東北工業大学の総合型選抜。15分の模擬講義を受けてから論述を書く
東北工業大学のAOVA選抜(1期)は、15分の模擬講義を受けてからキーワードの要約と課題への論述を書く「論述試験(模擬講義)」。2期は小論文(60分・600字以内)で、大テーマが課程・学科ごとに公開されています。
東北工業大学(宮城県仙台市)の総合型選抜には、ほかの大学ではあまり見ない試験があります。その場で15分の模擬講義を受けて、そこから書くという形式です。
15分程度の志望課程・学科の模擬講義を受講し、講義中で用いられるキーワードの説明の要約と、講義の中で示される課題について論述します(100字程度)。模擬講義の受講も含め、試験時間は60分です。
つまり、事前に用意した知識で書く試験ではありません。当日その場で聞いた内容を、その場で書きます。
この記事は、東北工業大学が公開している2027年度の学生募集要項をもとにまとめました。
出典:東北工業大学「2027年度 AOVA選抜(1期)学生募集要項」「2027年度 AOVA女子特別選抜 学生募集要項」「2027年度 AOVA選抜(2期)学生募集要項」、および「【参考】2026年度AOVA選抜 論述試験 模擬講義テーマ一覧」(いずれも2026年9月22日に確認)
総合型選抜は3本立て
東北工業大学の総合型選抜は、AOVA選抜(1期)・AOVA女子特別選抜・AOVA選抜(2期)の3つです。AOVAは Activity(行動力)、Originality(独創性)、Vitality(活力)、Ability(才能)の頭文字で、大学所在地の杜の都仙台をイメージした名称だと要項に書かれています。
| 選抜 | 筆記試験 | 募集人員 | 出願期間 | 試験日 |
|---|---|---|---|---|
| AOVA選抜(1期) | 論述試験(模擬講義) | 154名 | 2026年9月14日〜9月30日必着 | 2026年10月14日(水) |
| AOVA女子特別選抜 | 論述試験(模擬講義) | 13名(工学部のみ) | 2026年9月14日〜9月30日必着 | 2026年10月14日(水) |
| AOVA選抜(2期) | 小論文 | 28名 | 2026年11月30日〜12月9日必着 | 2026年12月18日(金) |
1期と2期で筆記試験の中身が違うのが、この大学のいちばん大きな特徴です。1期は模擬講義を聞いて書く論述試験、2期は小論文です。
合格者発表は1期と女子特別選抜が2026年11月2日(月)15時予定、2期が2026年12月25日(金)15時予定。いずれも受験ポータルサイト「UCARO」で開示され、電話での問い合わせには応じないと明記されています。検定料は30,000円、試験場は仙台の八木山キャンパスです。
出願のハードルは低めに設定されています。
高等学校長の推薦書は不要で、他大学との併願も可能であり、現役生だけでなく既卒者も受験できます。
募集人員は入学定員の2割
入学定員760名に対して、AOVA選抜(1期)だけで154名。総合型選抜全体では195名が募集されます。
| 学部・課程・学科 | 入学定員 | 1期 | 女子特別 | 2期 |
|---|---|---|---|---|
| 電気電子工学課程 | 120 | 22 | 4 | 4 |
| 情報通信工学課程 | 120 | 22 | 4 | 4 |
| 都市工学課程 | 75 | 16 | 3 | 3 |
| 環境応用化学課程 | 50 | 11 | 2 | 2 |
| 建築学科 | 140 | 26 | − | 5 |
| 産業デザイン学科 | 80 | 18 | − | 3 |
| 生活デザイン学科 | 80 | 18 | − | 3 |
| 経営デザイン学科 | 95 | 21 | − | 4 |
| 合計 | 760 | 154 | 13 | 28 |
工学部は4課程、建築学部は建築学科、ライフデザイン学部は3学科という構成です。女子特別選抜は工学部の4課程だけが対象になります。
「活動記録重視型」「探究活動重視型」「総合評価型」から選ぶ
AOVA選抜(1期・2期とも)には、3つの選抜方法があります。
「活動記録重視型」、「探究活動重視型」、「総合評価型」の3つの選抜方法があります。出願資格は同じですが、出願時に選抜方法を選択しなければなりません。
ここで大事なのは、配点は3方式とも同じだということです。書類審査30点+筆記40点+面接30点=100点満点。違うのは、書類審査30点をどう出すかだけです。
| 選抜方法 | 書類審査30点の出し方 | 提出書類 |
|---|---|---|
| 活動記録重視型 | 調査書と活動記録報告書(様式1)をそれぞれ30点満点で点数化し、点数の高い方を採用 | 調査書・志望理由書・活動記録報告書(様式1) |
