奈良女子大学 探究力入試「Q」の対策。文学部は指定図書を読んで2回書き、工学部Q2型は2日間かけて議論する
奈良女子大学の総合型選抜「探究力入試Q」(計46名以内)を、2027年度の学生募集要項から学科・コース別に整理しました。文学部の指定図書6冊、理学部の口述試験と実験、生活環境学部のプレゼン形式、工学部Q2型・Q3型の違いまで解説します。
奈良女子大学の総合型選抜「探究力入試Q」の文学部は、書類選考に通ると指定図書についてのレポート課題が届きます。
指定図書は、選んだ探究テーマごとに2冊。書名は募集要項に載っています。
| 探究テーマ | 指定図書 |
|---|---|
| ことばと人間の探究 | 北村紗衣『批評の教室』(ちくま新書、2021年)/大塚英志『アトムの命題』(角川文庫、2009年) |
| 社会と人間の探究 | 村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマー新書、2023年)/森山至貴『LGBTを読みとく』(ちくま新書、2017年) |
| 地域と環境の探究 | 宮﨑雅人『地域衰退』(岩波新書、2021年)/宇根豊『日本人にとって自然とはなにか』(ちくまプリマー新書、2019年) |
レポートの締切は10月20日必着。その4日後の10月24日に、指定図書に関する小論文(90分)と、提出したレポートについての口述試験があります。
読んで、書いて、また書いて、話す。文学部のQはそういう入試です。
同じ「Q」でも、中身は学科・コースごとにまったく違います。生活情報通信科学コースは自分で作ったコンピュータ関連の作品を10分で発表し、工学部のQ2型は2日間かけてデータ分析・レポート・ディスカッションをします。
この記事は、公開されている2027年度(令和9年度)総合型選抜 探究力入試「Q」学生募集要項の記載をもとに構造を整理したものです。
必ず最新の募集要項で確認してください。日程・募集人員・出願要件は年度によって変わります。この記事は考え方を示すもので、要項の代わりにはなりません。 出典:奈良女子大学 探究力入試「Q」専用ウェブサイト/令和9(2027)年度 総合型選抜 探究力入試「Q」学生募集要項(PDF)
「Q」とは何か
令和3年度入試から始まった入試で、名前の「Q」は探究(キュー)、question、questの頭文字です。要項の冒頭では、答えを出すだけでなく、自分で問いを立てて解き明かしていくことが好きな人を歓迎すると説明しています。
共通テストは合否判定に使いません。ただし一部の学科・コースでは、入学前教育の一環として最終合格者に共通テストの受験を求めます(後述)。
出願資格は、本学で学ぶ強い意欲をもつ女子(性自認が女性であるトランスジェンダー女性を含む)で、高校を卒業した人・卒業見込みの人など。既卒の年数に制限はありません。合格したら入学を確約することが条件です。
募集人員
| 選抜単位 | 募集人員 |
|---|---|
| 文学部(3つの探究テーマから1つを選ぶ) | 12名以内 |
| 理学部(数物科学科/化学生物環境学科の化学・生物科学・環境科学コース) | 10名以内 |
| 生活環境学部(食物栄養/心身健康/住環境/文化情報学科の生活文化学・生活情報通信科学コース) | 9名以内 |
| 工学部 工学科 Q2型(スクエア) | 10名以内 |
| 工学部 工学科 Q3型(キューブ) | 5名以内 |
理学部と生活環境学部は、学部全体でこの人数です。選考の結果によっては、合格者が募集人員に満たないこともあります。
入学後に学部を変えることはできません。文学部の探究テーマ、生活環境学部の学科・コースも原則として変更できません。工学部のQ2型とQ3型は併願できません。
日程
| 出願(必着) | 第1次選考の結果 | 第2次選考 | |
|---|---|---|---|
| 文学部 | 9月1日〜7日 | 9月18日 | 10月24日(課題レポートは10月20日必着) |
| 理学部・生活環境学部 | 9月1日〜8日 | 9月29日 | 10月24日 |
| 工学部 Q2型 | 9月1日〜7日 | 9月18日 | 10月10日・11日(2日間とも出席) |
