志望理由書の例文。800字の作例2本(看護・経済)を、段落ごとの役割つきで
志望理由書800字の作例を、看護学科と経済学部の2本載せました。どちらも架空の受験生・架空の大学で書いた作例です。きっかけの場面・問い・自分で調べたこと・大学で学ぶこと・将来の5段落に分け、段落ごとの字数と役割、大学との接続が弱い書き方の直し方、自分の材料に置き換える手順まで示します。
志望理由書の例文を探している人のために、800字の作例を2本載せます。看護学科と経済学部です。
先に、この記事の作例について3つ断っておきます。
- 作例は、架空の受験生・架空の大学で書いたものです。体験も、大学の求める人物像も、授業や実習も、すべて作り話です
- そのまま写して使わないでください。大学ごとに設問と求める人物像が違ううえ、面接では書類に書いたことをもとに質問されることが多いからです。出願書類の作成で、生成AIの使用を禁じている大学もあります(自己推薦書と志望理由書の違い)
- 借りてほしいのは、文ではなく段落の役割と字数の配分です
作例は、このサイトの志望理由書800字の構成の5段落(200・150・200・200・50字)に沿って書いています。
作例の組み立て
| 段落 | 役割 | 目安 | 作例1(看護) | 作例2(経済) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | きっかけになった場面を1つ | 200字 | 178字 | 175字 |
| 2 | そこから生まれた問い | 150字 | 148字 | 156字 |
| 3 | 問いを追って、自分でしたこと・分かったこと | 200字 | 180字 | 188字 |
| 4 | だから、この大学で何を学ぶのか | 200字 | 202字 | 199字 |
| 5 | その先にしたいこと | 50字 | 47字 | 49字 |
| 合計 | 800字 | 755字 | 767字 |
字数は、句読点とかぎかっこを含めた文字数です(筆者の計算)。どちらも800字の9割台に収めています。原稿用紙に書くと、段落の最初の1マスや行末の扱いで、マス数は少し変わります(小論文の原稿用紙ルール)。
作例1:看護学科(755字)
高校2年の冬、祖母が肺炎で入院した。見舞いに通った病棟で、看護師の方が点滴を交換しながら「今日は雨だから膝が痛みますね」と声をかけた。祖母は膝の痛みを、家族にも医師にも話していなかった。驚いて理由を尋ねると、看護師の方は「歩くときに右足をかばっていたので」と答えた。祖母はその日、入院してから初めて自分から話し始め、退院後に一人で暮らす不安まで打ち明けた。
カルテに書かれていない情報を、看護師の方はどこから得ていたのか。私はそれまで、看護の専門性は医師の指示を正確に実行する技術にあると考えていた。しかし病棟で見たのは、指示の外側で患者を観察し、言葉にされていない困りごとを拾う仕事だった。その気づきは、生まれつきの勘なのか、学んで身につくものなのか。
この問いを確かめるため、看護の観察について書かれた入門書を読み、地域の病院の看護体験に参加した。体験では、看護師の方が検温のたびに顔色や食事の量、話し方の変化まで記録していることを知った。記録は申し送りで次の勤務の看護師に引き継がれていた。一方で、何に気づくかは一人ひとりの経験に頼る部分が大きく、新人の看護師がそれをどう身につけるのかは分からないままだった。
貴学の看護学科は、「対象者の思いに寄り添い、根拠に基づいて考える人」を求めている。病棟で見た気づきは、寄り添う姿勢と、観察を根拠にする技術の両方でできていた。思いをくみ取るだけでも、記録を正確に取るだけでも足りない。貴学では1年次から病院での実習があり、観察とアセスメントを演習で繰り返し学べる。実習のたびに自分の観察記録を見直し、気づいたことを根拠とともに言葉にして、チームに伝える方法を身につけたい。
将来は、患者が言葉にしない変化に気づき、それを根拠とともにチームで共有できる看護師になりたい。
この作例で見てほしいところ
- 第1段落は場面を1つだけ書いています。いつ(高校2年の冬)・どこで(病棟)・誰が(看護師の方)・何をしたか(膝の痛みに気づいた)がそろっています
- 第2段落は「それまでの考え」と「病棟で見たこと」のずれから問いを作っています。問いが1つに決まると、第3段落でやることが決まります
- 第3段落は、自分で動いた形跡(本を読んだ・看護体験に参加した)と、分からなかったこと(新人がどう身につけるか)で終わっています。この「分からなかったこと」が、第4段落の学びたいことにつながります
- 第4段落は、大学の求める人物像の言葉(寄り添う・根拠に基づいて考える)を受けて、問いにどう答えるかを書いています。大学についての部分は架空です。自分で書くときは、志望校の要項とカリキュラムの言葉を使います
- 第5段落は1文です
作例2:経済学部(767字)
