小論文の模範解答とネタ本の使い方。写して覚えると逆効果
模範解答は覚えるものではなく分解するもの。そのまま書いた答案がなぜ弱いのか、模範解答を4手順で分解する方法と、ネタ本を1テーマ3行のノートに変換する使い方を示します。
模範解答集とテーマ解説本(いわゆるネタ本)は、使い方を間違えると勉強した分だけ答案が弱くなります。
理由は単純です。同じ本を読んだ受験生と、同じ答案になるからです。
採点者は同じ問題の答案を何百枚も読みます。同じ知識、同じ言い回し、同じ事例が並んだとき、そこに書いた人の思考は見えません。
とはいえ、使わないほうがいいという話ではありません。使い方を変えてください。
模範解答を「分解する」4手順
読んで感心して終わり、では何も残りません。次の順で分解します。1本あたり20分かけてください。
手順1|段落ごとに役割をメモする
本文の横に、段落の役割だけを書き込みます。
第1段落 → 問いと立場 第2段落 → 理由 第3段落 → 具体例 第4段落 → 反論への応答 第5段落 → 結論
この作業をすると、模範解答が例外なく同じ骨組みでできていることが分かります。覚えるべきは中身ではなく、この骨組みのほうです。
手順2|主張・理由・具体例に印をつける
3色でも、記号でもかまいません。分けてみると、多くの人が驚きます。
具体例に使われている分量が、想像よりずっと多いはずです。受験生の答案は逆で、一般論が多く具体例が少ない。この差が点数の差になっています。
手順3|具体例だけを自分のものに差し替えて書く
骨組みと主張はそのまま借りて、具体例だけを自分の経験に入れ替えて全文を書きます。
これが最も効率のよい練習です。構成を考える負荷がない状態で、具体例を組み込む練習だけができます。
手順4|骨組みだけ残して、自分の立場で書く
最後に、主張も自分のものに変えて書きます。ここまでやって、初めてその模範解答を「使った」ことになります。
ネタ本の使い方
テーマ解説本は、読むだけでは答案に出てきません。1テーマにつき3行のノートに変換してください。
- 現状——何が起きているか(数字より構図)
- 対立——何と何が綱引きしているか
- 自分の現場——そのテーマについて自分が見聞きしたこと
3つ目が、他の受験生と差がつく唯一の欄です。ここが空欄のテーマは、まだ書ける状態になっていません。
「対立」の欄が最も重要
ネタ本には「〜が問題となっている」「〜が求められている」という記述が並びます。そのまま書き写すと、問題の説明で終わる答案になります。
問題の説明には点数がつきません。採点者が見たいのは、対立する2つの価値のあいだで、あなたがどこに線を引くかです。
たとえば「働き方」なら、対立は「労働時間を減らすこと」と「サービスの水準を保つこと」です。この形に落とし込めたテーマだけが、答案で使えます。
分野ごとの対立軸は、完全ガイドの頻出テーマ一覧から各記事にまとめてあります。
やってはいけない使い方
模範解答を暗記する
書き写した文章は、本番でほぼ確実に浮きます。設問がわずかに違うため、覚えた文が微妙にずれた場所に入り、そこだけ論の流れが切れます。採点者にはすぐ分かります。
統計の数字を丸暗記する
「高齢化率は約29パーセントである」と書いても加点されません。しかもうろ覚えの数字を書いて間違えると、その1行で答案全体の信用が落ちます。
数字は「増えている」「地域による差が大きい」という構図で書けば十分です。正確に覚えている数字だけを、必要なときに使ってください。
難しい用語を使いたくなる
用語を使うこと自体は問題ありません。ただし説明できない用語は使わないでください。面接がある入試なら、そこで必ず聞かれます。
新聞・ニュースの使い方
ネタ本より、こちらのほうが独自性は出ます。ただし記事を読むだけでは同じです。
読んだら、その出来事を自分の生活のどこかに接続してください。
記事:路線バスの減便が各地で進んでいる 接続:自分が使っている路線も本数が減った。祖母は通院にタクシーを使うようになった
この一手間があると、答案の中で記事が具体例として機能します。接続できない記事は、覚えても使えません。
まとめ
- 模範解答もネタ本も、そのまま書くと他の受験生と同じ答案になる
- 模範解答は分解して使う:役割をメモ → 印をつける → 具体例だけ差し替えて書く → 骨組みだけ残して書く
- 分解すると、具体例に割かれている分量の多さが分かる
- ネタ本は1テーマ3行に変換する:現状・対立・自分の現場
- 「自分の現場」が空欄のテーマは、まだ書けない
- 模範解答の暗記と統計の丸暗記は逆効果
- 説明できない用語は使わない
- ニュースは、自分の生活に接続できたものだけが使える
練習の進め方は小論文の練習方法、全体像は小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。