| 工学部 Q3型 | 9月1日〜8日 | 9月29日 | 10月24日 |
最終合格発表は全学部11月2日、入学手続の締切は11月30日。第1次選考はすべて書類選考で、来学の必要はありません。
文学部——テーマを選び、指定図書で勝負する
3つの探究テーマ
| テーマ | 求める学生像(要約) |
|---|---|
| ことばと人間の探究 | ことばそのもの、または文学・哲学・思想・芸術・スポーツやダンスなど、ことばや身体による表現活動に強い関心があり、考えたことを論理的な文章にするのが好きな人 |
| 社会と人間の探究 | 経済的格差や社会文化的対立を背景に、社会的公正や多様な人々の共生と包摂に関心があり、社会調査やフィールドワークで探究したい人 |
| 地域と環境の探究 | 地域の課題や環境・災害の問題を文系・理系の枠にとらわれずに考え、フィールドワークで地域に関わりたい人 |
出願できるテーマは1つだけです。どれを選ぶかで、2年次から所属する学科と3年次からのコースが変わり、入学後にテーマを変えることは原則できません。高校での要履修科目の指定はありません。
提出書類
- 調査書
- テーマに関する志望理由書
- テーマに関する志願者評価書(和文・英文どちらでもよい。作成を依頼する書類)
第1次選考は書類で100点満点。合否はテーマ別ではなく学部一括で判定します。
第2次選考は1次の点数を持ち越さない
| 試験 | 時間 | 配点 |
|---|---|---|
| 指定図書に関する小論文 | 9:30〜11:00(90分) | 100 |
| 口述試験(提出した課題レポートなどについての質疑応答) | 12:30〜 | 100 |
小論文の題材には、テーマによって英語が含まれることがあります。
最終合否は第2次選考の結果だけで決まり、第1次選考の点数は加算されません。判定はここでも学部一括です。
書類で通過したあとは、横一線からのやり直しということです。勝負は、指定図書をどれだけ深く読めているか、そして自分のレポートを自分の言葉で説明できるかにかかっています。
理学部——口述試験、レポート、実験、研究発表
理学部は、学科・コースによって第2次選考の形がまったく違います。
| 学科・コース | 提出書類(調査書以外) | 第2次選考 | 最終判定 |
|---|---|---|---|
| 数物科学科(数学型/物理型) | 数学または物理学に関する作文またはレポート | 口述試験 200点(提出物への質問を含む、数学または物理学の総合的な口述試験) | 1次100+2次200=300点 |
| 化学コース | 志望理由書、活動報告書、入賞などの根拠資料(任意) | 資料をもとにした課題のレポート作成 400点(120分)+口述試験 100点 | 2次のみ |
| 生物科学コース | 志望理由書 | 生物実験(150分)→結果のとりまとめ・面接(口述試験)100点。顕微鏡などを使う場合あり | 2次のみ |
| 環境科学コース | 志望理由書、研究レポート | 研究レポートについて10分の発表と質疑応答 200点。プロジェクタかA0以下のポスター | 2次のみ |
要履修科目がある学科・コース
数物科学科は、数学型なら数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C、物理型ならそれに加えて物理基礎・物理と、化学・生物・地学のうち1組の履修が必要です。化学コースは数学Ⅰ〜Cに加えて物理・化学・生物から2組、環境科学コースは数学Ⅰ〜Cに加えて物理・化学・生物・地学から2組。生物科学コースは指定がありません。
環境科学コースの研究レポートは構成が決まっている
題材は、環境科学を含む自然科学一般の観察・観測、調査活動、保全活動など。構成は背景と目的・方法・結果・考察・まとめの順と指定されています。調査書にも、そうした活動への取り組みや、数学・理科の知識についての所見を書いてもらうよう求めています。
発表でプロジェクタを使う場合、紙の資料を見ながら話すことはできません。
生活環境学部——5つの選抜単位で形式が違う
