小論文で資料が複数出たとき。1つずつ説明する答案は落ちる
資料が2つ以上あるのは、組み合わせて初めて言えることを書かせるためです。資料同士の関係を4つに分類し、どの組み合わせを選ぶかを決める手順をまとめました。
資料が3つ与えられたとき、多くの受験生が資料1・資料2・資料3の順に説明していきます。
そして読み取りだけで400字を使い、意見が2行で終わります。
資料が複数あるのは、1つずつ読ませるためではありません。組み合わせないと言えないことを言わせるためです。
資料が1つのときの基本(読み取り→解釈→意見の配分、割合と実数の罠)は資料型小論文の書き方にまとめてあります。ここでは、複数になったときだけの話をします。
最初の90秒でやること
読み込む前に、各資料に一言のラベルをつけます。1つ30秒。
資料1 → 高齢者の一人暮らしが増えている 資料2 → 地域活動の参加率が下がっている 資料3 → 相談窓口の設置数は増えている
この段階では細かい数字を見ません。「何についての、どちらに動いている資料か」だけを取ります。
ラベルが並んだ時点で、次の作業ができるようになります。
資料同士の関係は4つしかない
ラベルを見比べて、どの関係にあたるかを判定します。
| 関係 | 見え方 | 出題の意図 |
|---|---|---|
| 補強 | 同じ方向を向いている | 傾向を確かなものとして示す |
| 緊張 | 逆を向いている | ここを説明させたい |
| 全体と部分 | 全国と一地域、平均と内訳 | 平均に隠れた差を見つけさせる |
| 時点のずれ | 過去と現在、現在と予測 | 変化の向きを読ませる |
緊張がある組み合わせを最優先で探す
出題者が最も書かせたいのは、噛み合っていない2つです。
先の例なら、資料3(窓口は増えている)と資料2(参加率は下がっている)が噛み合っていません。支援の器は増えているのに、人は集まっていない。この食い違いに気づけるかどうかが分かれ目です。
設問が「資料1と資料2を比較して」と指定していない限り、すべての資料を平等に扱う必要はありません。噛み合わないペアを主軸にし、残りは補足として1行触れれば足ります。
全体と部分は「平均の陰」を見る
全国平均の資料と、特定の地域や年代の資料が並んでいたら、平均では見えない差を出させたいという意図です。
「全体としては改善しているが、ある層では悪化している」——この形の一文が書ければ、それだけで解釈として成立します。
時点のずれは、向きだけを取る
過去と現在の資料が並ぶときは、水準ではなく変化の向きと速さを見ます。「多いか少ないか」ではなく「増えつつあるのか、増え方が鈍っているのか」です。
種類の違う資料が混ざる場合
グラフ・表・文章・写真が混在する出題もあります。役割が決まっているので、迷わないでください。
- 数値の資料(グラフ・表)→ 何が起きているかを示す
- 文章の資料(論説・インタビュー)→ なぜそう見るのかという解釈を提供する
- 写真・図→ 具体的な場面を思い出させる
数値だけを2つ突き合わせるより、数値と文章を突き合わせるほうが書きやすい。文章の資料は解釈の候補をくれるので、それを数値で裏づけるか、逆に反証する形にできます。
文章資料の読み方そのものは課題文への線の引き方が使えます。
答案での書き方
組み合わせたことが読み手に伝わらないと意味がありません。接続の一文を必ず入れてください。
❌ 資料1では〜が増えている。資料2では〜が減っている。 ⭕ 資料1で〜が増えているにもかかわらず、資料2では〜が減っている。この食い違いは、〜を示していると考えられる。
「にもかかわらず」「一方で」「この2つを合わせると」。この一語があるかないかで、組み合わせた答案か、並べただけの答案かが決まります。
字数の配分は、資料が増えても読み取りを膨らませません。
| 段階 | 800字の目安 |
|---|---|
| 読み取り(ラベルを短く並べる) | 150字 |
| 突き合わせと解釈 | 250字 |
| 意見 | 400字 |
資料が3つになっても読み取りは150字のままです。1つあたり50字。ラベルを書くだけなら足ります。
よくある失敗
全部の資料を平等に説明する
最も多い失敗です。使わなかった資料があってもかまいません。ただし完全に無視するのは避け、1行だけ触れて「主軸には使わない」ことを示します。
数字を写す
「資料1によると45.2パーセントで、資料2では38.7パーセントである」。この行に得点はありません。変化と差で語ってください。
食い違いを見つけて満足する
指摘して終わる答案が多い。なぜ食い違うのかの推測まで書いて、初めて解釈です。「〜と考えられる」「〜の可能性がある」で書きます。
資料にない数字を持ち出す
覚えている統計を足したくなりますが、設問は与えられた資料で論じることを求めています。自分の経験を具体例として足すのは問題ありません。
まとめ
- 複数の資料は、組み合わせないと言えないことを書かせるために出される
- 読む前に、各資料へ30秒で一言のラベルをつける
- 資料同士の関係は4つ:補強・緊張・全体と部分・時点のずれ
- 噛み合っていないペアを最優先で主軸にする
- 全体と部分の組み合わせでは、平均に隠れた差を出す
- 数値と文章の組み合わせが最も書きやすい
- 「にもかかわらず」「この2つを合わせると」で接続を明示する
- 資料が3つでも読み取りは150字のまま
- 食い違いは、指摘ではなく理由の推測まで書く
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。