課題文が英文の小論文。訳すことに時間を使わない
医学部・国際系で出題される形式です。全訳しようとすると必ず時間が足りません。設問から逆算して要旨だけを取る手順と、分からない単語の扱い方を具体的にまとめました。
医学部、国際・外国語系、一部の総合政策系で、課題文が英文の小論文が出ます。
この形式で落ちる原因は、ほぼ1つに絞れます。
全部を訳そうとして、時間が尽きることです。
要項が形式を明記している例。名古屋大学 文学部の学校推薦型選抜は、小論文を「英語の文章を読み、日本語で論述する形式です」と書いています。京都大学 法学部の特色入試も「英語の文章を題材に、日本語で解答する小論文」と明記しています。国公立の推薦・総合型では珍しくない形式です。
関西の公立大学はほぼ全部この形式です。兵庫県立大学は多くの学部で「小論文は英語による出題を含みます」と明記し、看護学部は英和辞典1冊持込可。奈良県立大学は推薦・前期・中期のすべてが「小論文(英語読解力を含む)90分」です。
解答まで英語という入試もあります。明治学院大学 文学部英文学科の自己推薦AOは、小論文が「英語によるエッセイ・300〜500語程度」。この記事の「英文を読んで日本語で書く」型とは別の準備が要ります。
求められているのは英語力ではない
英語の試験なら、正確な訳が求められます。しかしこれは小論文です。採点されるのは、英文の理解を踏まえて何を論じたかです。
だから必要な理解の水準は、次の一点に尽きます。
筆者が何を主張しているかを、日本語の一文で言えること
細部の訳は要りません。そこに時間を使うほど、本来の勝負どころである論述に回す時間が減ります。
手順
1. 設問を先に読む(2分)
英文より先に設問です。何を答えるのかが分かっていれば、英文のどこを読むべきかが決まります。
「筆者の主張を踏まえて」なら主張だけを取ればよく、「本文中の◯◯という考え方について」なら、その周辺を重点的に読みます。
2. 段落の最初と最後を拾う(5分)
英語の論説文は、段落の最初か最後に主張が来る形が多いという特徴があります。まず各段落の1文目と最終文だけを読み、段落ごとに一言のメモを付けてください。
この段階で全体の流れが見えます。細部はまだ読みません。
3. 対立を示す語を探す
論説文の要点は、たいてい転換のあとにあります。
| 語 | 意味 |
|---|---|
| however / but / yet | ここから筆者の言いたいこと |
| although / while | 前半は譲歩、後半が主張 |
| rather than / instead of | 何を否定して何を採るか |
| on the other hand | 対立する見方の提示 |
これらの語に印を付けるだけで、対立軸が浮かびます。日本語の課題文で線を引くのと同じ作業です(課題文への線の引き方へ)。
4. 主張を日本語の一文にする(3分)
ここまでで、次の形の一文を作ります。
筆者は、〜ではなく〜だと述べている。
この一文が書ければ、英文の作業は終わりです。
5. あとは日本語の小論文と同じ
主張をつかんだ後は、通常の課題文型と変わりません。手順は課題文型小論文の解き方にまとめてあります。
分からない単語の扱い
必ず知らない語が出ます。止まらないための3つのルールを決めておいてください。
ルール1|主張の文にある語だけ考える
具体例や補足説明の中の語は、分からなくても構いません。分からない語がどこにあるかで、重要度が決まります。
ルール2|前後から推測できたら、それで進む
正確な訳語は不要です。「良い意味か悪い意味か」「増えるのか減るのか」が分かれば、論の向きは取れます。
ルール3|同じ語が何度も出てきたら、それが鍵語
繰り返される語は、筆者の主張の中心にあります。訳が確定しなくても、「筆者はこの概念を肯定的に扱っている」と分かれば十分書けます。
答案を日本語で書く場合/英語で書く場合
日本語で答える場合(多数)
英文の表現を直訳して答案に入れないでください。
❌ 私たちは、より良い未来を作るための責任を共有している。
英語をそのまま置き換えた文は、日本語として不自然になりがちです。自分の言葉で書き直してください。
英語で答える場合
字数(語数)指定が短いことがほとんどです。構成は日本語の小論文と同じで構いません。難しい構文を使う必要はなく、短い文を正確につなぐほうが安全です。
分からない単語を避けて書ける範囲で書く、と決めておいてください。背伸びした語は、そこだけ誤りになります。
「要約せよ」と指示された場合
英文の要約は、日本語の要約と作業が同じです。訳すのではなく、骨組みを抜きます。手順は小論文の課題文要約へ。
訳文を短くしたものは要約になりません。主張・根拠・前提を取り出して、日本語で組み立て直してください。
よくある失敗
全訳する
最大の失敗です。時間が尽き、論述が数行で終わります。
訳に自信がなく、意見が縮む
「読み違えているかもしれない」と思うと、当たり障りのないことしか書けなくなります。主張を一文でつかめたなら、そこから先は堂々と書いてください。
知っている単語だけで意味を作る
拾い読みで組み立てた意味は、しばしば正反対になります。否定語と転換の語だけは確実に拾ってください。そこを落とすと逆の意味になります。
英文の話題を、知っている日本の事情に置き換える
英文が扱っている国や制度の前提を無視して自国の話にすり替えると、課題文への応答になりません。
準備の仕方
過去問があるなら、次の練習を繰り返してください。
- 設問だけ読む
- 5分で英文の要旨を取り、日本語の一文にする
- 答えを見て、主張がずれていないか確かめる
訳す練習ではなく、要旨を取る練習です。これを10本もやれば、時間の感覚が身につきます。
英語で書く入試
国際教養大学は総合選抜型・学校推薦型などで「英語小論文」を課します。青山学院大学文学部英米文学科の自己推薦は、英文を読み、英語と日本語の両方で文章を書く形式です。志望校がこの型なら、読む訓練だけでなく英語で構成する訓練まで必要になります。
まとめ
- 求められているのは正確な訳ではなく、主張をつかんで論じること
- 設問を先に読む。次に各段落の1文目と最終文だけ拾う
- however / although / rather than などの転換語で対立軸を取る
- 「筆者は〜ではなく〜だと述べている」の一文が書けたら英文の作業は終わり
- 分からない語は、主張の文にあるものだけ考える
- 繰り返し出てくる語が鍵語。訳が確定しなくても向きが分かればよい
- 英文の直訳を答案に入れない
- 否定語と転換語だけは確実に拾う。落とすと逆の意味になる
- 練習は訳ではなく、5分で要旨を一文にする形で行う
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。