| 探究活動重視型 | 調査書と活動記録報告書(様式2)をそれぞれ30点満点で点数化し、点数の高い方を採用 | 調査書・志望理由書・活動記録報告書(様式2) |
| 総合評価型 | 調査書だけを30点満点で点数化 | 調査書・志望理由書 |
活動記録重視型と探究活動重視型は、調査書と活動記録報告書のうち高いほうが採られます。評定に自信がない人でも、活動の実績や探究の成果を書いた報告書のほうが高く出れば、そちらが使われるということです。逆に、提出しても低ければ調査書の点が使われるだけなので、出すこと自体に不利はありません。
大学が示している3方式の評価対象は次のとおりです。
- 活動記録重視型:工学、建築学、ライフデザイン学に関する専門知識や関連資格の取得、課外活動などの実績を積極的に評価
- 探究活動重視型:高等学校在学中に行った探究活動の成果や実績などを積極的に評価
- 総合評価型:本学への興味、関心、意欲、熱意など、本学で学びたいという強い意志を持った人物を多面的・総合的に評価
高校で探究に取り組んできた人は探究活動重視型、部活動や資格で積み上げてきた人は活動記録重視型、どちらも決め手に欠けるなら総合評価型、という選び分けになります。
1期の論述試験(模擬講義)40点
ここが東北工業大学の総合型選抜の核心です。
15分程度の志望課程・学科の模擬講義を受講し、講義中で用いられるキーワードの説明の要約と、講義の中で示される課題について論述します(100字程度)。模擬講義の受講も含め、試験時間は60分です。論述した内容から、講義内容を理解する力、文章表現力などを、評価します。
条件も明記されています。
受講中にメモを取ることができます。 要約文の文字数の指定はありません。
メモを取ってよいこと、そして要約の字数指定がないことは、そのまま対策の方針になります。60分のうち15分が講義なので、書く時間はおよそ45分。その中で「キーワードの説明の要約」と「課題への論述(100字程度)」の2つを仕上げます。
なお要項には、試験室について次のような記述もあります。
論述試験の試験室については、普段講義で利用している教室であり、後方の座席からでも十分に講義動画を視聴することができます。
講義は動画で提示されることがここから読み取れます。当日の時間割は、9時から10時が受験者入室、10時20分から11時20分が論述試験、11時20分から12時10分が昼食、12時30分から面接です。
2026年度の模擬講義テーマが公開されている
東北工業大学は、前年度の模擬講義テーマを一覧で公開しています。何が出るのかを具体的に知ることができる、貴重な資料です。
| 課程・学科 | 2026年度の模擬講義テーマ |
|---|---|
| 電気電子工学課程 | 電気電子工学が生体電気計測を通じて医療に果たしてきた役割と将来性 |
| 情報通信工学課程 | 静止画の表現 |
| 都市工学課程 | 社会を支える都市工学課程での学び |
| 環境応用化学課程 | 化学の基礎であるpHを理解しよう |
| 建築学科 | 建築における内部と外部の中間領域のはたらき |
| 産業デザイン学科 | 日本の書体表現 |
| 生活デザイン学科 | 私たちのくらしと環境 |
| 経営デザイン学科 | 経済のしくみとビジネス |
並べてみると、大学1年生の入門講義そのものです。時事問題でも社会問題でもなく、その分野の基礎概念を15分で説明するタイプの内容だとわかります。「pHを理解しよう」「静止画の表現」「内部と外部の中間領域」——いずれも、高校生が予備知識ゼロでも聞いて理解できるように組まれたテーマです。
だから準備の方向は、志望分野の専門知識を詰め込むことではありません。知らない話を15分聞いて、要点を取り出して、自分の言葉で書き直す練習です。要約そのもののやり方は課題文の要約にまとめてあります。
2期の小論文40点と、公開されている大テーマ
AOVA選抜(2期)になると、筆記は小論文に変わります。
課程・学科専門適性を問う小論文試験により「知識・技能」に加え「思考力・判断力・表現力」を重点に評価します。小論文の大テーマは、以下のとおりです。この大テーマに基づき、試験時に複数のテーマを出題します。その中から一つのテーマを選択し論述してください。(60分/600字以内)
そして、その大テーマが課程・学科ごとに全部公開されています。
| 課程・学科 | 小論文の大テーマ |
|---|---|
| 電気電子工学課程 | これからの社会における電気電子工学技術の役割について |
| 情報通信工学課程 | 情報通信の現在と未来について |
| 都市工学課程 | 自然災害リスクの増大・脱炭素への移行・人口減少の時代における、社会基盤インフラの役割について |
| 環境応用化学課程 | これからの社会における化学技術の役割について |
| 建築学科 | 持続可能な都市・地域づくりにおける建築の役割について |
