小論文キャンパス
小論文

小論文の頻出テーマ|生物多様性と開発。放置は保護にならない

約5分で読めます

農・生物・環境系で頻出。保護を訴えるだけの答案が大半です。なぜ守るのかを説明できるか、誰が費用を負担するかという観点から論じる方法をまとめました。

農・生物・環境・地理系で頻出です。医療系でも、感染症や薬の原料と絡めて出ることがあります。

答案は、ほぼ同じ形になります。

開発により多くの生物が絶滅の危機にある。自然を守るべきである。

「守るべき」に反対する人はいません。問われているのは、なぜ守るのか、どこまで守るのか、誰がその費用を払うのかです。

出発点:「なぜ守るのか」で立場が分かれる

守る理由の説明は、大きく2つあります。どちらを採るかで、守る範囲が変わります。

立場 理由 弱点
人の役に立つから 食料・薬・水・土壌を支えている 役に立たない種は守らなくてよいことになる
それ自体に価値があるから 人の都合と関係なく存在してよい どこまで人の生活を制限できるかが決まらない

多くの答案は、この区別をしないまま「守るべき」と書いています。

実務的には、前者に立ちつつ「役に立つかどうかは、いまの知識では分からない」という補強を足すのが、最も無理のない形です。いま無用に見える種が将来必要になる可能性を、私たちは判定できません。この一文が書けると、論に厚みが出ます。

3つの対立軸

軸1:保護と利用

手を触れさせないのが保護か、使いながら残すのが保護か。

立ち入りを禁じれば確実に守れますが、その場所で暮らしや生業が成り立たなくなります。使いながら残す方法は現実的ですが、線引きを誤れば戻せません。

軸2:守る費用を誰が払うか

恩恵は広く行き渡り、負担は狭い場所に集中します。

ある地域が開発をやめて自然を残したとき、その効果は流域全体、あるいはもっと広い範囲に及びます。しかし、開発すれば得られたはずの収入を諦めるのは、その地域の人です。

「守るべきだ」と言う人と、実際に負担する人が別である。この非対称に触れられる答案は多くありません。環境と経済の負担と利益のずれ、都市と地方の構造とつながります。

軸3:手つかずの自然と、人が関わってきた自然

最も差がつく軸です。

日本で「守るべき自然」とされている場所の多くは、原生林ではありません。人が手を入れ続けてきたことで保たれてきた環境です。

里山、ため池、草地、棚田。これらは人が関わるのをやめると、放置されて別の状態に変わり、そこに依存していた生き物が減ります。

つまり、この種の自然については「放っておくこと」が保護にならない。守るために人手が要る、という逆転が起きています。手を引くことが保護だと思い込んでいる答案とは、はっきり差がつきます。

使える具体例

図鑑の知識は不要です。

  • 近所の空き地や雑木林が、宅地に変わった
  • 川がコンクリートで固められ、魚が見えなくなった
  • 祖父母の畑や田が、作る人がいなくなって荒れた
  • 学校のビオトープや、飼育していた生き物
  • 見かける虫や鳥の種類が、以前と変わった
  • シカやイノシシが人里に出てくるという地域の話
  • 外来種として名前を聞く生き物が、身近にいる

「使われなくなって荒れた土地」は、軸3に直結する強い材料です。開発ではなく、放棄によって環境が変わった例だからです。

よくある失敗

絶滅危惧種の数を並べる

覚えた数字を書いても加点されません。しかも定義や集計は複数あり、うろ覚えで書くと誤りになります。

人間を悪者にする

「人間の身勝手な開発が」という書き方は、そこで思考が止まります。開発には理由(住居、食料、雇用)があり、その理由に応答しないまま批判しても論になりません。

「守るべきだ」で終える

範囲・方法・費用の3つのどれかに踏み込んでください。

里山を手つかずの自然と混同する

書けば専門性が出る一方、間違えると目立ちます。人が関わってきた環境と原生の環境は、守り方が逆になります。

外来種をすべて悪と決めつける

持ち込んだのは人であり、すでに生態系に組み込まれている場合もあります。駆除するとして、誰がどこまで続けるのかまで考えると論が具体的になります。

論じ方の一例

私は、生物多様性を守るとは手を引くことではなく、関わり方を設計し直すことだと考える。(立場) 日本で守るべきとされる環境の多くは、人が長く手を入れ続けたことで保たれてきたものであり、関わりをやめれば、開発したときとは別の形で失われていくからだ。(理由) 私の祖父母は畑と裏山を手入れしていたが、体力の問題でやめてから数年で、裏山は下草が伸びて入れなくなった。以前は春に一面咲いていた花が、いまはほとんど見られない。開発されたわけではなく、誰も手を入れなくなっただけである。(具体例) たしかに、人が関わらなくても長い時間をかければ別の安定した状態に落ち着くという見方はある。だが、その過程で失われるものは元には戻らず、時間の長さは人の暮らしの尺度とかけ離れている。放置を選ぶこともまた、結果に責任を負う一つの選択である。(反論への応答)

まとめ

  • 「守るべき」に反対する人はいない。なぜ・どこまで・誰の負担でを書く
  • 守る理由は「人の役に立つから」と「それ自体に価値があるから」。どちらを採るかで範囲が変わる
  • 役に立つかどうかは、いまの知識では判定できないという補強が有効
  • 軸1:保護と利用。触れさせないのか、使いながら残すのか
  • 軸2:恩恵は広く、負担は狭い場所に集中する
  • 軸3:日本の「守るべき自然」の多くは人が関わって保たれてきた。放置は保護にならない
  • 具体例は「使われなくなって荒れた土地」が強い
  • 数字の羅列、人間悪者論、里山と原生林の混同を避ける

形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。

Related

関連記事

← 「小論文」の記事一覧へ