小論文「比較して論じよ」の答え方。違いを並べても点にならない
比較を求める設問で評価されるのは、比較の軸を自分で立てられるかどうかです。軸の作り方と、比較を主張に着地させる型を具体例つきでまとめました。
「AとBを比較し、あなたの考えを述べなさい」という設問があります。
多くの答案が、こうなります。
Aは費用が安く、手軽に始められる。一方、Bは費用がかかるが、効果が高い。両者にはそれぞれ長所と短所がある。
違いは書けています。しかし、何も判断していません。
比較は目的ではなく手段
まず押さえるべきは、設問は比較そのものを求めていないということです。
比較は、何かを判断するための道具です。だから最初に決めるのは「何を判断するための比較か」。
❌ AとBの違いを説明する ⭕ どういう場面ならAで、どういう場面ならBか を決める
この置き換えができた時点で、答案の8割は終わっています。
軸を立てる
比較が散らかる原因は1つです。同じものさしで測っていないから。
Aは歴史が古い。Bは操作が簡単だ。
これは比較ではありません。「歴史」と「操作性」という別々のことを言っているだけです。
軸の作り方
- 判断したいことを決める(例:どちらを主に使うべきか)
- その判断に効く観点を2〜3本出す
- 両方について同じ観点で言えるかを確かめる
観点が片方にしか当てはまらないなら、それは軸になりません。捨ててください。
軸は2本か3本
1本では単純すぎ、4本以上では字数が足りません。800字なら2本、1000字を超えるなら3本が目安です。
| 字数 | 軸の数 | 1軸あたり |
|---|---|---|
| 800字 | 2本 | 150字程度 |
| 1200字 | 3本 | 200字程度 |
共通点はどう使うか
共通点を並べただけの答案も、評価されません。
共通点は、違いを際立たせるための土台として使います。
AもBも、目的は同じく〜である。にもかかわらず結果が分かれるのは、〜の扱い方が違うからだ。
この形にすると、共通点が違いの説明に働きます。「どちらも〜という点では共通している」で段落を終えると、そこで論が止まります。
比較を主張に着地させる
最後が最も差がつきます。
優劣で決めない
「Aのほうが優れている」で終わる答案は、条件を無視しています。現実には、条件によって答えが変わるものだけが設問になります。
条件で分ける
Aが有効なのは〜という条件が満たされている場合であり、それが崩れる場面ではBを選ぶべきである。
この形が最も安全で、かつ最も評価されます。両論併記との違いは、条件を明示しているかどうかです。
❌ 両者には一長一短があり、状況に応じて使い分けることが重要である。 ⭕ 使い分けの基準は〜であり、その理由は〜である。
上は逃げていますが、下は判断しています。「状況に応じて」と書いたら、その状況を必ず定義してください。
第3の選択肢を出す場合
「AでもBでもなく、Cを」という書き方は強力ですが、AとBを十分に検討したあとでなければ、設問から逃げたと見なされます。軸に沿った比較を終えてから出してください。
表は書かない
構成メモの段階では表を書いてください。ただし答案には書きません。
原稿用紙に表を作るのは形式上のリスクがあり、何より表は関係を説明しないからです。表で整理し、文章では「なぜその差が生じるのか」を書きます。
よくある失敗
説明で字数が尽きる
AとBそれぞれの説明に300字ずつ使い、判断が残り200字。説明は最小限にし、比較と判断に字数を寄せてください。
課題文の対立をそのまま写す
課題文に2つの立場が示されている場合、その要約で終わる答案が出ます。要約は求められていません。自分の軸で測り直してください。
軸を途中で変える
前半は費用で比べ、後半はいつのまにか安全性で比べている。読み手は混乱します。軸を宣言してから比べてください。
私は、両者を「誰が負担するか」と「失敗したときに戻せるか」の2点で比較する。
この一文があるだけで、答案の見通しがまったく変わります。
論じ方の一例
私は、この2つの方法を「効果が表れるまでの時間」と「途中でやめられるか」の2点で比較する。(軸の宣言) 第一の点では、Aが短期間で結果を出せるのに対し、Bは効果が見えるまでに年単位の時間を要する。第二の点では、Aは一度始めると後戻りが難しく、Bは規模を縮めながら続けられる。(軸ごとの比較) したがって、判断は「どれだけ早く結果が必要か」だけでは決まらない。見通しが立たない段階ではB、条件がそろっていて失敗の代償が小さい場面ではAを選ぶべきだと考える。(条件で分けた主張) たしかに、緊急性の高い場面ではBの遅さは致命的である。だが、その緊急性が誰にとってのものかを確かめないまま速さを優先すると、後戻りできない選択だけが残る。(反論への応答)
「比較せよ」以外の設問の動詞(説明せよ・論じよ・提案せよ)の読み分けは、設問の読み方にまとめています。
まとめ
- 設問は比較そのものではなく、比較を通じた判断を求めている
- 最初に「何を判断するための比較か」を決める
- 軸は同じものさし。片方にしか当てはまらない観点は捨てる
- 軸は800字なら2本、1200字なら3本
- 共通点は、違いを際立たせる土台として使う
- 優劣で決めず、条件で分ける。「状況に応じて」と書いたら状況を定義する
- 表は構成メモまで。答案には書かない
- 軸を宣言してから比べる。途中で変えない
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。