| 産業デザイン学科 | 私たちの暮らしを良くするデザインについて |
| 生活デザイン学科 | 持続可能なまちづくりのための身近な生活デザインについて |
| 経営デザイン学科 | 持続可能な社会実現のための企業経営について |
当日は、この大テーマに沿った複数のテーマが出され、その中から1つを選んで書きます。大テーマがわかっているので、準備はかなり具体的にできます。形式としてはテーマ型小論文で、600字以内という上限があるので字数の調整も練習しておくと安心です。
とくに都市工学課程の大テーマは、自然災害リスクの増大・脱炭素への移行・人口減少という3つの論点が名指しされています。それぞれ災害と防災、エネルギー、少子高齢化で扱っているテーマです。この3つについて自分の考えを持っておけば、どのテーマが出ても対応できるはずです。
2期の当日の時間割は、9時30分から10時30分が受験者入室、10時45分から11時45分が小論文、11時45分から12時40分が昼食、13時から面接です。
面接30点は「持ち込み可」
面接は3方式・1期2期とも共通です。
志望理由書を参考に15分程度の個別面接を行います。積極的に自己アピールすることも認められ、自分でまとめた資料や作品を持ち込むことも可能です。
自分でまとめた資料や作品を持ち込めると明記されています。さらに、課程・学科ごとの注意書きがあります。
探究活動重視型で出願した者は、探究活動に関わるプレゼンテーションを行うこと(3分程度)が望まれます。 情報通信工学課程では、基礎的な数学について質問をすることがあります。 産業デザイン学科の受験者は、できるだけ制作や研究の成果を持ち込むことが望まれます。
探究活動重視型を選んだ人は、3分のプレゼンを用意しておくことが事実上求められます。組み立て方は探究の発表とプレゼン型入試を参考にしてください。産業デザイン学科を志望するなら、作品を持っていくことが望ましいとされています。情報通信工学課程は、基礎的な数学の質問に備える必要があります。
志望理由書は4問
面接は志望理由書をもとに進みます。その志望理由書の設問は4つです。
記入に当たっては、黒色のボールペンを使用し、楷書で丁寧に記入してください。 1.あなたが本学の上記課程・学科を志望する理由を記入してください。 2.あなたが送りたい大学生活について記入してください。 3.大学の卒業後の進路(将来就きたい職業など)について記入してください。 4.能力、資質、経験、資格、興味・関心などを基に、特にアピールしたいことを記入してください。
「志望理由」「大学生活」「卒業後の進路」「アピール」という、過去・現在・未来を一通り問う構成です。手書きで、黒のボールペン、楷書という指定があります。書き方の基本は志望理由書の完全ガイドにまとめました。
活動記録報告書は証明書類とセット
活動記録重視型で出す様式1については、要項に細かい注意があります。
高等学校在学中の課外活動の状況、取得した資格などを志願者本人が記入してください。(資格(検定)は、取得の時期を問いません。)なお、活動記録報告書の記載事項を証明する書類を必ず添付してください。証明する書類がないと評価の対象にならない場合があります。
添付する証明書類の例として、賞状・新聞記事・免許証・認定証の写し、団体競技ではメンバー表などが挙げられています。ただし例外もあります。
校内における活動歴(主将・生徒会役員等)は調査書の特別活動記録欄の記入をもって証明されたものとします。 同一の大会・コンクールにおいては最高位の成績のみ記載してください。
資格は取得時期を問わないので、中学生のときに取ったものでも書けます。一方で、証明書類がないと評価されないことがあるので、賞状や認定証は早めに探しておく必要があります。
探究活動重視型の様式2は、個人またはグループで行った探究活動の成果や実績を書くものです。受賞歴については証明書類の添付が必要です。
AOVA女子特別選抜は工学部の4課程
工学部だけに、女子を対象とした選抜があります。
工学分野に強い関心と意欲を持ち高校在学中の学業成績、特に理数分野に秀でた能力に加え、論述力・表現力等を兼ね備え、明確な目的意識をもっている者。
こちらは評定の条件があります。
普通科(理数科含む):全体の学習成績の状況が3.3以上かつ数学(数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A)、理科(物理基礎または化学基礎)の学習成績の状況が3.7以上。 その他の学科:全体の学習成績の状況が3.5以上かつ数学(数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A)、理科(物理基礎または化学基礎)の学習成績の状況が3.7以上。
