb方式です。獣医系の年内入試は獣医学部の総合型選抜・学校推薦型対策にまとめています。
まとめ
- 東京農工大学の総合型選抜は2つだけ。ゼミナール入試(農学部・3人)とSAIL入試(工学部・30人)
- SAIL入試は共通テストも個別の学力試験も免除。出願9月1日〜7日、第二次選考9月25日、合格発表11月2日で決着
- SAIL入試の提出物は志望理由書・特別活動レポート・調査書。レポートの分野が学科ごとに指定されている
- SAIL入試の選考基準が学科ごとに3項目ずつ公開。5学科すべてで「①興味・好奇心 ②論理の筋道 ③説明する力」
- 共通テストがないかわりに、面接で数学・物理・理科が問われる。機械システム工学科は「試問」、知能情報は「数学に関する基礎能力の確認」と明記
- 化学物理工学科はプレゼン10分+質疑20分。質疑のほうが2倍長い
- ゼミナール入試は、実験を含むゼミナールを約60分見学し、その後100分でレポートを書く。事前準備した内容を書く入試ではない
- ゼミナール入試の出願要件は「学習成績が優秀」かつ「学校長から高い評価」で、志願者評価書で確認される
- 最終選考の基準が「共通テストの平均点の合計の1.2倍以上」と数字で公開されている(3教科5科目600点)
- SAIL入試の合格者は11月8日にオンラインの入学前オリエンテーションがある
小論文そのものの書き方は小論文の書き方 完全ガイドに、総合型全体の進め方は総合型選抜 完全ガイドにまとめています。
理系のテーマは情報・理工系学部の小論文と農学部の小論文に、首都圏の国立は横浜国立大学 総合型選抜・東京学芸大学 総合型選抜・千葉大学 総合型選抜・埼玉大学 総合型選抜にあります。