小論文の「あなたならどうするか」。場面設定型の答え方
看護・医療・教育・福祉系で頻出の形式です。優しい言葉を並べても評価されません。判断の手順を4段階で示す型と、権限を超えないための書き方、失敗例までまとめました。
具体的な場面が示され、「あなたならどうするか」と問われる形式があります。
看護・医療・教育・福祉系で特に多く、次のような出題です。
あなたは実習中の学生である。担当している患者から「家族には言わないでほしい」と告げられた。あなたならどうするか。
この形式で、答案はきれいに割れます。
私は患者さんの気持ちに寄り添い、まずは話をよく聞きたい。そして信頼関係を築き、安心してもらえるように努めたい。
優しい言葉が並んでいますが、何も決めていません。
この形式が見ているもの
問われているのは、行動の正解ではありません。判断の手順が踏めるかどうかです。
現場の問題には、たいてい正解がありません。だから採点者が確かめているのは次の3点です。
- 決める前に確かめるべきことを確かめたか
- 何と何がぶつかっているかを言えるか
- 自分にできる範囲を把握しているか
「こうすべきだ」と即答する答案と、「寄り添いたい」で終わる答案は、正反対のようでいて同じ欠陥を持っています。どちらも判断の過程が書かれていません。
答案の型:4段階
段階1|事実を確認する
いきなり動かないでください。場面文に書かれていないことのうち、判断に必要なものを挙げます。
なぜ家族に言いたくないのか、その理由を本人から聞く必要がある。心配をかけたくないのか、家族との関係に問題があるのかで、対応は変わる。
この一段落があるだけで、答案の水準が変わります。「情報が足りない状態で決めない」という姿勢そのものが評価対象です。
段階2|対立を特定する
何と何がぶつかっているのかを名指しします。
ここでは、本人の意思を尊重することと、本人にとっての安全を確保することがぶつかっている。
医療系なら自己決定と最善の利益、教育系なら本人の意思と保護者の権利、というように分野ごとの定番の対立軸があります。頻出テーマの記事(インフォームド・コンセントなど)で扱った軸が、そのまま使えます。
段階3|判断と、その根拠
ここで初めて決めます。必ず決めてください。
私は、まず本人の意思を尊重し、その場では家族に伝えない。ただし、〜の場合には方針を変える必要があると考える。
条件つきで決めるのが安全です。無条件に言い切ると、想定外の場面に対応できない答案になります。
段階4|自分の限界を書く
最も差がつく段階です。
ただし、この判断は学生である私が単独で行えるものではない。指導者に相談し、判断を共有した上で対応する。
実習生や新人という設定であれば、自分の権限を超えないことが正解の一部です。一人で抱え込む答案は、現場を知らないと判断されます。
やってはいけないこと
決めつけて動く
患者さんは家族に迷惑をかけたくないのだと思う。だから私は〜
思い込みで理由を確定させています。本人に確かめる段階が飛んでいます。
全員を満足させようとする
「本人の気持ちも尊重しつつ、家族にも配慮し、医療者としても責任を果たす」。それができるなら、この設問は出題されません。何かを取れば何かを諦めることになる、という自覚を書いてください。
自分の権限を超える
学生や新人の設定で、方針を自分で決定して実行する答案は減点されます。相談すること自体が行動です。
感情だけで書く
「かわいそうだと思う」「つらい気持ちがよく分かる」。共感は前提であって、判断ではありません。「寄り添う」に頼らない書き方はコミュニケーションと共感にまとめました。
制度や法律の知識で押し切る
規則を挙げて「したがって〜すべきである」で終える答案も浅い。規則があってなお迷う場面だから出題されています。
書き方の一例
この場面で私がまず行うのは、家族に伝えたくない理由を本人から聞くことである。心配をかけたくないのか、伝えることで別の不利益が生じるのかによって、取るべき対応は変わるからだ。(事実の確認) ここでぶつかっているのは、本人の意思を尊重することと、本人が必要な支援を受けられる状態を保つことである。どちらも本人のためであり、一方を選べば他方が損なわれる。(対立の特定) その上で私は、まず本人の意思を尊重し、この時点では家族に伝えない立場を取る。理由は、本人の同意なく共有すれば、以後この人が私に何も話さなくなる可能性が高く、結果として支援そのものが届かなくなるからだ。(判断と根拠) ただし、これは私が一人で決めてよい判断ではない。本人にその旨を伝えた上で、指導者に状況を報告し、方針を共有する。私にできるのは、本人の言葉を正確に伝え、判断の材料をそろえることである。(限界の自覚)
「相談する」で終わらせず、相談する際に自分が何を持っていくかまで書いている点が、この答案の要です。
まとめ
- 問われているのは行動の正解ではなく、判断の手順
- 「寄り添いたい」で終わる答案と、即断する答案は同じ欠陥を持つ
- 段階1:判断に必要な情報のうち、場面文にないものを挙げる
- 段階2:何と何がぶつかっているかを名指しする
- 段階3:条件つきで必ず決める
- 段階4:自分の権限の範囲を書く。相談することも行動
- 全員を満足させる答案にしない。何かを諦めると書く
- 相談する場合は、何を持って相談するかまで書く
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。