| 学科・コース | 提出書類(調査書以外) | 第2次選考 | 最終判定 |
|---|---|---|---|
| 食物栄養学科(要履修:化学基礎・化学) | 学習研究計画書、技能や入賞の証明(任意) | 科学的な文書(英語を含む場合あり)や実験データを読んで小論文 200点→ホワイトボードでプレゼンと質疑 200点。小論文とプレゼン準備で60分、発表と質疑で25分 | 2次のみ(1次は200点満点) |
| 心身健康学科 | 志望理由書、探究報告書、小論文(出願時に提出) | 小論文で選ばなかったコース課題から1つを選び、ポスター(A0以下)でプレゼン 200点。質疑を含め1人30分程度 | 1次100+2次200=300点 |
| 住環境学科 | 志望理由書 | データや資料を読み、その場で示される課題について教員と1対1でディスカッション 100点 | 2次のみ |
| 文化情報学科 生活文化学コース | 学習研究計画書(興味のあるテーマや問題に必ず触れる) | 高校で探究した生活文化学に関わる内容をパワーポイントで15分以内のプレゼン、質疑込みで30分程度 100点 | 2次のみ |
| 文化情報学科 生活情報通信科学コース | 志望理由書、作品概要書(A4判2枚以内) | 自作のコンピュータ関連作品のプレゼン(最大10分)と質疑(約10分)100点 | 2次のみ |
心身健康学科は、出願時に小論文を1本出す
3コースから出された課題のうち1題を選んで小論文を書き、出願書類として提出します。
| コース | 課題名 | 問われていること(要約) |
|---|---|---|
| 生活健康学 | 健康な習慣 | 子どものころの生活習慣が大人の健康に影響することをふまえ、学校や家庭で子どもに良い習慣を根づかせる方法 |
| スポーツ健康科学 | 運動・体育・スポーツ | バーチャルスポーツやeスポーツが心身の健康に与える影響を、従来のスポーツと比べて論じる |
| 臨床心理学 | こころとからだ | 感染症の世界的な流行期に多くの国で犯罪が減った一方、家庭内暴力が増えた国があった理由を論じる |
第2次選考では、小論文で選ばなかった残り2つの課題から1つを選んでポスターで発表します。つまり3つの課題のうち2つについて、自分の考えを用意することになります。
生活情報通信科学コースの「作品」は幅が広い
作品はコンピュータに関連していれば、プログラム、ハードウェア、デジタルコンテンツ(ウェブページ、CG、3Dモデリング、高度に編集した動画など)のどれでもかまいません。デジタルコンテンツでも技術的な先進性が高いものほど高く評価し、芸術性を評価することもあるとされています。
発表が11分を超えると途中でも打ち切りです。共同で作った作品なら、自分が担当した部分を中心に説明します。プロジェクタが使えない事態に備えて、A4片面8ページ以内の配布資料を6部用意する決まりです。
工学部——Q2型とQ3型は性格が逆
| Q2型(スクエア) | Q3型(キューブ) | |
|---|---|---|
| 募集人員 | 10名以内 | 5名以内 |
| 提出書類(調査書以外) | 志望理由書 | 志望理由書、研究計画書 |
| 第2次選考 | 10月10日(13:00〜17:00)と11日(9:00〜13:00)の2日間。データ・資料の分析100点、レポート作成100点、ディスカッション(グループ・個別)200点 | 10月24日。研究計画書にもとづくプレゼン(最大10分・厳守)と質疑(約15分)100点 |
| 最終判定 | 2次のみ(400点) | 1次100+2次100=200点 |
| 求める学生像(要約) | 人の生活を豊かにする方法に興味があり、現代の技術で実現したい人。多様な人と協働する姿勢がある人 | 創意や発見を追う探究心があり、主体的に学び・考え・実行し・振り返ることができる人 |
Q2型は、その場で与えられた資料を分析して人と議論する力を、Q3型は、自分で立てた研究計画を説明する力を見ます。両方には出願できないので、自分がどちらで力を出せるかで選んでください。
