子どもが受験準備を始めない。「やる気がない」の正体は3つに分かれる
動き出さないのは意欲の問題ではなく、たいてい構造の問題です。止まる3つの原因を見分ける方法と、原因別に保護者ができる具体的な手当てをまとめました。
「そろそろ始めたら」と言っても動かない。スマホばかり見ている。志望校の話をすると不機嫌になる。
このとき保護者が下しがちな診断が「やる気がない」です。
しかし、これは診断ではありません。観察結果です。
熱があると分かっただけで、原因が分かっていない状態と同じです。そして原因を特定しないまま出される処方箋——「もっと真剣に考えなさい」——は、ほぼ効きません。
止まる原因は3つしかない
添削と面談の現場で見ていると、動き出せない生徒はほぼこの3つに分類できます。
| 原因 | 本人の内心 |
|---|---|
| 1. 何をすればいいか分からない | 「始め方が分からない」とは言いにくい |
| 2. 失敗するのが怖い | やらなければ、失敗したことにならない |
| 3. その志望が本人のものではない | 期待に応えるために言っただけ |
この3つは、外から見ると全く同じ「動かない」に見えます。しかし手当ては正反対です。
見分け方
質問を1つしてください。「いま、何から手をつけたらいいか分かる?」
| 返ってくる反応 | 可能性が高い原因 |
|---|---|
| 「分かんない」「なんか色々ありすぎて」 | 1. 分からない |
| 「分かってる。分かってるけど」 | 2. 怖い |
| 「別に、そこじゃなくてもいいし」 | 3. 本人のものではない |
3つ目の反応が出たときは、志望校の話から始め直す必要があります。志望校が親子でずれたときを参照してください。
原因1:何をすればいいか分からない
いちばん多いのがこれです。そしていちばん簡単に解決します。
総合型選抜の準備は、大人が思う以上に見通しが立ちません。志望理由書、活動報告書、探究、小論文、面接。どれから手をつけ、どの順で進めるのかが分からないまま、全部が同時に見えている状態です。
手当て:やることを1つに絞る
「全部やれ」ではなく、今週やることを1つだけ決めます。
たとえば「志望校のカリキュラムのページを見て、面白そうな授業を3つメモする」。この程度で構いません。30分で終わる大きさにするのがコツです。
準備の順番そのものは総合型選抜の対策 完全ガイドと対策はいつから始めるべきかにまとめてあります。本人に読ませるより、保護者が読んで順番を把握しておくほうが効きます。
探究のテーマで止まっている場合は探究のテーマが決まらない人へ、小論文で止まっている場合は小論文が書けないを渡してください。どちらも原因を分解する記事です。
原因2:失敗するのが怖い
見落とされやすい原因です。
やらなければ、「本気を出していないだけ」でいられます。やって落ちると、実力の問題になる。この恐怖は、真面目な子ほど強く出ます。
総合型選抜は特にこれが起きやすい入試です。志望理由書は自分の内面を書いて他人に評価される作業だからです。点数のように客観的でないぶん、否定されたときに人格を否定されたように感じます。
手当て:評価の場を作らない
やってはいけないのが、書いたものを親が採点することです。
こんなんじゃ受からないよ
この一言で書けなくなる生徒を、何人も見てきました。
代わりに、評価しない読み方をしてください。質問を2つ返すだけの型を子どもの小論文や志望理由書を、親が読むときにまとめています。
もう1つ効くのが、落ちても終わらないと事実として伝えることです。
落ちても一般で受けられるようにしておこう。だから今のうちにやっておこう。
不安をなくすのではなく、失敗しても大丈夫な構造を見せる。これで動き出す子は多いです。
原因3:その志望が本人のものではない
いちばん難しく、いちばん重要です。
親が喜ぶ答えを言っただけ、先生に勧められただけ、友達が受けるから。本人の中に理由がないものは、書けません。
志望理由書は、なぜそこなのかを800字書かされる書類です。理由がなければ、物理的に埋まりません。動かないのではなく、動けないのです。
手当て:志望を疑ってよいと伝える
本当にそこじゃなくてもいいよ。もう一回考え直してもいい。
これを言える保護者は多くありません。ここまで動いてきた時間が無駄になるように感じるからです。
しかし9月に不合格になってから「実は行きたくなかった」と分かるより、7月に軌道修正するほうが、はるかに損失は小さい。
声かけの置き換え
原因が何であっても、避けたほうがよい言い方があります。
| 言いがちな言葉 | 置き換え |
|---|---|
| いつになったら始めるの | 今週、何か1つだけ決めるとしたら何? |
| このままだと落ちるよ | 間に合わせるには、いつまでに何がいる? |
| ちゃんと考えてるの? | 迷ってるところ、話してみて |
| みんなもう始めてるよ | (言わない) |
共通しているのは、詰問を質問に変えることです。詰問には防御が返り、質問には情報が返ります。
それでも動かないとき、保護者が守る1点
原因が特定できなくても、これだけは保護者の仕事として持っていてください。
締切の管理です。
出願期間、必要書類、証明書の発行申請、調査書の依頼。これらは本人の意欲とは無関係に、期限が来ると終わります。
やる気を待つのではなく、締切から逆算した表を作って、冷蔵庫に貼る。意欲の問題に手を出せなくても、これはできます。
書類と費用の全体像はお金と事務手続きに、募集要項の確認点は募集要項の読み方にまとめています。
まとめ
- 「やる気がない」は観察であって、原因ではない
- 止まる原因は、分からない・怖い・本人のものでない、の3つ
- 「何から手をつけたらいいか分かる?」で見分けられる
- 分からない場合は、30分で終わる作業を1つだけ決める
- 怖い場合は、親が採点役にならない
- 本人のものでない場合は、志望を疑い直してよいと伝える
- 意欲に手が出せなくても、締切の管理は保護者ができる