志望理由書の書き出しで差がつく理由と、使ってはいけない3つの型
「私が貴学を志望した理由は」で始めた時点で、読み手の期待値は下がります。志望理由書の最初の3行で何を書くべきかを、実例の書き換えとともに解説します。
志望理由書の添削をしていると、書き出しの3行を読んだ時点で、その先の出来がだいたい分かってしまいます。
これは筆者が特別な目を持っているからではありません。書き出しには、その人がどれだけ材料を集めてから書き始めたかが、そのまま出るからです。材料が足りない人ほど、書き出しが抽象的になります。
使ってはいけない書き出し3つ
1. 「私が貴学を志望した理由は」
最も多い書き出しであり、最も情報量が少ない書き出しです。
問われているのが志望理由である以上、志望理由が書かれていることは読み手にとって前提です。前提を宣言する文に、1行を使ってしまっています。
2. 「私は幼い頃から〇〇に興味がありました」
一見すると具体的ですが、実際にはいつ・何がきっかけで、を回避するための表現として使われがちです。「幼い頃」がいつなのか、「興味」がどの程度のものなのかが分からないため、読み手には何も伝わりません。
3. 社会問題の一般論から入る
近年、日本では少子高齢化が急速に進行しており、医療現場における人材不足が深刻な問題となっている。
この書き出し自体は間違っていません。ただし、同じ学部の出願者の何割かが、ほぼ同じ文章を書いてきます。統計を引いた瞬間に、あなたの文章ではなく誰かの文章になります。
では、何を書くのか
書き出しに置くべきなのは、あなたしか書けない具体的な場面です。
判定は簡単で、次の問いに「いいえ」と答えられるかどうかで決まります。
この3行は、同じ学部を受ける他の受験生でも書けてしまわないか?
実際に書き換えてみる
看護学部を志望する生徒の書き出しを例にします(※実在の答案ではなく、指導経験をもとにした架空の例です)。
書き換え前
私が貴学の看護学部を志望した理由は、幼い頃から人の役に立つ仕事に憧れていたからです。特に、超高齢社会を迎えた日本において、看護師の役割はますます重要になっていると考えています。
書き換え後
祖母が入院していた病棟で、看護師の方が点滴の交換をしながら「今日は雨だから膝が痛みますね」と話しかけていました。祖母は痛みを訴えたことは一度もありません。カルテにない情報を、会話から拾い上げていたのだと後から気づきました。
後者は、書いた本人にしか書けません。そして読み手は、この生徒が看護を「優しさ」ではなく「観察」として捉えていることを、説明されなくても理解します。
| 書き換え前 | 書き換え後 | |
|---|---|---|
| 誰が書けるか | ほぼ全員 | 本人だけ |
| 伝わる資質 | なし | 観察力・具体性 |
| 続きの展開 | 一般論しか続かない | 学びたいことに直結する |
具体的な場面が思いつかないとき
「そんな体験はない」と感じたなら、体験がないのではなく、思い出す作業をしていないだけです。次の3つの問いを、紙に書き出して答えてみてください。
- その分野に関して、誰かに話したことがあるエピソードは何か
- 予想と違って驚いたことは何か
- 納得できずにもやもやしたままになっていることは何か
とくに3番目が有効です。もやもやは、あなたがその分野を自分の頭で考えた証拠だからです。志望理由書は、答えが出ている人ではなく、問いを持っている人を通します。
まとめ
- 書き出しに一般論・宣言文・「幼い頃から」を置かない
- 他の受験生が書けない具体的な場面から始める
- 場面が出てこないときは、驚いたこと・もやもやしたことを掘る
書き出しが決まれば、その後の構成は自然に決まります。逆に言えば、書き出しで詰まっているのは構成の問題ではなく、材料の問題です。