選抜方法は書類審査30点(調査書のみ)+論述試験(模擬講義)40点+面接30点で、日程も試験内容もAOVA選抜(1期)の総合評価型と同じです。提出書類も調査書と志望理由書だけで、活動記録報告書は要りません。
そして、この選抜には2つの大きな利点があります。
本選抜の合格者全員を対象に入学金相当額(250,000円)の奨学金を入学後に給付します(東北工業大学工学系女子進学支援奨学金制度)。 AOVA女子特別選抜は「併願可」であり、本学のAOVA選抜(1期)総合評価型への追加出願が可能です(追加の検定料は不要)。追加出願を行った場合は、両選抜において合否判定の対象となります。
合格者全員に25万円の奨学金、そしてAOVA選抜(1期)総合評価型へ検定料なしで追加出願できる。追加出願すれば、同じ試験を受けて2つの枠で判定してもらえることになります。ただし追加出願は同一の課程にのみ可能です。
出願条件を満たす人であれば、追加出願をしない理由はほとんどありません。UCAROでAOVA選抜(1期)の出願登録をするだけで、書類の追加提出も検定料の追加支払いも不要とされています。
出願で気をつけること
- Web出願です。受験ポータルサイト「UCARO」に事前登録してから出願登録します
- 出願書類は簡易書留で郵送し、締め切り日必着です。当日消印有効ではありません。大学窓口での直接受理も原則ありません
- 写真は制服ではなく私服で撮影してアップロードします。郵送は不要です
- 座席配慮申請書があります。視力が著しく悪いなどで高校時代に教室内での座席配慮を受けていた人は、論述試験で前から1〜2列目の座席を申請できます。視力検査結果の写しなど、客観的に証明できる書類の添付が必要です
- 合否はUCAROで開示されます。入学手続に関する郵送物もありません
- 入学手続を完了したあと入学を辞退する場合、2027年3月31日(水)17時必着で所定の書類を出せば、入学金を除く全ての納付金が返還されます
- 合格者には入学前教育と入学前スクーリング(12月12日、2027年3月16日に実施予定)があります
なお、大学サイトの募集概要ページには「掲載の内容は2026年度入試のものです」という表示が残っている箇所があります。日程や募集人員は2027年度の要項PDFと一致していますが、出願前には必ず要項PDFで確認してください。
どこから手をつけるか
- 志望する課程・学科を決める。 模擬講義も小論文も、課程・学科ごとに内容が違います
- 1期と2期のどちらで受けるかを決める。 模擬講義型の論述が向いているか、テーマ型の小論文が向いているかで選べます
- 3つの選抜方法から1つを選ぶ。 探究に取り組んできたなら探究活動重視型、活動実績や資格があるなら活動記録重視型です
- 活動記録報告書を出すなら、証明書類を先に集める。 賞状や認定証がないと評価されないことがあります
- 1期なら、知らない話を聞いて要約する練習をする。 大学の模擬授業動画やオープンキャンパスの講義が素材になります
- 2期なら、公開されている大テーマで600字を書いてみる。 時間は60分です。書き方は小論文の完全ガイドから
- 志望理由書の4問に答えを書く。 面接はここから展開します
- 探究活動重視型なら、3分のプレゼンを組み立てる。 面接時間15分の中で行います
まとめ
- 東北工業大学の総合型選抜はAOVA選抜(1期)154名・AOVA女子特別選抜13名・AOVA選抜(2期)28名の3本立てです
- 1期の筆記は「論述試験(模擬講義)」。15分の模擬講義を受けてから、キーワードの説明の要約と課題への論述(100字程度)を書きます。受講込みで60分、メモ可、要約の字数指定なしです
- 2026年度の模擬講義テーマ一覧が公開されています。「化学の基礎であるpHを理解しよう」「静止画の表現」など、入門講義そのものの内容です
- 2期の筆記は小論文(60分・600字以内)。大テーマが課程・学科ごとに公開されていて、当日はその大テーマに基づく複数のテーマから1つを選びます
- 「活動記録重視型」「探究活動重視型」「総合評価型」を出願時に選びます。配点は3方式とも同じで、違うのは書類審査30点の出し方だけです
- 活動記録重視型・探究活動重視型は、調査書と活動記録報告書のうち点数の高い方が書類審査の点になります
- 面接は15分で、自分でまとめた資料や作品を持ち込めます。探究活動重視型は3分程度のプレゼンが望まれます
- AOVA女子特別選抜は工学部の4課程のみ。評定の条件(普通科は全体3.3以上かつ数学・理科3.7以上)があるかわりに、合格者全員に入学金相当額25万円の奨学金が給付され、AOVA選抜(1期)総合評価型へ検定料なしで追加出願できます
- 推薦書は不要、他大学との併願も可能、既卒者も受験できます
総合型選抜そのものの進め方は総合型選抜の完全ガイド、大学別の記事は大学別対策の作り方から探せます。宮城県の私立大学は東北学院大学、仙台大学、東北福祉大学の記事にもあります。