小論文の反論への応答。「たしかに〜しかし」を形だけで終わらせない
反論処理は答案の水準を最も変える段落です。しかし1文で流す答案が大半。反論を強く書くほど自分の主張が強くなる理由と、譲歩・限定・再主張という書き方の型を具体例つきで解説します。
答案の水準を最も大きく変えるのが、反論への応答です。
そして最も雑に扱われる段落でもあります。
たしかに費用の問題はある。しかし工夫すれば解決できるだろう。
これでは反論した意味がありません。反論を1文で紹介し、1文で退ける。形だけ整えて中身がない——採点者が最も見慣れた型です。
なぜ反論を書くと評価が上がるのか
理由は2つあります。
1つ目:両面から考えた証拠になる。 自分の立場だけを述べた答案は、他の可能性を検討したのかが分かりません。反論を書ける人は、少なくとも2つの立場を理解しています。
2つ目:主張が相対的に強くなる。 反論を乗り越えた主張は、乗り越えていない主張より強い。反論を強く書くほど、それを越えた自分の主張も強く見えるという構造があります。
だから、反論を弱く書くのは自分の首を絞める行為です。
反論の見つけ方3つ
1. 自分の主張のコストを考える
どんな主張にも代償があります。
主張:地域医療の維持には行政の支援が必要だ コスト:財源はどこから来るのか。他の予算を削るのか
「それをやると何を失うか」を問えば、必ず反論が出てきます。
2. 例外的な場面を探す
主張:患者の自己決定を尊重すべきだ 例外:判断能力が不十分な場合はどうするのか
主張が成り立たない場面を自分で挙げると、そこが反論になります。
3. 立場を入れ替えて読む
自分の主張を、反対の立場の人が読んだらどこに引っかかるか。その人が最初に言いそうな一言が反論です。
書き方の型
反論処理の段落は、3つの部品でできています。
| 部品 | 内容 | 字数目安(800字中) |
|---|---|---|
| 譲歩 | 反論を誠実に紹介する | 50〜70字 |
| 限定 | その反論が成り立つ範囲を絞る | 40〜60字 |
| 再主張 | それでも自分の立場が成り立つ理由 | 40〜60字 |
悪い例
たしかに費用がかかる。しかし工夫すればよい。
譲歩13字、再主張11字。どちらも中身がありません。
良い例
たしかに、行政支援には財源の問題がある。人口減少が続く自治体では、医療への支出を増やせば他の行政サービスを削らざるをえない。(譲歩) ただし、この問題は「支援するかどうか」ではなく「どの段階で支援するか」の問題である。(限定) 医療機関が撤退してから住民を移住させる費用と、撤退前に維持する費用を比べれば、後者が安く済む場合がある。(再主張)
譲歩の部分が具体的なぶん、それを乗り越えた再主張が効いています。
3つの応答パターン
反論への切り返しには、使える型が3つあります。
パターン1:範囲を限定する
反論が成り立つ場面を認めた上で、自分の主張が当てはまる範囲を絞ります。
たしかにAは正しい。ただしそれは〜という条件下での話であり、本稿が扱う場面では当てはまらない。
最も安全で、最も使いやすい型です。迷ったらこれを使ってください。
パターン2:優先順位を示す
両方の価値を認めた上で、どちらを先に置くかを述べます。
どちらの懸念も正当である。だが、失われたときに取り返しがつかないのは前者である。
パターン3:前提を問い直す
反論が置いている前提そのものを検討します。上級者向けですが、決まると強い型です。
この批判は「効率と質は両立しない」という前提に立っている。しかしその前提自体が検証されていない。
やってはいけない反論処理
反論を弱く作る
自分が倒しやすい弱い反論を立てて倒すのは、わら人形論法と呼ばれます。読み手には見抜かれ、かえって印象を下げます。反論は、相手が本当に言いそうなことを書きます。
反論を書いて終わる
譲歩だけ書いて応答がないと、自分の主張を否定して終わることになります。「たしかに」を書いたら、必ず「しかし」まで書ききる。
「一概には言えない」で締める
両論を並べて中立に着地する答案は、立場を示していないのと同じです。小論文は、どちらかに立った上でもう一方に配慮する文章です。
まとめ
- 反論を強く書くほど、乗り越えた主張も強くなる
- 反論の見つけ方:自分の主張のコスト/例外的場面/立場の入れ替え
- 段落は譲歩・限定・再主張の3部品。譲歩を厚く書く
- 応答の型は3つ。迷ったら「範囲の限定」
- 弱い反論を立てない。書いたら必ず応答まで書ききる
- 「一概には言えない」は立場を示していない
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。