高校1年の夏、祖父が四十年続けてきた駅前の文房具店が閉店した。最後の日、常連の小学生が「次はどこでノートを買えばいいの」と祖父に聞いた。祖父は、隣町の大型店へ行く道を地図に描いて渡していた。店の売り上げは大きく落ちていたわけではなく、閉店の理由は跡を継ぐ人がいないことだった。閉店のあと、同じ通りの店は1年で3軒減り、夕方に人が歩く姿も少なくなった。
客がいるのに、店が続かないのはなぜか。私はそれまで、商店街がさびれるのは大型店に客を取られるからだと考えていた。しかし祖父の店は、客が減ったから閉まったのではなかった。店がなくなると、町からは買い物の場所だけでなく、人が行き来する理由も消えていく。店が一つ閉まることは、一軒の家の事情では終わらないのではないか。
この問いを確かめるため、市の商工会議所の方に話を聞いた。市内でも、後継者がいないことを理由に店を閉める人は少なくないという。事業を引き継ぐ人を探す相談窓口はあるものの、店主の多くは引き継ぎを家族の問題と考え、窓口に来るのは閉店を決めたあとになりがちだそうだ。では、店を手放す前に引き継ぎを考えられる仕組みは、どうすれば作れるのか。市の統計を見ても、そこは分からないままだった。
貴学の経済学部は、「地域の課題を、データと現場の両方から考える人」を求めている。祖父の店で見た問題は、数字だけでも、現場の話だけでも説明できなかった。貴学には、地域の事業者と学生が一緒に課題に取り組む演習がある。私はこの演習で、店の引き継ぎが進む地域と進まない地域の違いを調べ、統計と聞き取りを組み合わせて原因を考えたい。あわせて、経営学と地域政策の授業で、引き継ぎを支える制度の作り方を学びたい。
将来は、店や会社が次の担い手に引き継がれる地域を、自治体や金融機関の立場から支える仕事に就きたい。
この作例で見てほしいところ
- 第1段落の最後の1文(通りの店が1年で3軒減った)が、個人の出来事を町の問題に広げる役目をしています
- 第2段落で、思い込み(大型店に客を取られる)を自分で崩しています。問いは、思い込みと事実がずれたところから生まれます
- 第3段落は、人に話を聞いて分かったことと、統計を見ても分からなかったことを分けています。商工会議所の方の話も架空です。自分で書くときは、実際に聞いた人と内容だけを書きます
- 第4段落は「数字だけでも、現場の話だけでも説明できなかった」という第3段落の結果を、大学の求める人物像(データと現場の両方)につないでいます
2本に共通していること
- 体験は1つの場面に絞り、200字以内に収める
- 問いは、それまでの自分の考えと、見たことのずれから作る
- 第3段落は「調べました」で終わらせず、分かったことと、分からなかったことを書く
- 第4段落で初めて大学が出てくる。大学の言葉を受けて、自分の問いにどう答えるかを書く
- 将来は短く。大学が見たいのは、職業の計画より大学の4年間で何をするか
大学との接続が弱い書き方と、直し方
第4段落でいちばん多いのは、次のような書き方です(96字。これも作例です)。
貴学は伝統があり、設備も充実していて、熱心な先生方のもとで学べると考え、志望しました。オープンキャンパスでは在学生の方が親切に案内してくださり、この大学で学びたいという気持ちが強くなりました。
この段落は、どの大学の名前に入れ替えても通じてしまいます。伝統・設備・先生方・在学生の印象は、受験生の問いと関係がありません。
直すときは、次の3つに答えてから書きます。
- 第2段落の問いは何か
- 第3段落で、分からないまま残ったことは何か
- 志望校の求める人物像やカリキュラムのどの言葉が、その「分からないこと」に答えてくれそうか
作例1の第4段落は、この3つに答える形で書いています。
自分の材料に置き換える手順
- 場面を1つ選ぶ。いつ・どこで・誰が・何をしたかを書き出す(書き出しの作り方は志望理由書の書き出し)
- 「それまでの考え」と「その場面で見たこと」のずれを1文にする。それが問いになる
- 問いのために自分がしたことを並べる。読んだ・聞いた・見に行った・試した。分かったことと、分からなかったことを1つずつ
- 志望校の要項の、求める人物像(アドミッション・ポリシー)を読む。その言葉と、3の「分からなかったこと」をつなぐ
- 将来は1文にする
- 字数を数える。「以内」なら9割前後をねらう(小論文の字数が足りない・超えたときの直し方)
材料集めから提出前の確認までの全体は、志望理由書の書き方 完全ガイドにまとめています。書いた内容は面接で聞かれるので、書類と同じ話ができるかも確かめておきます(総合型選抜の面接で聞かれることは、あなたの書類に全部書いてある)。
まとめ
- 作例は2本とも、架空の受験生・架空の大学で書いたもの。文を写さず、段落の役割と字数の配分を借りる
- 800字は5段落:場面(200字)・問い(150字)・自分でしたこと(200字)・大学で学ぶこと(200字)・将来(50字)
- 問いは、それまでの考えと見たことのずれから作る。第3段落は分からなかったことで終え、第4段落につなぐ
- 第4段落は、志望校の求める人物像の言葉を受けて書く。伝統・設備・雰囲気は、どの大学にも書けてしまう
- 出願書類の作成で生成AIの使用を禁じる大学もある。自分の体験と言葉で書く
