小論文の頻出テーマ|言語と思考。言葉が変われば見え方が変わる
文・言語・教育・心理系で頻出。課題文型で出ることが多いテーマです。語彙が認識を作る、名づけることの功罪、翻訳できないものという3つの軸から論じる方法をまとめました。
文学部・言語系・教育・心理系で頻出です。課題文型で出ることが多いのも特徴で、言語学者や作家の文章が題材になります。
答案の多くは、ここで止まります。
言葉は思考を表現する道具である。豊かな言葉を身につけることで、豊かに考えられるようになる。
言葉を道具として扱った時点で、このテーマの中心を外しています。
出発点:道具ではなく、枠かもしれない
「考えがあって、それを言葉にする」というのが素朴な見方です。言葉は入れ物であり、中身が先にある。
しかし逆の見方もあります。言葉があるから、その区別が見えているのではないか。
区別する語を持たないものは、区別されないまま通り過ぎます。逆に、語を覚えた瞬間に見えるようになるものがあります。
- 音楽の用語を知ると、聞こえ方が変わる
- 病名がつくと、それまで「なんとなく不調」だったものが対象になる
- 感情を表す語を多く持つ人は、自分の状態を細かく捉えられる
どちらか一方が正しいのではありません。言葉と思考は相互に作用しています。この往復を書けるかどうかが分かれ目です。
3つの対立軸
軸1:語彙は認識を作るか、反映するか
このテーマの中心にある問いです。
ある社会に特定の語が多くあるのは、その対象をよく区別しているからか、それとも語があるから区別できるようになったのか。
「どちらでもある」で終わらせないでください。答案としては、どちらに重心を置くかを決め、もう一方の言い分に応答する形が強くなります。
軸2:名づけることの功罪
名前をつけると、扱えるようになります。問題として認識され、対策の対象になります。
一方で、名前は枠でもあります。
- 名前がついた瞬間に、それ以外の側面が見えなくなる
- 名前で呼ばれることで、その枠に押し込められる人が出る
- 一度ついた名前は、状況が変わっても残る
扱えるようにすることと、枠にはめることが同時に起きる。この両面を書けると、論に厚みが出ます。心の不調をめぐる同じ構造はこころの健康と支援にまとめました。
軸3:翻訳できないもの
母語でしか言えないことがあるか。
共通語が広がることで、国境を越えたやり取りは楽になりました。同時に、置き換える過程で削られるものがあります。
ただし、「日本語には独特の情緒がある」という書き方は避けてください。根拠のない特別視になります。どの言語にも、他の言語に一語で置き換えられない語があります。
言語の優劣ではなく、切り分け方の違いとして書く。これが正確な扱い方です。共通語をめぐる論点はグローバル化と文化にもまとめてあります。
使える具体例
日常の観察が最も強い材料です。
- 方言でしか言えない感覚がある/標準語に直すとずれる
- 敬語を使うと、相手との距離の取り方まで変わる
- 交流サイトで使われる語を覚えてから、その現象が見えるようになった
- 外国語を学んで、日本語の言い方の癖に気づいた
- 感情を言葉にできないまま、もやもやしていた経験
- 誰かに説明しようとして、初めて自分の考えがはっきりした
最後の例は特に使えます。言葉にする過程で考えが形になる、という体験は、軸1に直結します。
よくある失敗
「言葉を大切にすべきだ」で終える
誰も反対しません。主張として働いていません。
若者言葉を批判する
「最近の言葉は乱れている」という書き方は、言葉が変化し続けてきたという事実を無視しています。文学部・言語系では特に厳しく見られます。扱うなら、変化そのものを分析の対象にしてください。
語彙力と思考力を同じものとして扱う
語彙が多いことと、深く考えられることは、重なりますが同じではありません。難しい語を並べた文章が浅いことは珍しくありません。
日本語を特別扱いする
情緒的な特別視は根拠になりません。どの言語にも固有の切り分け方があります。
課題文の主張をなぞるだけ
このテーマは課題文型で出ることが多いので、筆者の議論を要約して終わる答案が量産されます。自分の観察を1つ足してください。
論じ方の一例
私は、言葉は思考を表す道具であると同時に、思考の範囲を決める枠でもあると考える。(立場) 区別する語を持たない対象は、区別されないまま通り過ぎる。逆に、語を得た瞬間に、それまで一続きに見えていたものが分かれて見えるようになるからだ。(理由) 私は昨年、初めて写真の講座に参加した。それまで「明るい写真」としか言えなかったものを、露出という語で説明されたとき、同じ写真の見え方が変わった。撮り方が変わる前に、見え方のほうが先に変わっていた。(具体例) たしかに、語を知らなくても違いを感じ取ることはでき、言葉が認識を作るという言い方は言い過ぎだという指摘はある。だが、感じ取っていたものを他人と共有し、次に再現できる形にするには、やはり語が要る。個人の内側で完結する認識と、扱える認識は別のものである。(反論への応答)
まとめ
- 言葉を「道具」として扱った時点で、このテーマの中心を外している
- 言葉と思考は相互に作用する。その往復を書く
- 軸1:語彙は認識を作るか、反映するか。どちらかに重心を置いて応答する
- 軸2:名づけると扱えるようになるが、同時に枠にはめる
- 軸3:翻訳できないものは言語の優劣ではなく、切り分け方の違い
- 具体例は「説明しようとして初めて考えがはっきりした」経験が強い
- 「言葉を大切に」で終える、若者言葉批判、語彙力と思考力の混同、日本語の特別扱いは避ける
形式別の解き方・練習方法を含む全体像は、小論文の書き方 完全ガイドにまとめています。