Q3型のプレゼンは形式が自由で、一人で運べる大きさの物なら持ち込めます。プロジェクタを使うならA4で8ページ以内の資料を5部、ポスターならA0以下で、A3 1枚にまとめたものを5部提出します。
合格後に共通テストを受ける学科・コース
合否には使いませんが、入学前教育の一環として、次の学科・コースは最終合格者に共通テストの受験を求めます。
| 共通テストの受験 | 学科・コース |
|---|---|
| 求める | 理学部(全学科・コース)、生活環境学部 住環境学科、文化情報学科 生活文化学コース、工学部(Q2型・Q3型) |
| 求めない | 文学部、生活環境学部 食物栄養学科・心身健康学科、文化情報学科 生活情報通信科学コース |
理学部は6教科8科目。住環境学科・生活文化学コース・工学部は「理科2科目利用型」か「地歴・公民2科目利用型」で受けます。共通テストに出願するときに「成績の閲覧」の手続きをしておく必要があり、出願後には手続きできません。対象の学科・コースを受ける人は、共通テストの出願のときに必ず確認してください。
どこから手をつけるか
まず、自分の選抜単位の第2次選考を一言で言えるようにしてください。「指定図書の小論文と口述」「実験」「作品のプレゼン」「2日間の分析と議論」。Qは選抜単位ごとに準備がまったく違うので、ここが決まらないと対策を始められません。
文学部なら、テーマを決めて指定図書の2冊を出願前に読み始めることです。レポート課題が届くのは第1次選考の結果が出る9月18日以降で、締切は10月20日。そこから読み始めると、2冊を読んでレポートを書き、さらに小論文と口述の準備まで1か月でこなすことになります。夏のうちに読んでおけば、課題が届いた時点で書き始められます。本の主張を自分の言葉でまとめる練習には課題文の要約が役立ちます。
理学部の数物科学科は、提出した作文やレポートを口頭で説明できるかが問われます。書いた式や推論の一つひとつに「なぜ」と聞かれても答えられるように準備してください。口頭試問の対策にやり方をまとめています。
生活環境学部と工学部Q3型は、発表の形式が細かく指定されています。ファイル形式、配布資料の部数とページ数、発表時間の上限。準備の段階で要項の指定を一つずつ確認してください。組み立て方はプレゼン型入試の対策を参照してください。
工学部Q2型と住環境学科は、その場で出る資料を読んで議論する形式です。グループディスカッションの対策で、資料から論点を取り出して発言する練習をしておきましょう。
まとめ
- 奈良女子大学の総合型選抜「探究力入試Q」は、文学部12名以内、理学部10名以内、生活環境学部9名以内、工学部Q2型10名以内・Q3型5名以内
- 出願資格は女子(トランスジェンダー女性を含む)で、既卒の年数制限なし。共通テストは合否に使わない
- 第1次選考は全学部書類選考。最終合格発表は11月2日、入学手続は11月30日まで
- 文学部は3テーマから1つ。第1次選考の合格後に指定図書のレポート(10月20日必着)、10月24日に指定図書の小論文(90分)と口述試験。1次の点数は加算しない
- 理学部は、数物科学科が口述試験200点、化学コースがレポート作成400点+口述100点、生物科学コースが実験と面接、環境科学コースが研究レポートの10分発表
- 生活環境学部は、食物栄養学科がその場の小論文とホワイトボードでのプレゼン、心身健康学科が出願時の小論文とポスター発表、住環境学科が教員と1対1の議論、生活文化学コースが15分のパワーポイント発表、生活情報通信科学コースが自作作品の10分プレゼン
- 工学部は、Q2型が2日間のデータ分析・レポート・ディスカッション、Q3型が研究計画書のプレゼン。両方には出願できない
- 理学部・住環境学科・生活文化学コース・工学部の最終合格者は、入学前に共通テストの受験を求められる。共通テスト出願時の「成績の閲覧」の手続きを忘れない
探究の中身で勝負する国立大学の入試には、お茶の水女子大学 新フンボルト入試もあります。近畿の国立大学では京都工芸繊維大学 ダビンチ入試、奈良教育大学、和歌山大学 観光学部を扱っています。探究活動の進め方は探究活動 完全ガイド、学部ごとの小論文の傾向は文学部の小論文や栄養学部の小論文を参照してください。